有機物のはたらきについて

 岩田進午著『「健康な土」「病んだ土」』の142ページには、「有機物のはたらき」について、次のようにまとめられています。

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 これらを順次、解説していくことにしましょう。

 まず、①では土の成分が重要です。

 周知のように、土の成分は、粘土、シルト、砂で構成されています。

 このうち、植物を育てるのに適しているのは、粘土とシルトです。

 この2つの成分を用いて「水はけがよくて、水もちがよい土」を作り出すことができます。

 粘土の大きさは、2㎛(マイクロメートル)以下の土のことです。

 また、シルトは、2~20㎛の範囲にある土のことです。

 この土よりも約10倍小さいのが粘土といえます。

 いずれも、電気的にはマイナスに帯電していますので、このままだと互いに反発し合ってそれらが付着することは不可能です。

 しかし、粘土とシルトが混ざり合っている様子は、よく見かけることです。

 粘土やシルトの表面は、マイナスの負電位を帯びていますので、互いに反発し合いますが、実際には、粘土粒子もシルト粒子も汚れていて、その汚れ成分が、プラス帯電の有機物なのです。

 そうであれば、その有機物が付着した粘土とシルトが、ともにプラス帯電となり、それによって、また互いに反発し合うのではないかと思われます。

 実際には、そうなりません。

 なぜなら、そこに腐植というマイナス帯電の高分子物質が接着材の役割を果たしているのです。

 すなわち、シルトと粘土の付着は、この腐植(微生物が有機物を分解することによって生産された高分子成分)を接着剤として互いに付着し合うのです。

 すでに述べてきたとように、粘土とシルトの大きさは約10倍も異なりますので、それらが付着し合うと、その周辺の必ず隙間が出現します。

 この隙間だらけの土の構造が「団粒構造」と呼ばれています。

 この構造の形成によって、「水はけがよくて水もちがよい土」になるのです。
 
 この団粒構造の土を作りだすには、有機物が不可欠であり、それが作り出す「腐植」が重要なのです。

 そして、この有機物を分解させて腐植を作り出すのが、微生物なのです。

 微生物が、有機物を餌にして分解することで腐食が生産され、団粒構造の土が出来上がるのです。
 
②化学的緩衝作用とは

 粘土と腐植は、土の化学変化を緩慢にする、すなわち緩衝作用を引き起こすのです。

 植物が生育する土の内外において、急激な化学的作用が進行することがあります。

 その典型は酸性雨であり、これによって土の水素イオン濃度は急激に低下します。

 ところが、この酸性化を和らげる、すなわち、緩衝作用を発揮させるのが、粘土と腐植なのです。

 酸性化において、水と土で比較された実験結果が紹介されています。

 土の場合、水と比較すると、その緩慢比率は53%であり、逆に、アルカリ化の緩慢率は43%でした。

 すなわち、土のなかでは約半分の酸性化、アルカリ化しか起こらないのです。

 真にすばらしい、緩衝力を有しているのが土なのです。

 それは、シルトのなかや、シルト同士の隙間においても同じです。

 さらに、もっと重要な性質があるのですが、それについては、またの機会に紹介することにしましょう。 

 ③~⑥については、次回において詳しい解説を試みましょう(つづく)。

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               前庭のグラジオラス