物価高騰

 日本に、半世紀ぶりの異常な物価高騰が押し寄せています。

 今から50年前といえば、1972年のことです。

 まだ私は大学生であり、当時「狂乱物価」といわれていたことを思い出します。

 トイレットペーパーやインスタントラーメンが、日を追って少なくなり、最後には無くなってしまいました。

 その後、ようやく、それらの補給がなされるようになりましたが、前者における対策としては、大学で「用足し」を済ますことにしました。

 また、後者に関しては、ようやく店の棚に、それを見つけても、今度は値段が2倍になっていて、これでは「買い足し」はできないと苦い思いをしました。

 「買占め」、「売り惜しみ」が横行し、その悪徳ぶりが国会においても大問題になりました。

 周知のように、その時は、オイルショックで原油の値段の高騰が引き金になりましたが、今回も、その時の様子によく似ています。

 まず、この異常な経済状況のなかで、まさに「濡れ手で粟」の、ぶったくりで、ぼろもうけした連中がいます。

 その典型が、石油売り大手メーカーです。

 石油価格の高騰によって、政府の経済産業省は、いち早く、燃料油価格激変緩和対策としてガソリン価格の全国平均が1リットルあたり170円以上となったときに、政府が価格抑制のために1リットルあたり35円を上限に石油元売りなどに支給する制度を発動させました。

 しかし、末端の石油価格は、そんなに下がっておらず、ほぼ高値が維持されています。

 そんななかで、先日、その石油売り大手企業が史上最高の何千億円という利益を上げたことが報じられていました。

 これには、大手企業を厚く助け、庶民の辛苦には目を向けないという本末転倒した姿勢が透けて見えます。

 また、6月に入って、さらに異常な「円弱(『円安』というよりも、この呼び方が正確ではないかと思っています)」によって、輸出を主体とした製造業大手も莫大な利潤を得ています。

 経済学者の野口悠紀雄氏は、「円安は麻薬だ!」といい、円安の度に、日本の製造業が自己革新力を衰退させてきたことを指摘されていますが、それこそ、現時点は、その「強烈な麻薬」に酔いしれているのではないでしょうか。

 なにせ、何もしなくても異常な円安によって、自動的に莫大な利潤が転がり込んでくるのですから、笑いが止まらないでしょう。

 しかも、日本の製造業の場合は、この30年間、まったくといってよいほど労働者の賃金を上げないできました(実質はマイナス)びで、その分も利潤として加算されているのですから、あきれ果てるほどの厚かましさです。

 本来であれば、労働者が働いた分を賃上げして、莫大な利益の一部を労働者へ支給するという、当たり前のこともできなくなりました。

 賃上げなどは、どんでもないといいながら、円安による利益に、ほくそ笑んでいればよいのです。

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ラベンダー

円弱・円安

 さて、その円安ですが、5月30日の時点では1ドル126円でした。

 それが、本日(9日)は1ドル134円まで円安が進みました。

 この10日間で7円もの円安となり、真に異常な状態が進行しています。

 なぜ、このように異常な円安、すなわち「深刻な円弱」が発生しているのでしょうか?

    その原因は、ジャーナリストの佐藤章さんが、強調されていた「化け物」としか言いようのない日銀の恐ろしい金融政策にあります。

 その「化け物」の正体を再録しましょう。

 ①日銀が保有している国債の総額が1000兆円を超えている。

 ②銀行が日銀に「当座預金」として預金されている総額が550兆円ある。

 ③年金積立金管理独立行政法人(GPIF)による運用資金を37兆円も持ち出している

 ④新型コロナウイルス対策として銀行に貸し出した資金の総額が150兆円もある。

 合計で1750兆円もあり、真に気の遠くなる正体です。

 これらは、アベノミクスの末恐ろしい結果であり、ここからは破綻の道しかないのではないでしょうか。

 まもなく、アメリカのFRBが、3回目の国際の金利アップを発表しますが、これによって日米の金利差は、さらに広がっていきます。

 日本側の当事者のトップは日銀の黒田総裁です。

 かれは、相変わらず、国会他で、これまでのゼロ金利政策を維持継続するといい、今の首相も、それに同調しています。

 なぜか?

 その理由は簡単で、少しでも金利を上げていけば、その1750兆円もの「化け物」が、日本社会を蝕むようになるからです。

 世界中で、今起こっているインフレーションを抑制するために国債の金利を上げようとしているのに、日本だけが、それと逆行し、ゼロ金利政策に固執しているのです。

 この円弱・円安に加えて、石油をはじめとする輸入物価の高騰によって、国内の物価が高騰し始めました。

 この半世紀ぶりの異常な物価高騰の暴風が吹き始めた時に、またもや、日銀のクロさんは、おかしな発言を行って、それが総スカンに合うと慌てて撤回するという、お粗末をしでかしました。

 これは、最近の講演で、

 「家計の値上げ許容度も高まってきているのは、重要な変化と捉える。

 日本の家計が値上げを受け入れている間に、賃金の本格上昇にいかにつなげていけるかがポイントだ」

といってのけたそうです。

 あまりにも、ひどい家計認識であり、それを「賃金の本格上昇」に結びつけるという、訳のわからないことを堂々と披露したのです。

 家計が物価の値上げを受け入れるはずがなく、まず、この認識が誤りであり、こんな認識でよく日銀総裁が務まっているなとあきれ返りました。

 しかも、このクロさんは、賃金の本格上昇に本気で取り組んだことはなく、これまでは、それとは反対のことを執拗に実行しようとしてきたのでした。

 それは、デフレ脱却と称しながら、物価を2%アップさせるというインフレ政策でしたが、いくらゼロ金利で市場に円を溢れさせても実現せず、自らも、その目標の達成を諦めていたようでした。

 しかし、このインフレ策は、じつはデフレ脱却といいながら、その物価高によって実質賃金を下げることを狙ったものであり、それこそが大企業思いのクロさんの策だったのです。

 物価が上がれば、労働者や市民はたちまち困ってしまいます。

 賃金が上がらない状態が固定化されていますので、労働者や市民にとっては、物価が上がらない状態の方がよいのです。

 すなわち、クロさんは、大企業のために、インフレ目標を設定し、それを実現するためにゼロ金利政策で、金を溢れさせたのではないでしょうか。

 長い間、このようなことを必死で考えていると、どうも頭のなかが凝り固まってきて、「家計の値上げ許容度も高まってきているのは、重要な変化と捉える」というとんでもない理解にに及ぶようです。

 これは、庶民の常識さえ理解できない、哀れな姿といってよいでしょう。

 そんな頭で、「賃金の本格上昇」のことなど考えることができるわけがなく、そういわねばならないほどに、かれが追い詰められている証拠といってもよいでしょう。

 すなわち、かれの頭のなかを自ら暴露するという墓穴を掘ってしまい、その非難囂々(ひなんごうごう)に慌てて訂正、取り下げを行ったのでした。

 どうやらクロさん、もうあなたの出番は無くなっているのではないですか?

 よく、ご自分のことを考えられて見てください。

 それが、あなたのためであり、このままでは、あなたは、日本の経済を破綻させた最大の歴史的人物として名を残すことになりますよ(つづく)。

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               白とピンクの花(前庭)