④ふかいことをおもしろく(2)

 「ふかい」とは何を意味するのでしょうか? 何か、その奥底に、「ふかい意味」を有する何かが潜んでいるということでしょうか?

 そうであれば、どこまでも、その探求を行い、その「ふかい意味」を知りたいと思うようになります。 

 この場合、ふかい意味がありそうだと思う「対象物」がまず第一に問題になります。

 そこで、この問題について、「マイクロバブル」の具体的事例に則して、ふかく考えてみることにしましょう。 

 「マイクロバブルのふかさ」、これは、科学的な特性、そして技術的な社会経済的価値という、それぞれの分野において個別に考える必要があります。

 前者においては、物理化学的な特性の究明、生物的な機能の特徴を明らかにすることが求められます。物理、化学、生物のそれぞれの分野において、マイクロバブルの性質を明らかにする必要があります。

 これも、じつは大変なことであり、それぞれにおいて広く究明がなされ、その個々においても「ふかく」考究することが重要になります。

 つまり、「広くてふかい」、これが、マイクロバブルが内包している科学的特徴なのです。

 しかも、その広さにおいては、物理、化学、生物の3つのすべての知識が必要になりますので、これらに優れた現代人は、なかなか見当たらないということになります。

 では、どうすればよいのか? 

 この回答は簡単です。もう一度勉強をし直すしかないのです。

 長い間、せっかく築きあげた専門科学ですから、それを潔く捨て去り、さらに、新たな分野の勉強を開始する勇気を持つ、これは、その分野で一定の「成功」を修めた方にとっては、なかなかできないことです。

 ましてや、その「成功」に至らなかった方々にとっては、何が潜んでいるかわからない荒野に足を踏み出すのですから、ますます、心細くなり、身を縮めてしまうしかないのではないでしょうか。

 おそらく、自らが立って生きている「島が流れ出さないかぎり」、あるいは、「沈没しないかぎり」、自らを根本的に見直すことはないでしょう。

 しかし、ここで、単に「広くてふかい」問題に留まらない、「重要な何か」が出てきます。ここが「おもしろい」ところです。

 単に、科学的探究をふかく行う「おもしろさ」ではなく、すぐに社会経済的価値と関係する技術的実践の事例が露わになり、それが「おもしろい」のです。

 「社会経済的価値」ということを簡単にいえば、世の中に「役に立つ」ということです。

 その結果は、科学者であろうと、技術者、一般市民であろうと、すぐに理解できますので、ここがまた、たまらなく「おもしろい」ということになります。

 これまでの科学の場合、なかなか世の中に役立つ成果が出にくい、時間がかかる、わかりにくいという問題が常に存在してきました。

 しかし、マイクロバブルの場合は、それとは本質的に異なって、世の中に役立つ結果が先に出てしまうのです。 

 ここの、その独特の「おもしろさ」があります。私にも、次のような経験がありました。 

 ①マイクロバブルを与えたカキ筏のカキはみな生きているのに、周りはほとんど死んでいた。

 ②何万個というホタテの耳吊り作業において3,4割がしんでいたのに、それが皆無になり、即、夜の作業が廃止された。

 ③0.5mmしか巻かない真珠が、その数倍も巻く真珠になり、生産額の10倍化が実現した。

 ④温泉客が増加し、元気高齢者が続出した。通常は4,5分しか入らない温泉において、1時間以上もマイクロバブル入浴する方々が続出した。それは入浴者が「ここちよい」と自覚したからであった。

 ⑤成長率の良い、若くて強い、そして格段においしいマイクロバブル野菜が生育できるようになった。

 ⑥マイクロバブル入浴で、動かない指が動くようになり、顔面神経痛が改善され、一人では一生涯入れないと思っていた風呂に一人で入れるようになった。

 ⑦岩国市の村重酒造が造った「錦」が全国酒類コンクールで第1位を2年連続で取得した。昨年度は、世界一(モンドセレクション最高金賞)にもなり、今年も連覇が期待されている。

  ⑧広島の宮島にある岩村もみじ屋の「もみじ饅頭」が評判を呼んでいる。見事な味で、一度食べたらもう一度食べたくなるようで、全国からの注文が増えている。

 ⑨企業においては、私どもの関係だけでも1000社を超える企業において、マイクロバブル技術が利用されている。とくに、洗浄、排水処理、食品、健康医療、環境分野で発展している。

 ⑩マイクロバブル発生装置における不断の開発が進められており、その新技術が新たな可能性を切り拓いている。

 ⑪これまで困難だと思われていたこと、10年~20年先でないと解決できないといわれてきたこと、それらを解決する重要な糸口を示し始めている。「未来技術としてのマイクロバブル」の姿が明らかになり始めている。 

 まだまだ、ありますが、その「おもしろさ」を示すには、これで十分だと思います。

 ですから、おもしろい技術的事例が先に出て、その科学的究明が後追いになってしまう、これがマイクロバブルの本質的特徴といえます。 

 しかも、その事例が、時々「あっと言わせる」ような「ブレイクスルー」を伴うことがありますので、これで、その時まで構築されていた概念がもろくも崩れ去ることがよくあるのです。

 一連の「ナノバブル騒動」には、この傾向が観察されますので、その視点から眺めておくとよいでしょう。  

 さて、このマイクロバブル、「どこまで、おもしろくなる」のでしょうか。みなさんのなかには、その行く末を少し心配なされる方がいるかもしれませんね。

 せっかくですから、その未来を展望できるマイクロバブル研究者の特権として、その見地を少し披露させていただくことにしましょう。

 私は、マイクロバブルの科学的研究や技術的開発、商品化に関しては、まだまだ「生成期」のなかにあると思っています。

 新たな発見が芽生えて成長していく、「若葉の時代」だと思います。 それゆえ、新鮮な「おもしろみ」がありますので、少々のことでは、「だけど、ぼくらはくじけない」と思えてしまうのです。

 そして、きっと何かが待っている、重要な何かに出会うはずだと思うことができるのだと思います。

 おそらく、これからも、その吃驚(びっくり)の連続でしょう。マイクロバブルの本質がますます「ふかく」考究され、そこから、またまた、楽しくておもしろい技術的事例が山ほど出てくることになるでしょう。

 その意味で、これまでよりも、これからのほうが桁違いの「おもしろさ」を持っているのだと思います。

 私は、その任を担う者の一人ですので、まじめに、それを追求し、これからも、その成果を世の中に問い続けさせていただきます(つづく)。


Koala