焼け石に水

 9月22日に、財務省(日銀)による円の為替介入がなされました。

 それに伴って、1ドル146円が一気に141円にまで一気に下がりました。

 しかし、この効果は数日しか発揮されず、今では、それが本日(10月9日)には1ドル145円にまで戻っています。

 この際の為替介入は2兆8000億円だったそうですが、まさに「焼け石に水」の効果しかなかったようです。

 それもそのはず、一日における円相場の金額は約50兆円ですので、その介入額はわずかに5.6%でしかなく、これで全体に有効な影響を及ぼすことは到底できないことではないでしょうか。

 どうやら、これまでに日銀はせっせとアメリカ国債をドルで購入してきましたので、その総額は約180兆円だそうで、そのうち20兆円を為替介入に持ちることができる金だそうです。

 今後も、今回のような介入をするとすれば、6~7回の為替介入を行うことができるわけですが、それを繰り返し、今後も行っていくと、その20兆円が目減りして、最後には枯渇してしまうようです。

 しかし、その一方で効果のない為替介入を行っていけば、すっかり信用をなくしてしまい、最後には「オオカミ少年」になり果ててしまうという危険を孕んでいます。

 そうなると、円安はますます進行し、年内には1ドル150~160円という最悪の事態に移行してしまう恐れがあるようです。

 大手企業も含めて日本の企業は、外国から材料や部品、あるいは食品や燃料も輸入していますので、それらの物価が円安の度に値上がりしていきますので、「この円安を何とかしろ!」と怒り始めています。

 それでは、なぜ黒田日銀は、未だに、なぜゼロ金利策に固執しているのでしょうか?

 みなさんは、真にふしぎなことだとおもわれているのかもしれませんね。

 よくいわれていることは、少しでも日本国債の金利を上げ始めると、たちまち、その国債が暴落して、その利子分を支払うに四苦八苦してしまうからであり、その出口において日銀が破綻してしまうという、前代未聞のことが起こる危機がやってくるのです。

 しかし、その頑迷なもののなかには、それだけには留まらない問題が含まれているようです。

 すでに、みなさんもよくご存知のことですが、円安はドル高と連動して起こっていることです。

 日本では、円が異常に安くなるたびに、輸入物価が高騰し、ほとんどすべての商品の急激な値上がりを生起させて庶民を苦しめています。

 一方のアメリカでは、ドル高の下で景気後退(リセッション)とともに、この3カ月において消費者物価指数が8~9%にもなり、深刻なインフレーションが加速しています。

 周知のように、実質的な中央銀行であるFRBによる過去に類例がないほどに急激な金利の上昇がなされ、この年末までに4.5%までの長期金利のアップがもくろまれています。

 このような金利の急速な上昇は、借金をして企業運営を当たり前のように行ってきた企業にとっては、自らが危うくなるほどに大変な事態になってしまったのです。

 たとえば、毎月の借金返済の利子が10億円とすると、その金利の上昇が、その返済額が10倍、20倍へと膨れ上がり、その返済のために、自社の財産を投げ売るしかなくなってしまうのです。

 アメリカ国債の金利を急激に上昇させることで、とにかくハイパーインフレを防ぎたい、そのために企業が不振に陥っても仕方ない、このような断固としたFRBの姿勢が示されていることによって、日本を除くほとんどの国がゼロ金利政策を止めて、金利を急激に上げていく政策に転換していきました。

 これによって、円はひたすら弱くなり、円安が進んでいきました。

 すなわち、円安は、輸入物価の高騰によって日本企業と国民を苦しめていますが、それよりもアメリカの要請を大切にしているからであり、そこには、アメリカ従属の体質が沁み込み、何はさておいてもアメリカに従うということが日本政府と日銀の哀れな習慣になっているのです。

1ドル146円の攻防

 本日(10月11日)の円ドルは、1ドル145.7円です。

 これが、146円に再び上昇すると政府の為替介入がなされる可能性があることが報じられています。

 しかし、この介入は、先の連休の3日間で戻ってしまいました。

 その最も大きな原因は、アメリカとの協調介入がなされなかったことから、その効果はほとんどなかったのです。

 もともとゼロ金利政策によって円安を促進させながら、それとは真逆の円介入、すなわち円高を誘導して、ドル売り、円買いを行ったのですから、ちぐはぐもいいところです。

 なぜ、このように「狂乱じみた介入」をしたのでしょうか?

 かつて、橋本内閣の時に、溜まりすぎたドルを少し売ろうとしたら、アメリカの逆鱗に触れて、それを取り止めざるをえなかったことがありました。

 今でも、ドルを得ることに関してはアメリカの許可が必要になっていますので、それをアメリカに御伺いしたのではないかと推察されます。

 おそらく、その許可を得てから介入が実施されたのではないかとおもわれます。

 ドルを売り、円買いを行って円高に誘導することは、アメリカにとってはドル安に転じることになるので、それをアメリカが許さなかったにもかかわらず、なぜ、ここにきて、それが許されたのでしょうか?

 日本が、切に恋い願ったからでしょうか?

 そんなことで、アメリカが譲歩するわけがありません。

 すなわち、ドル売りが今のアメリカにとっては、さほどの問題ではなく、むしろメリットがあるのではないかと判断がなされたのではないでしょうか。

 その理由は、アメリカを含めて世界各国においてドルが不足していることにあります。

 世界最大の借金大国アメリカにおいては、国内の産業を興して内需を増やしていくことができていません。

 それゆえに、輸入に頼るしかなく、それにはドル高が真に都合がよいのです。

 しかし、その輸入の促進によってインフレーションが改善されていくのではありません。

 2兆8千億円程度であれば、アメリカのドル高には、ほとんど影響はない、そして、世界中のドル不足には、ややその埋め合わせができる、さらには、円を売ってドルを買わせるというこれまでの基本路線が変わることはない、このような思惑がアメリカ側にあったのではないでしょうか。

 どこまでも、アメリカ追随であり、これが属国化の実態なのでしょう。

 しかし、そのアメリカでは、明らかにアメリカのダウ平均株価は減少し続けており、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、そしてテスラの株価などSP500が先導的に低下しているようで、この減少傾向が、リーマンショック前の傾向によく似てきた、さらには、そのショックの大きさははるかにそれ以上だという指摘も生まれています。

 借金までも商品にして、しかも、リーマンショックの時以上に、ビバレッジという掛け金倍率をはるかに大きくしてきたことで、それらが壊れるときこそ、その崩壊性、破綻性はさらに大きくなり、危うさを増している、これが、今日のウルトラ級パラダイムシフトにおける最大の特徴といえそうです。

 おそらく、今後もゼロ金利政策に頑迷に固執し、そのなかで焼石の水にしかならない円高介入を行うという、まさに狂乱の愚行を繰り返し、その度に日本経済を崩壊、破綻させていくでしょう。

 これこそ、アベノミクスの帰結であり、その主人公とそれを先導した経済学者、政府財務省、日銀は、その悪行ぶりを歴史にしっかりと刻まれていくことになるでしょう。

 この崩壊と破綻に備えて、何を考え、実践していくのか、そのことが真正面から問われているのではないでしょうか。

 その私の方法は、新たな技術で対抗していく。これを本筋の道と考えています(つづく)。

sannpo
散歩にて