経済構造の土台が変わり始めた

 日銀の「企業物価指数」によると、2月の「輸入物価指数(円ベース、2015年平均を100とした場合)」は、122.2となり、前年同月比で34%も上昇しました。

 また、この傾向は3月においても続いており、同指数は前年同月比で33.4%で、前月比でも3.3%増になっています。

 とくに、上昇幅が大きいのが、石油・石炭・天然ガスであり、前年同月比では84.8%増、木材・木製品・林産物で同68%増、飲食料品・食料用農水産物で同26.2%、金属・金属製品で同23.7%増(いずれも2月)と異常な輸入物価の上昇となっていて、これが3月においても持続しています。

 この輸入物価の上昇が、国内の企業物価を押し上げ、2月の国内物価指数うは、前年同月比で9.3%増、さらに3月においても9.5%増という凄まじい物価上昇が続いています。

 これは、第二次石油ショックの影響が残った1980年12月の10.5%に迫るものであり、じつに40年ぶりの歴史的な輸入物価の上昇となっています。

 この特徴は、

 1)異常に高い物価上昇である、

 2)エネルギーから食料・日用品、金属に至るまで非常に広範囲において物価上昇が起こっている

ことにあります。

 当然のことながら、この壮絶な輸入物価の上昇の影響を受けて、国内の大手企業は、一斉に値上げを行いました。

 ①電力大手10社、ガス大手4社による家庭向け料金の引き上げ

 ②丸大ハム・日本ハムなどハム・ソーセージ4社のハム・ソーセージの値上げ

 ③味の素、キューピーのマヨネーズ、調味料の値上げ

 ④王子ネピア、日本製紙、大王製紙などの製紙大手のティッシュ、トイレットペーパーの値上げ、花王の紙おむつの値上げ

 これらは、いずれも10%前後の値上げ幅です。

 それだけ、大きな家庭消費への影響を与えることになりますので、すでに消費者物価指数は、前年と比べて6カ月の連続上昇が続いています。

 このように、日本経済の土台が崩れ始めていますので、そこからの修復が求められるようになってきました。

 1ドル128円を軽く突破

 相次ぐ物価高騰のなかで、円安が一気に進んでいます。

 アベノミクス政策における一つの重要な目標であった物価上昇率2%の達成は、かれらのいうデフレ脱却を示す重要な指標でした。

 自ら招いた不況をデフレにすり替えた目標でしたが、すでに、その目標の2%上昇は越えてしまっているはずです。

 それなのに、6年間達成できなかった目標が達成されたことに、なぜ、日銀の黒田総裁は黙っているのでしょうか?

 あれほど、堂々と「バズーカ」とか何とかをぶっ放すといっていたのに、なぜ、だんまりを決め込んでいるのでしょうか?

 携帯電話料金の値下げ分で0.9%の物価上昇分が見込まれ、さらに、上記のとんでもない物価上昇のことを考慮すれば、すでに目標の物価上昇2%は軽く突破しているはずです。

 その理由の第1は、今の経済状況が最悪に近い「円安、物価高」の経済構造を急激に形成させてしまったからであり、この状態で、2%の物価上昇を達成したと胸を張れば、たちまち袋叩きに合うほどの国民的反発を食うことを知っているからです。

 第2は、異常なほどに急激な円安が進行していることです。

 これには、さすがに無視はできなかったのでしょうか?

 早速、日銀総裁や財務大臣が口先での介入を行っていますが、それで治まるような円安化の進行状況ではありません。

 その基本的な流れは、円を売って金利がより高いアメリカのドル買いが、日本企業も含めて急速に進行しているからであり、それに対して、口先でしか打つ手がないことを見透かされているからです。

 とくに、約1週間前に1ドル125円を突破してからは、日銀と政府による対応策がないままであることから、今や1ドル130円を軽く突破しようとしています。

 おそらく、この突破も時間の問題で、1ドル150円をめぐる攻防になっていくのではないでしょうか。

 来月には、アメリカのFRBによる金利上昇が、0.5%と予想されていて、これがますます円安ドル高の流れを加速させていくことでしょう。

 こうなると、さらに上記の輸入物価上昇が起こり、2~4月において値上げした分では追いつかなくなり、再度の値上げ問題が浮上してくるはずです。

 戦争、コロナ、不況下のおける消費者物価の高騰という最悪の経済構造に陥っていく恐れが出てきています。

 これは、「我が亡き後に洪水よ来たれ」、「後は、野となれ山となれ」の事態へとなっていくことを示唆しているのではないでしょうか?

 この洪水の制御が重要です(つづく)。

huri-jaakasirooo
 フリージャ(中庭)