追悼・久松俊一先生(26)
久松先生、今年は初盆ですね。
それを前にして、「21世紀における高専教育改革の展望」の第六報の執筆に本格的に取り組み始めたことを報告いたします。
本日から、孫たちが我が家にやってきてにぎやかなお盆になりますが、そのなかで、この執筆にあたることになります。
先月下旬に第五報を投稿してから、しばしの休憩をしていました。
その間、この第六報の執筆動機についてあれこれと考えてきて、その構想が固まってきましたので、そろそろ執筆を再開する時期かと思うようになりました。
このお盆では、ご家族の方々とも再開させるでしょうから、どうか安らかな一時をお過ごしください。
さて、結果的にロングランとなってしまった本稿も、いよいよ最後に近づいてきました。
高専大学づくり
全国大学高専教職員組合高専改革プロジェクトチームは、1994年に「私たちの高専改革プラン」を発表しました。
私は、このチームの副委員長であり、このプランのまとめ役でもありましたので、この事情をよく理解していました。
この改革プランでは、その検討の最後に、3つの提言をおこなうことになりました。
その第一は、高専教育に関する研究組織として学会を自分たちで創立しようという提言でした。
これについては、その発案後に、メンバーにおける全員一致による賛同が得られました。
次に第二提言は、高専に設けられた全国的ネットワークを利用して「日本高専」を構築するとともに地域に根ざした高専づくりを図るというものであり、これも議論を進めていく中でまとめられていきました。
しかし、高専の将来像に関する考えに関しては、大学化すべきという意見と、大学よりも現状を維持発展させた方がよいという意見に二分されていました。
互いに、その歩み寄りはなく、この議論が延々と続いていました。
それを静かに聞いていましたが、それらの主張の正当性は認められるものの、同時に、小さくない問題点を、それぞれが有していたことが、徐々に明らかになってきました。
その大学化論においては、校長先決体制を廃止し、自治権を奪回するという法律改正をしなければなりませんが、そのためには、校長自身が、その廃止を認め、その法律改正を行うように仕向けなければなりません。
その可能性は、限りなくゼロに近いものであり、このゼロから出発して、それをどう過半数にしていくのか、これは大変なことでした。
また、高専の維持発展論においては、その具体的有効な方策を持ち得ているのかが問題になりました。
これらの議論と問題点を縫合しながら、どう統一的発展をめざすのか、それが、問題になりました。
そこで、大学化論者に対しては、高専の長所を徹底的に探究し、その明確化によってより具体的に大学化論を検討していくのかを問題提起したところ、これについては、少しも異論が出てきませんでした。
一方、高専の維持発展論者に対して、高専の長所を探究し、それをより具体化し、発展させていくことに関しては、何も問題はないことを確認し、その発展によって、最後には大学にしていく、すなわち、高専の長所を最大限に生かすことによって大学化を図ることに関しての賛同を得たのでした。
今回の一連の論文化において、その第二報において、「高専史における独創的長所の形成過程」において、その次の5つをより深く考察することができました。
それらを以下に再記述しておきましょう。
(1)実践的技術教育から創造的技術教育への発展
(2)高専生の優れた特質と活躍
(3)大学と比較して約1000時間多い充実した教育
(4)教育と研究の対立から、それらを統一的に探究する教育研究活動
(5)地域に根ざした高専づくり
これらの独創的長所をとことん発展させることで、高専は持続的に発展し、高専大学への準備過程を用意することになります。
いよいよ「高専大学構想」を論ずる時期がやってきた
上記の「改革プラン」が示されてから約20年の歳月が流れていきましたが、それは決して無駄な流れではなく、その過程において、高専の発展が、この高専大学のことを検討するための準備期間であったと考えられます。
久松先生、そう思われませんか?
私自身も、その視点を踏まえて、その高専大学づくりに関する探究を深めていきたいと思っています。
これからの世の中においては、創造的技術教育を発展させた探究・開発技術教育が、より重要になってきます。
また、急激に変化していく産業のなかで、どう、新たな技術革新を遂げていくのか、その独創的なものづくりや知己に根ざした技術づくりが、ますます重要になってきます。
高専は、数々の問題を抱えながらも、そのような社会イノベーションを起こしていく機関として最も近いところに位置しています。
その意味で、高専は、わが国を代表する技術者教育機関としての役割を果たしていく必要がありますね。
久松先生、あなたも私も現役の高専教員ではなくなりましたが、その役割を果たす一員として、今後もよろしくお願いします。
長い間のお付き合い、ありがとうございました(本稿はおわり)。
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