相 談

 国東に移住してからのことですが、ある企業から、コンニャクに関する相談がありました。

 それによれば、国内のコンニャク事情については、市場が小さく、しかも、外国からの輸入に関しては、関税の問題があり、ここでビジネス展開を行うのは相当に困難があるという解説がありました。

 周知のように、国内では群馬県が最大のコンニャク生産地であり、そこを中心に加工会社ができて、コンニャクバタケのようなヒット商品が世に出されています。

 しかし、それも市場が小さく、国内だけではやっていけない、このようなことを盛んに強調されていました。

 また、コンニャクは、珍しいほどにアルカリ化食品であり、これがダイエットや健康商品として世界的に見直されてきているという話もありました。

 調べてみると、コンニャクのpH(ペーハー、水素イオン濃度)は11という、ある意味で強アルカリ食品でもありますので、これは血糖値を上げない、そして身体をアルカリ化体質にしていくうえで打ってつけの食品ともいえます。

 昨今では、それとは反対の酸性体質の方々に、癌の発生が多い、虫歯や歯周病の病気が多いという指摘もなされています(小峰一雄(著)の一連の著作)。

 若いころから、コンニャクは好きな食品のひとつであり、とくに、錦川の水流で育ち洗浄した「サシミコンニャク」は、真に美味しい食べ物でした。

 「コンニャクが刺身になり、こんなに美味しいのか!」

と、感激しながら、よくいただきました。

 私は、1995年に南カルフォルニア大学(USC)に留学したことがありますが、ここで、本場のハンバーグをいただいたことがありました。

 たしかに、美味しく仕上げられ、病みつきになりそうな食品でした。

 大学のなかにも、このハンバーグ店があり、ここで学生たちが美味しそうに食べている光景をよく見かけました。

 しかし、この時は、ほかにもっと美味しいものがたくさんありましたので、このハンバーグの虜(とりこ)になることはありませんでした。

 それに、ハンバーグの値段が意外と高く、同じ金を使うなら、ニューヨークステーキの肉を買った方がよいなどとおもっていました。

 たしか、分厚いニューヨークステーキの肉の値段は4ドル(当時の円換算で320円)程度でしたので、こちらの方がはるかに購買価値が高かったのです。

 そのアメリカでは、ハンバーグやポテトチップスのせいでしょうか、肥満の方が増えていいます。

 あれだけ、好き放題に食べれば肥満になってしまうのではないかとおもっていました。

 おそらく、この肥満大国アメリカにおいては、それが反面教師となって、ダイエットや健康のための食品づくりが、かなり進んでいます。

 しかし、そのアメリカにはコンニャクはないことから、それをアメリカに売り込もう、このような意図が必然的に生まれてくることは、むしろ当然の傾向といえるのではないでしょうか。

 この超大国に売り込む、それはだれしも一度は想定することですが、アメリカには厳しい食品衛生上の規制があり、これをクリアしていくことが、その売り込み先にとっては容易ではないことなのです。

 たとえば、アメリカの巨大な食品会社にX社がありますが、ここでは、そのアメリカ基準の則した食品の販売を行っており、この会社の基準を通過し、優れた商品でなければ、当然のことながら、ここで販売を代行していただくことはできません。

 また、諸外国においては、それぞれの国で輸出が可能になる食品基準があり、まずこれをクリアしてから、さらに、そのアメリカの会社の基準を克服していくという、いわば二重の制限が存在しています。

 コンニャクの抽出問題

 これらの問題を背景にして、その企業が来られたのは、このコンニャクの抽出精度の向上ができないかという相談でした。

 すでに、この企業が存在してる県の産業技術センターの所長から、「大変ユニークな企業で研究熱心だから、何か相談があったらよろしくお願いします」と依頼を受けていましたので、その相談に快く臨むことにしました。

 この当時のコンニャク成分の抽出には、アルコール(エタノール)が使用されており、この技術をどう発展させるのかが重要な問題でした。

 この抽出技術については、それまでに検討したこともなく、未知の課題への適用でした。

 しかし、アルコールマイクロバブルについての実験は、何度か行ったことがあり、それを含んだ日本酒の問題についても、その特性を究明していました。

 この経験を踏まえて、私には、次のようないくつかの目安がありました。

 1)光マイクロバブルを大量に発生させることができれば、なんとか問題をブレイクスルーできるのではないか。

 2)その際基準となるのが、淡水における光マイクロバブルの発生量であり、それとの比較によって光マイクロバブルの発生量を調べるのがよい。

 3)たとえば、液体が自然の海水であれば、そこでの光マイクロバブルの発生量は、淡水のそれと比較して数倍になりますので、その量的効果によって機能性も大幅にアップする。

 4)アルコールを含む日本酒の場合も、この海水と同様にたくさんの光マイクロバブルが発生しますので、その性状を変えることができるのではないか。

 5)また、このアルコール実験において、非常にふしぎなことが起きましたが、その謎解きが未だにできていませんので、10数年来の課題を抱えたままになっていました。 

 これは、大切そうな内容を有しているのではないかとおもっていますので、そのうち、この謎解きにも挑戦したいとおもっています。

 これらの特性とおもしろさを披露したからでしょうか、この社長さんは、非常に興味を持たれたようで、ここから共同研究が開始されることになりました。

 そして第一次試験(小型装置における簡単な試験)において、非常に重要な結果が生まれ、今度は第二次試験として、中型の実験が、その社長の工場でなされました。

 ここでも、その結果は良好であり、それらを踏まえて、現地のプラントの設計を行うことになりました。

 これはかなり大型の装置になりましたので、その設計においても、それにふさわしい工夫をいくつも施しました。

 いまでは、それがフル回転しているようで、現地の方々も大いに喜ばれているそうです。

 聞くところによれば、その結果は、それまで一度も達成できなかったことが大幅に可能になったそうでした。

 これは、光マイクロバブルを用いた新技術がもたらしたブレイクスルーの成果だったようにおもわれます。

 こうして、コンニャクダマから発した思い出は、蔵王温泉での体験、そして巨大な装置作りへと結びついていくことになりました。

 この本質は、新技術が、それまでの常識を覆して新たな世界へと導いたことにあり、この教訓を今後にも生かしていくとが肝要とおもわれます(この稿おわり)。

rozu
ローズマリー(隣の前庭から、道路側に出てきていた)