5500回記念を迎えて(2)

 イノベーションとは何か、このことを考察する際に、無くてはならない参考書が、下記の著作です。

 『イノベーションの最終解』クレイトン・M・クリステンセン、スコット・D・アンソニー、エリック・A・ロス、翔泳社、2014年。

 これは、クリステンセンらによるイノベーション論の集大成版としての、文字通りの「最終解」がまとめられています。

 『イノベーションのジレンマ』、『イノベーションの解』に続いて執筆されたのが本書です。

 これらは、その核となrる3つの次の理論で構成されています。

 1.破壊的イノベーションの理論

 2.  資源・プロセス・価値基準の理論

 3.  バリューチェーン進化の理論

 ここではまず、その最前者について簡単に説明しておきましょう。

 この理論は、

 「新しい組織が相対的に単純、便利で、低コストのイノベーションを利用して成長を生み出し、強力な既存企業に打ち勝つことができるような状況」

を指摘しています。

 ここで、イノベーションに関するキー・ワードとして、

 「単純、便利、低コスト」が指摘されています。

 しかし、このような特質を有する新技術や新商品を生み出すことは、そんなに簡単な問題ではありません。

 そこでは、必ずといってよいほどに、独創的で革新的なアイデアが創造されることが必須の条件となるからであります。

 しかし、一度、そのアイデアが創成されると、既存の企業は、その技術戦争や商品競争に勝ち抜くことができません。

 そして大企業ほど、その創成が困難であり、結果的には、模倣に近いアイデアの内在化がなされていくのです。

 私も、なんどか、そのような苦い経験をしてきました。

 その第1は、白物家電の開発担当者でしたが、光マイクロバブル発生装置を無料で貸し出せといってきました。

 何と厚かましいことかと相手にしませんでしたが、案の定、その大手会社は、不正会計が問題となり、今では無残な転落を遂げてしまいました。

 第2は、大手H社のある部門の研究所長であり、その帰省先が近くであったことから、しよっちゅう顔を出されていました。

 そのために、会話を行なうようになり、かれは、親しげ振りをして光マイクロバブル技術のことをよく質問してきました。

 そこから、かれが何を聴きだしたいのかがよく解るようになったことから、その一端を披露してあげると、それからはぷっつりと途絶えてしまいました。

 聴きだしたいことをしれば、それでよかったのです。

 第3は、私の保有していた特許をすべて調べ上げ、担当の良心的な社員が、「うちの会社は、先生の特許を潜り抜けて商品開発をしようとしてますよ!」といってきたことがありました。

 共同研究は名目だけで、その後、黙って自社製品を出すという厚かましいことをやっていました。

 第4は、共同研究を行った実験結果のなかで、最も悪いデータを上司に上げ、自分の開発した装置の結果のひどさを隠そうとしたことがありました。

 まだまだ、ありますが、このようなことを経験してよい勉強になり、自尊自立を洗練させることの重要性を学びました。

 さて、上記の破壊的イノベーションには、次の3種類があるとされています。

 1)持続的イノベーション

 2)ローエンド型破壊的イノベーション

 3)新市場型破壊的イノベーション

 3つのイノベーション

 1)は、「確立した性能曲線上を企業がのぼっていく原動力になるイノベーション」です。

 ここには、既存製品における改良が加えられていきます。

 この典型が車や航空機のモデルチェンジです。

 2)、3)については、「新しい価値提案を実現する」ものだとされています。

 そして、この破壊的イノベーションには、「新しい市場を生み出すもの(新市場型)」と「既存市場を大きく変えるもの(ローエンド型)」の2種類があるというのです。

 A)ローエンド型:製品・サービスが性能過剰になり、高価になりすぎたときに起こる→製鋼ミニミル、ウォルマートのディスカウントストア、デルの訪問販売

 B)新市場型:既存顧客に相対的に単純な製品を低価格で提供することから始まる、不便で集中的な場所で消費を行わざるを得ないとき→ソニーのトランジスタラジオ、ベルの電話、アップルのパソコン、ゼロックスのコピー機など

 前世紀においては、これらのイノベーションが頻繁に発生してきましたが、今世紀になってからは、むしろイノベーション欠乏現象の指摘もなされるようになりました。

 わが国においても、少し前まではイノベーションの重要性が、至る所で強調されてきましたが、それは掛け声倒れになる場合が少なくない状況になっています。

 ある経済学者は、イノベーションを起こすには10年の歳月が必要であり、それを起こそうとしても、その10年以内に消えてしまうとまでいうようになりました。

 そこで、改めて、イノベーションの本質とは何か、が問われる世の中になってきたのではないでしょうか。

 次回においては、そのイノベーションの本質に分け入ることにしましょう。

 参考文献:『イノベーションの最終解』クレイトン・M・クリステンセン他2名 2021 翔泳社

 (つづく)。

sakura-11
                桜の景色(近くの公園で)