いざや,見にゆかん

 春は,草花が伸び,開いていく季節です.

 しかし,私にとっては,未だ花粉の飛来を恐れて外出を控えている季節でもあります.

 昨日は,家内に近くの郵便ポストへのハガキの投函を依頼しました.

 その帰りに,彼女は,少し東の方に足を進めて運動公園の縁に植えられている桜を見にいったそうです.

 「もう満開になっていましたよ!」

 「そうですか,たしか,数日前に開花宣言がなされていたけど,早くも満開ですか!」

 「今が一番ですよ!さくら,さくらの歌にあるように,『においよ,いずる』とありますので,思わず,近くによって匂ってみました」

 「いつも,さくらの満開を見逃していますので,今年は,思い切って出かけてみましょうか!」

 この季節,肺病にかかって病床にいた石川啄木は,白い着物を着て桜並木を歩いてみたいとおもったそうで,その短歌を感動しながら読んだことがありました.

 そんな気持ちになって,白い服を着て,カメラをぶら下げて,裏の桜の通りを散歩するのもよいですね.

 そういえば,近くの朝来(あさく)地区にあるダムサイトにたくさんの立派な桜の木の林があり,ここで開かれていた桜祭りに何度か参加したことがありました.

 この開催日は,4月の初旬ですので,この頃には桜も散り始めているのではないでしょうか.

 この祭りにおける楽しみのひとつが,そこで揚げたての山菜の天ぷらをいただくことでした.

 また,この朝来地区では美味しい米が栽培されていましたので,それを使ったお結びや混ぜご飯もおいしいものでした.

 ここの桜の木は,見上げるほどで,そのほとんどが10数メートルの背丈になっており,それらが林立していましたので,その草むらに座って,この桜の群れを眺めるのが好きでした.

 一昨日は3月27日でした.

 この日に,松尾芭蕉は奥の細道へと江戸の深川から旅立ちました.

 もうそのころには,「行く春や」と歌う季節になっていたようで,その旅のなかで新たな気持ちになって,桜の開花を追う旅路だったのではないでしょうか?

 咲く白桃色が,さぞかし,かれらの旅路を彩ったことでしょう.

 いざや,いざや,見に行かん(つづく).

sakura20230330
近くの公営住宅の駐車場にて