麦秋

 最近は、中津市(大分県)によく出かけています。

 国東の我が家から、中津の目的地までは1時間余、途中の高速道路からの車窓の景色を楽しんでいます。

 とくに、宇佐市院内地区の緑の山々は魅力的で、いつも私を刺激し、興奮させてくれます。

 折しも、今は麦秋の季節であり、もうすぐの刈り取りを前にして麦の穂が首を垂れていました。

 世界的な気候変動によって名だたる小麦生産地のアメリカ、カナダが干ばつで昨年に続いて不作、インドも、大変な異常高温のために小麦の輸出を禁止しました。

 もう一方の産地であるロシアとウクライナの小麦も、手に入らなくなっています。

 ロシアは、自国の食料自給率を向上させるために小麦輸出を禁止、ウクライナでは、積出港のオデッセイにおいて昨年収穫した小麦が倉庫に置かれたままになっています。

 この世界規模の小麦不足のために、至る所でパンやピザの異常な値上がりが続いています。

 気の利いたメディア上でも、小麦不足に端を発した食糧危機が近い将来に起こるのではないかという心配を報じ始めました。

 立ち食いソバが一杯1000円、同じくラーメンが1000円の時代がやって来るといわれています。

 こうなると、これまでの飲食業のみなさんのほとんどは、やっていけなくなり、廃業や倒産が相次ぐようになるでしょう。

 コンビニも同じで、その生き残りをかけた「激烈な攻防の場」の一つになっていくでしょう。

 物価が高くなっても賃金が上がっていくアメリカとは違って、日本では、賃金が実質下がっていくなかで、物価のみが異常に高騰しているのです。

 こうして、洪水が去った跡のように、何もかもが壊れて土砂まみれになってしまい、国も破れてしまいます。

 そんなことを危惧しながら、鮮やかな麦秋の彩に見惚れていました。

緑萌ゆ!

 ふと、その麦畑から目を上げると、そこには、緑が萌えていました。

 若夏の萌え立つような緑の山並みでした。

 太古の昔から、ここには山々が連なり、毎年、何もなかったかのように、この緑が山々を支配しているのです。

 ここには、疫病や戦争による災禍とは無縁の平和で穏やかな世界が、脈々として受け継がれてきた姿があります。

 愚かな戦争によって、ますます、自分たちで食料を生産していくという「豊かさ」を持つことが重要になってきています。

 自国の農業を売り渡し、工業製品を買ってもらうという、真に愚かな「欲深さ」とは、そろそろ「オサラバ」してもよいのではないでしょうか。

 この麦秋の恵みの小麦粉は、地元の道の駅「いんない」において「地粉(じごな)」として売られていました。

 真に結構な味で、ネギ焼や団子汁にしておいしくいただいています。

 これからやって来る「小麦争奪戦争」を見越して、この地粉を少々多めに買い置きしました(つづく)。

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麦秋と緑萌ゆ山並み(宇佐市院内)