名古屋大学で開催された第3回マイクロ・ナノバブル技術シンポジウム以降,諸々の事情があって,しばらく,そのような取り組みを休むことになりました.そのことは前にも述べた通りです.

 その間にも,マイクロバブル技術の普及は燎原の火のように急速に進行し,大企業の方々にもおいても関心が集まるような状況が生まれてきました.

 そのことも,前回の記事において紹介させていただきました.

 さて,その続きを述べることにしましょう.その最初の主題は,「マイクロバブル技術を利用するのか」,「マイクロバブル技術を研究するのか」,そのいずれなのかという問題です. 

 私は,マイクロバブル技術の発展段階を「ジグソーパズル」にたとえますが,そのパズルの現段階は次の状態といえます.

 ①まず,そのパズルを置く台紙の広さがけた違いに大きいことです.それこそ,身近な生活から産業へ,そして環境へとまたがっていますので,その様は,体育館のように広い台紙上でパズルを並べているようなものといえます.

 しかも,そのパズルの色が,それぞれのテーマごとに異なっているとしますと,その色合わせもじつは結構大変なことになってしまいます.

 ②それでも頑張って,どこかに限定してパズルを並べようとしますが,ここで,ハタと困ってしまいます.それは,そのパズルが,物理のものか,それとも化学なのか,さらには生物なのかという3種類の色違いがあって,それらの3つを総合的に重ねて観ないと,うまく組み合わせることができないからです.

 ここで,自分の専門領域とは何か本格的に問われてしまいます.これまで,それを武器にして,自らの存在を確かめてきたのに,それが通用しなくなるのですから,慌てふためくのは当然のことになります.

 ③さらに,複雑になるのは,それらに,「実験室か」,「現場か」という実践的なパズルの組み合わせ法の選択問題が加わることにあります.現場のことも,そして実験室のことも,両方において実践的に理解する方法を身につけていなければ,すぐに投げ出してしまうしかなくなるからです.

 しかし,なかには,そのパズルを強引に押し込んで,なにやら根拠の希薄なことまで,「まこしやかなもの」として語られる方もおられますので,それが偶にもっともらしく見えてくるときには,「イルージョン」になって混乱を与えてしまいますので,それはそれで「厄介なこと」になってしまいます.

 ④マイクロバブル技術は,いまだ「生成期」にあり,それを確実に発展させる「マニュアル」は,いまだ整ってはいません.ですから,それを頼りにしたい方々にとっては,なかなか通用しにくい,これが自然のことなのです.

 これらを総合しますと,まだまだ,マイクロバブルの研究を通じてしか,そのよい利用法も考案することができないといいましょうか.

 そのレベルの「閃きや洞察(intuition)」もなかなか出てこないといえ,優秀な専門家集団の集まりであるはずの大企業といえども,それを,すぐに,容易に,こなすことはできないのではないかと思われます.

 そこで,今度は,マイクロバブルそのものを研究している私たちの役割が,より厳密に,ますます本質的に問われることになります(つづく).

J0409881