第六報における視点(2)-4

 前記事の続きです。

 以下は、その本文であり、赤字の部分が、本記事における該当部分です。

 「第2は、現場における技術開発の目標達成が優先されたことから、微細気泡に関する物理科学的特性を究明することが、常に後追いで究明されるという過程を経たことである。

 しかも、国内外に先行的な研究事例はなく、その装置開発、計測法、物理化学的特性、生物的機能性などの関しては独自の手法を見出し、評価・確立する必要があった」

マイクロバブルの物理化学的特性(2)

 前記事において示した光マイクロバブルの物理化学的特性は、次の4つでした。

 1)短時間において縮まるという収縮運動

 2)縮まることによって、マイクロバブルのなかの温度と圧力が高まっていく現象

 3)収縮と共に増加していく負電位特性

 4)そのなかで何回も繰り返す発光現象

「試練のマイクロバブル」

 光マイクロバブルが自分で小さくなって収縮していくという運動は、まったく非常識な未解明の現象でした。

 気泡は上昇しながら膨張していくもの、これが当時の学会の常識でした。

 それゆえに、この収縮運動を科学的に究明していくことは、私自らの課題であると認識せざるを得ませんでした。

 そこで、前記事で示したように、この収縮運動を可視化して動的に把握していく実験装置作りが重要になったのでした。

 この可視化データを解析しながら、まず、その収縮時間が、どの程度なのかを把握する必要がありました。

 たとえば、直径50マイクロメートルの光マイクロバブルが自己収縮して消失して画面上から無くなるまでの時間は、その光マイクロバブルの寿命に相当しますので、それが約60秒以下であることを見出しました。

 光マイクロバブルの寿命は、1分以下の非常に短期間であることが判明したのです。

 このことは、非常に短期間において、ダイナミックな収縮運動が生起していることを示唆していました。

 逆に、マイクロバブルを顕微鏡のプレパラート内に閉じ込めて、その収縮現象を観察した事例においては、その収縮時間が10数分以上もかかるという他の実験結果もありました。

 しかし、上記のダイナミックな収取運動は、これとは本質的に異なる現象であることを理解することができました。

 そして、この短時間における収縮運動によって、光マイクロバブル内の気体の高圧化、高温化が達成されていくのではないか、そして、それがどの程度の高温高圧化に至るのか、これらの問題を明らかにしていくことが重要になってきました。

 次回は、この高温高圧化のメカニズムとその物性値の究明問題に分け入ることにしましょう(つづく)。

M1-1
     海水マイクロバブル(実験室、M1型装置、ナノプラネット研究所提供)