「線状降水帯」がなぜ発生するのか
お盆を前後して、西日本に発生した水害の特徴は、「線状降水帯」が停滞して河川の氾濫をもたらしたことでした。
わずか3日間の降雨が、通常の8月の平均降雨量の3倍も降った、ということが盛んに報じられていました。
そして、いつものように、土砂崩れの危険性が最高に高まっているという警報も発せられていました。
前記事においては、このように毎年、大規模な災害が発生するのはなぜか、について私の見解を示しておきました。
その本質は、後追いの河川行政とわずかな予算の投入しかなされていないことにあり、それでは安全で安心の豊かな国土づくりはできないことにありました。
パンケーキが好きな首相さんは、その前職時代に、テレビにおいて、河川の氾濫が起きないように、これからは、すべてのダムにおいて、それが起こる前にダムを空っぽにして備えるのだと、堂々といってのけました。
今回は、そのダムの事前空っぽがなされたのでしょうか?
そのような報道は皆無でした。
その措置が適切になされていたのであれば、今回のような氾濫は軽減できたのではありませんか?
災害は、毎年やってくるという虚弱防災体質のわが国ですので、それを救うことができるあなたの提案に基づくダムの新活用をよろしくお願いします。
さて、今回の西日本水害は、お盆明けに再度線状降水帯が発生して、より大規模で深刻な災害が発生することが心配されていました。
しかし、その8月前線は、その後、より南に移動し、九州南部において大量の雨を降らせました。
この移動によって、不幸中の幸いにも、長崎、佐賀、九州北部、広島の地域において、線状降水帯が荒れ狂うことは回避されました。
さぞかし、関係地域の住民のみなさんは、肝を冷やされたことでしょう。
二度目の襲来はなかったとはいえ、災害を被った方々に、この場を借りて深く「お見舞い」申し上げます。
どうか、一日も早い復旧がなされることを念願いたします。
さて、この間、線状降水帯の形成メカニズムについて考えてきたことを述べておきましょう。
ウィキペディアによれば、線状降水帯は、このように解説されています。
「線状降水帯は、次々と発生する発達した雨雲が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50 - 300 km程度、幅20 - 50 km程度の強い降水をともなう雨域である」
重要と思われる部分を赤字で示しました。
まず、「組織化された積乱雲群」という用語が目につきました。
気象庁によれば、積乱雲の特徴が次のように説明されています。
「積乱雲は、強い上昇気流によって鉛直方向に著しく発達した雲です。雲の高さは10キロメートルを超え、時には成層圏まで達することもあります。
夏によく見られる入道雲も積乱雲です。一つの積乱雲の水平方向の広がりは数キロ~十数キロメートルです。
一つの積乱雲がもたらす現象は、30分~1時間程度で局地的な範囲に限られます」
このなかで重要と思われる部分も赤字で示しました。
この2つを考慮すると、問題の線状降水帯の実体がぼんやりと観えてきます。
その概要は、1)上昇気流を伴う積乱雲の下、2)ひとつの積乱雲がもたらす局地的な降雨の時間は、30分~1時間、3)これが、連なると、数時間以上の局地的大降雨がもたらされる、といえます。
そこで問題になるのが、「積乱雲の組織化」です。
これは、どのような組織化(organized)の構造と特徴を有しているのでしょうか?
組織化(organized)とは
そこで、この地球表面における雲の流れは、流体現象として理解することが重要になります。
この「流体現象」は、渦巻きの流体運動として考えることが本質的理解に結びつきます。
世の中が進み、さらにコンピューターが進化していけば、この3次元の渦構造として描かれて報じられる日がやってくるでしょう。
基本的な流れは、西から東に向かう大気の流れです。
これに加えて、高気圧の領域から低気圧の領域に向かう流れです。
夏場には、太平洋や南シナ海の高気圧流体から低気圧領域の前線に流れ込みます。
周知のように、南の高気圧帯では、温かい湿った大気の圧力の高い部分です。
この温かい湿った空気が、前線に入り込み、それらが混合することによって豪雨が次々に発生するようになります。
今回も、お盆過ぎの二回目の豪雨の際に、南の高気圧領域と前線の境界の領域にきれいな線状降水帯が形成されていました。
つまり、線状降水帯は、この高気圧領域に形成された温かい湿った大気が、より冷たい、そしてより乾いた大気が、前線との境界付近において形成される雨領域といってよいでしょう。
温かい大気は自ずと上昇し、逆に冷たい大気は重いので低下していくという基本的性質を有しています。
それゆえ、これらの大気が衝突すると、上の成分と下の成分が互いに回転して渦となり、混ざり合っていくのです。
その渦の構造と上記の線状降水帯との相互関係は、より具体的には、どうなっているのでしょうか?
次回は、その渦構造についてより詳しく分け入ることにしましょう(つづく)。
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