光マイクロバブルの生物活性

S社における1000トンのエアレーションタンクにおいて、わずか2機による光マイクロバブル発生装置の導入によって、活性汚泥の量が増えすぎて2倍にまでなったこと、そして、そのために、廃液の希釈が不要になり、処理能力が20倍も向上したこと、この結果は何を教訓として残したのでしょうか。

また、その隣に新増設した1300トンの排水処理槽において同じ処理が行われ、本工場はフラッシュメモリづくりのフル稼働を行なうことができたことを、どう考えたらよいのでしょうか。

これは、とても「結果オーライ」では済ますことができない重大な問題でした。

このことを今の時点で再考しますと、そのようなことが生起したことは、さほどの吃驚現象ではなく、そのような結果がもたらされたことに関しては、そうであろうという判断を示すことができます。

その核心的問題は、光マイクロバブルと光マイクロバブル水の生物活性機能にあり、それが、既存の下水処理におけるエアレーション方法においては実現されていなかった新たな方法だったのです。

それまでの常識、それは今も、それがまかり通っていると思いますが、エアレーションによって溶存酸素を増やし、それによって微生物(活性汚泥)の増殖を行なうということのみを信じていたからだと思います。

ここで、重要なことは、1000トンという大容量のエアレーションタンク内においてわずか2機の光マイクロバブル発生装置を入れただけで、何が重要な変化をもたらしたのか、という問題です。

わずか2機の光マイクロバブル発生装置からの光マイクロバブル発生量は、2ℓ/分ですので、これを一日あたりに換算すると、2880ℓ/日になります。

その量は、1000トン水槽の容量の1/347でしかありません。

これでは、溶存酸素濃度の増加には、ほとんど役に立ちません。

周知のように、空気中の酸素は1/5しかありませんので、その量は約1/1700となり、きわめてわずかな寄与しかできません。

既存の技術から見れば話にならない量であり、私も、そう思って「光マイクロバブルを下水処理に使うのは無理ではないか」と思っていました。

ところが、その常識を覆す「非常識の結果」が、そのS社の1000トン水槽で起きたので、これを振り返ることには、それなにの価値があると思います。

その突破口は、

「光マイクロバブル化すると酸素も窒素も同じように溶解する」                という現象を見出したことにありました。

これは、既存の常識を大きく覆すものでした。

それは、

「酸素は溶かすことができるが、窒素は、ほとんど解けない、空中に放出するだけだ!」     というものでした。

それでは、

「光マイクロバブルにすれば、窒素が酸素と同じように溶ける」                という非常識をどのように考えたらよいのでしょうか?

ほとんどの方は、「空気中の窒素は、簡単に水には溶けない」と思われています。

その通りであり、窒素は、簡単には水に溶けない物質です。

しかし、容易には溶けないものを特殊な方式を用いて溶かすことができれば、それらの方々は納得してくださるでしょうか?

なかには「それでも信用しない」と仰る方もおられました。

そして、ごく一部には、「それを溶かすには、何か特別の条件があるのではないか」と興味を抱く方がおられるかもしれません。

「非常識の塊」

その意味で光マイクロバブル技術は「非常識の塊」であり、そのなかに手足も頭もすっぽり入れないと、それをよく理解することはできません。

幸いなことに、S社の1000トン水槽内への光マイクロバブルの挿入は、比較的深い(水表面から数メートル)位置から行われていました。

それだけ、水圧がかかりますので、そこに供給した光マイクロバブルは圧力を受けて潰れ、それだけ溶けやすくなります。

ここで思い出すのは、広島の江田島湾において、水面から10mの深さの地点に光マイクロバブル発生装置を置いて光マイクロバブルを大量発生させたときのことです。

水深10m付近に白い光マイクロバブルの塊が横に広がり、水面付近までは上がってきませんでした。

おそらく、これと同じ現象が起き、途中で、そのすべてが溶けてなくなってしまったのだと思います。

それでは、この排液中で、空気光マイクロバブルが、どのように溶けていったのでしょうか?

そして、それが溶けた後に、どのような作用効果が働き、大量の微生物(活性汚泥)の増殖が実現されたのでしょうか?

前者に関しては、液体中での光マイクロバブルの動的挙動が解明されることで説明が可能です。

また、後者に関しては、その「微生物活性」のメカニズムを究明することによって明らかになることです。

これらに関しては、次回において、より詳しく解説することにしましょう。

(つづく)。


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                             白い雲と青空