「豊水」から「秋月」に 
  
 ここ国東は、果物の幸が豊かなところです。

 その代表的果物のひとつが梨です。

 温暖で、比較的多くの降雨もあり、海のそばの小高い丘陵において風がよく通り、果物栽培に適しているのでしょう。

 その旬の果物たちが、私たちの味覚を十分に楽しませてくれています。

 今が旬の果物が梨です。

 この梨の季節の始まりは、少し前の「幸水(こうすい)」でした。

 初めに店頭に並ぶのは、やや小ぶりのもので、おそらく都会への出荷を終えた残り物でしょう。

 それでも、独特のシャリシャリする柔らかさとほのかな甘みの両方があり、初物としてのもの珍しさも手伝って、それを見かけると、すぐに買い物かごに入れています。

ーーー 初物には、何か爽やかさを感じるねぇー! 今年も梨の季節が始まるか!

 こちらに来て、旬の果物を賞味する醍醐味を覚えた私は、この幸水による梨の季節が始まることに、いい知れぬワクワク感を覚えています。

 大きくて立派な梨は大都会へ、その残りが地元のスーパーに並ぶ、これはいつものことですが、それでも味に変わりはありません。

 その代わり、当然のことながら小ぶりの分だけ格安になるので、その方が私どもにとっては都合がよく、手軽に購入することができます。

 すでに、本ブログにおいて紹介した道の駅「いんない」で購入した幸水は、そのように、やや小ぶりながらも爽やかな甘さがありました。

 「これは良いものを購入した。もっと買っておけばよかった」と悔やんだことでした。

 その幸水が出始めたころから約2週間を経て出てきたのが「豊水(ほうすい)」でした。

 この梨の特徴は、幸水よりもより柔らかであり、幸水の特徴であったシャリシャリ感はないものの、甘みは、さらに増すことにあります。

 また、幸水よりは、やや大きくなり、それだけ食べ応えもありました。

 そして、その「豊水」がそろそろ終わるころに今になって、「秋月」が出始めました。

 じつは、先日、Mさん宅においしい地下水をいただきに行った際の車中のことでした。

 「そろそろ、秋月が出てくるころだね」

 「もう、里の駅『武蔵』に出ていましたよ!」

 内心、これは良いことを聞いたと思って、その帰りに、ここに立ち寄ることにしました。

ーーー 秋月があればよいのだが?

 運よく、その目当ての梨がありました。

 折から、いつもすばらしいものを送ってくださるさ所沢のIさんから、「ノドクロ」などのおいしい魚の干物が届いていましたので、そのお返しに、この「秋月」を送付しようと思い立ちました。

 早速、その店頭に並んでいた5個入り袋を2つ、我が家用に1袋を格安で購入しました。

「秋月」が一番 

 国東の梨については、地元の梨農家に、詳しく尋ねたことがあります。

 「国東で一番おいしい梨は、なんという種類の梨ですか?」

 かれは、即座に、こう答えました。

 「それは、なんといっても秋月(あきづき)です」

 かれがメインで栽培しているのは「新高梨」ですので、てっきり、そういうのではないかと思っていたら、まるっきり違っていました。

 そう聞いていたことから、いつか秋月を賞味してみようと思っていました。

 ようやく、その念願が叶い、うれしくなりました。

 「やはり、かれが、いった通りであった。この秋月は、違うねぇー」

 かれが一番だと胸を張っていった理由がよく解りました。

 その梨農家が太鼓判で押した「秋月」の味は、どうだったでしょうか?

 私の評価試験の結果を示しましょう。

 ご存じのように、梨の味を評価する際には、最初の一口が重要です。

 秋月を一切れ、食べてみました。

 「これは甘いねー、上質で爽やかな甘さだ!」

 その甘さは、幸水、豊水以上でした。

 また、シャリシャリ感の舌触りも幸水以上でした。

 地元の梨農家が、「秋月が一番の味だ!」という理由がよく解りました。

 こうして、今年は、念願だった秋月を、昼と夜の食事の後に、半個ずついただくことができ、その旬の味を堪能しています。

 秋月が育つ国東は、真に豊かですね(つづく)。 

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秋月