「黒い水の正体は何か?」

 この原因を考え続けているなかで、Oさんとほぼ同じ事例が

T美容師さんにも認められたことから、その謎が解け始めまし

た。二人に共通することは、共に「健康不安」を有していたこと

でした。その意味で、このお二人は健常者とは異なる方々だっ

たのです。

 さらに、京都の美容師さんに現われた「白い水」はどうなの

か、この場合、実験に加わった美容師さんは、非常に若く、そ

の経験は数年以内の方ばかりで、T美容師さんとはかなりの

年齢差がありました。

 しかし、ここで注目されることは、お湯の色が変化したことは

間違いなく、それが黒い色であろうと、白色であろうと、それが

皮膚から沁み出してきたことではないかと思えるようになった

ことでした。

 マイクロバブルとその水が反応して色変化が起きたのでは

なく、マイクロバブルとマイクロバブル水が身体に反応して、そ

の皮膚から沁み出してきたのではないかという仮説が考えら

れるようになりました。

 自称「温泉教授」の松田忠徳先生(札幌国際大学)は、温泉

の効果について、温泉入浴で体内の血液中の老廃物が汗と

ともにお湯の中に排出されることを指摘されています。

 これを踏まえて、次のことが考察可能となります。

 ①温泉には、アルカリ単純温泉(我が国の温泉のほとんど)

と酸性温泉(玉川温泉、蔵王温泉、草津温泉などがあるが数

は非常に少ない)があるが、名湯と呼ばれる温泉ほど、アルカ

リ度および酸性度が高い場合が多いようです。

 一方、ヒトの身体の体液の水素イオン濃度は7.2(pH)程度で

すから、これよりも水素イオン濃度が高くても、さらには低くて

も、その水素イオン濃度差のために身体の中に、その温泉水

が沁み込みやすくなります。このときに温泉成分としての各種

ミネラルや物質も体内に取り込まれやすくなり、これで新陳代

謝も促進されます。

 同時に、温泉の温熱効果も加わって、全身の血行促進がな

され、血液中の老廃物が汗とともに出やすくなります。

 ②水道水におけるマイクロバブル入浴においても、これとよ

く似た現象が起こることが考えられます。

 私どもは、水温33度程度でマイクロバブルの血流実験を行う

ことが多いのですが、これでは温熱効果による血流促進はほ

とんど起こりません。しかし、その温度帯においても、マイクロ

バブルによって末梢血管の血流促進が、その供給前と比較し

て1.5~3倍も発生します。

 つまり、低温入浴でも、血行促進が全身で実現される、ここ

にマイクロバブル入浴の最大の特徴があります。ですから、水

道水においても、温泉と同じような効果が得られるという理由

の一つが、その血流促進の効果にあるといえます。

 この血行促進の効果も加わって、マイクロバブル入浴では

身体が温まりやすく、汗もかきやすくなります。

 そのために、身体からも汗と一緒に老廃物が出やすく、その

結果として、お湯が黒くなってしまうのではないかという仮説を

持つに至りました。

 今後は、この仮説の検証をさらに進めていく必要がありま

す。

 この黒い水が身体中の老廃物や汚物が汗とともに出てきた

結果だとすると、それだけ、身体に良くないものが体外に出さ

れたことになります。これは、今、若い女性において流行の

「デトックス現象」とも関係する話になります。それだけ、身体

に有害のものが出てしまうのであれば、残った身体はより健

康に向かうはずです。

 昨今の有害物が食料に混入している事例を踏めますと、私

たちの身体には、知らず知らずにいろいろな有害物質が取り

込まれている可能性があります。

 そこで、この結論に達し、Oさんに早速電話で報告させてい

ただきました。

 「どうやら、あなたの身体の中の老廃物や汚物が汗とともに

出てきて、それでお湯が黒くなった可能性があります。それだ

けあなたの身体の中から、黒いものがなくなったということで

すよ!」

 こういうと、Oさんは、とても喜ばれていました。

 「先生、そうですか。私も腹黒さがなくなったということです

ね」

 「そうですよ、純粋無垢な身体になったということですよ」

 「ありがとうございます。なんだか嬉しくなりました」

 しばらく、このような楽しい会話が続きましたが、その後、Oさ

んの入浴では、「黒い水」が出なくなったという報告も受けまし

た。

 「それだけ身体が浄化されたのですかね。よかったですね」

 「ありがとうございます」

 Oさんの声が電話の向こうで弾んでいました。さぞかし、Oさ

んの奥様も喜ばれたのではないでしょうか。

 「さらば、黒い水!」

 OさんやT美容師さんのことを考えると、思わず、心の中で、

こう叫んでいました。

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