真夏の訪問者
27日は鹿児島から、28日は北海道からの訪問者があり、いずれも共同研究における重要な協議を行いました。
前者に関しては、中間的な段階に辿り着きましたので、改めて今後の基本方針を検討し、その3つの進め方について具体的な内容を確定しました。
その第一は基礎実験に関することであり、第二、第三は、その結果を踏まえた応用に関することでした。
最前者に関しては、その試験材料が確保されていますので、その準備が始まっていることから、これを近日中に再開する予定です。
第二の実験については、その試験材料を送付していただくことになりましたので、それが到着してから実験計画を立案する予定です。
また、最後者については、適切な材料を探していただくことになりました。
以上が、一つ目の打ち合わせの結果であり、これらを踏まえて、これから地道に再試験を繰り返して、コツコツと成果を積み上げていくことにしましょう。
2つ目の訪問者が相談してきたことは、新たな課題でした。
周知のように、北海道は水産業が盛んなところであり、大きくの方々が、その漁獲と加工に携わっておられます。
これは北海道の海の幸が、人々に富をもたらし、その恩恵を受けながら生計に役立ててきたからでした。
しかし、その北海道沿岸における海が徐々に劣化し、かつてのように豊かな漁業資源を得ることができなくなってきました。
たとえば、かつては1年で収穫できたホタテが2年になり、今では3年養殖も珍しくなくなっているのではないでしょうか。
これは、海が弱り、ホタテも弱った結果によってもたらされた現象といえそうです。
また、ウニはどうでしょうか?
かつて(50年余前)のウニの味がしなくなったそうで、その味を覚えている方々も少なくなっているようです。
このウニの劣化には、餌となる昆布の生育が関係していて、かつては20mの長さにまで成長していた昆布が、今では5、6mにしかならないそうです。
これは、明らかに海の自然成長力の低下現象を意味しており、今の状況が続くと北海道の昆布は絶滅してしまうと予想されています。
北海道には、その昆布やウニで生計を立てている方が少なくなく、その衰退と絶滅は、かれらの仕事と生活を奪ってしまうことを示唆しています。
脱炭素問題
これに加えて、アメリカの大統領が変わったことで「脱炭素問題」が、再び世界における重要な課題になっています。
「今、二酸化炭素を減らさなければ、取り返しがつかないことになる」
このような強い危機感を持った発言が各方面から発っせられています。
この炭酸ガスを吸収するには植物が最適であり、陸上では自然の森、海洋では昆布の林だといわれています。
この森と林を、どう上手く守り、育てていくのか、これが今世紀初頭における重要な課題になっているのだと思います。
前者に関しては、内海に巨大な半島が突き出し、その半島における森のほとんどが維持されている、それこそ稀有の半島、これが国東半島です。
幸いにも、私は、そこに住んでいますので、その半島維持装置、あるいは、内海維持、さらには地球維持に貢献する森についての研究を行うことができるという機会に恵まれています。
後者に関しては、先日の4月末に18年ぶりに再会したHさんがいますので、その彼が持ってこられたテーマーは非常にすばらしく、その問題認識の内容も優れていました。
すでに、この3カ月の間に、かなりの水産養殖に関する試験を行い、その結果として、私が提案した課題の探究とその解決方法が次々に見出され、かれのこれまでの水産加工に関する認識が大きく変わっていくことになりました。
Hさんは、自分で納得すると少々難しい問題、あるいはこれまでの常識を覆す問題であっても、それを実現する非常識力を持った方ですので、正に、私の知恵と彼の金棒を奮う力が合わさってきたのだと思います。
最初の課題は、この間、おそらく百年余にわたって気づかなかった問題を明らかにさせたことでした。
これは、海洋生物の生き死に問題の明確化に関することでしたが、そのことが解らないまま、あるいは間違ったままで、その100年余が過ぎてきた問題でもあり、その100年余の常識を覆すことになりました。
第二は、海洋生物の加工の際に、加工者側が望むことは、1)加工効率を上げたい、2)加工時間を短縮したい、3)一度に大量の加工を行いたいことであり、この飛躍的改善を行うことでした。
基本的には、この2)と3)の課題を達成するためには、1)において優れた効率アップが可能な技術の適用が重要になります。
ところが、その現状は、3)を優先したことによって、1)の効率が低下する、その故に3)の時間が徒に延びてしまうという状態に陥っていました。
そこで、1)の課題をより効率的に達成する光マイクロバブル技術を高度に適用する方法を提案し、その試験結果が非常に上手くいきました。
彼にとっては、「驚くほどの飛躍的進歩」になって、驚くほどの喜びを覚えたようでした。
しかし、それでも、私から観れば、それは「道半ば」程度でしかなく、そのことを彼と議論しているうちに、新たなアイデアを2つひらめくことができました。
そのうち、これをより明確にして、適切な時期に彼に提案することになりました。
第三は、彼らにとっては、思いもよらない、ある意味では奇想天外と受け止められるような新概念の提案でした。
このアイデアは、最近の光マイクロバブル水に関する技術的な深化が反映しており、もちろんそれを海水においては試験をしたことがないので、その新たな開発構想の概要を示すとともに、その開始の提案を行いました。
彼にとっては、真にキツネにつままれたような話でしたが、徐々に「それができたなら最高」といわんばかりの顔つきに変わっていきました。
「そうですよ、このアイデアが実証されると、誰も知らない、あなただけのすばらしいノウハウになりますよ!」
こういうとますます、彼の瞳は輝きを増していました。
さて、かれがわざわざ北海道から持ち込んできた新たなプロジェクトについては、それを実現可能であること、そして、その方法の粗方を説明し、残りは予算的な問題を詰めることになりました。
これが実行された暁には、「何もいいことがなかった」北海道に、細やかですが、希望の灯を点火することになるかもしれませんね。
二日間にわたる南と北からの訪問者との協議は、真に意味のあるものとなりました。
「やはり、ここまで来てよかった!」
Hさんが、会談の終わりに、こうつぶやいていましたが、それは、この会談の成果を示唆してるかのように思われました(つづく)。
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