光マイクロバブルの生物活性

前記事の続きです。

前記事において、マイクロバブル技術(光マイクロバブル技術)が、既存の下水処理市場において然程普及しなかったことを記しましたが、その理由を考察しておきましょう。

その第1は、S社の廃液が、写真処理用のものであり、pHが12と極めて高く、特殊な廃液だったことにあります。これを、活性汚泥法を用いて処理しようとしたために、その廃液の20倍希釈をしなければならなかった、これが光マイクロバブル導入前の問題でした。

周知のように、活性汚泥法は、そのエアレーションタンク内において曝気装置を設置し、そこでエアレーションを行い、好気性微生物を増殖させて水質処理を行います。

その際、酸素濃度が低いと微生物の活動が落ちますので、その溶存酸素を高めるためにさまざまな努力がなされてきました。

小さなエアレーションタンクであれば、そこに多数の曝気装置を配備すればよいのですが、このS社のそれは1000トンの巨大なタンクでしたので、そこで溶存酸素濃度を十分に大きくすることは不可能なことでした。

廃液の濃度が濃いことから、希釈するしかなく、しかも下層は嫌気にしていて汚泥の発生を抑えたいという方式でしたので、そこに処理能力としての限界がありました。

この難問を解決したのが光マイクロバブル発生装置2機の導入だったのです。

たしか、そのタンクの溶存酸素濃度は上層で2ppm前後でしたので、エアレーション量を大きく増大させて微生物を増やすことはできませんでした。

しかし、光マイクロバブルは、その問題を一挙に解決し、エアレーションタンク内の微生物の量を約2倍にまで増大させたのでした。

ここで重要なことは、微生物(活性汚泥ともいう)の増殖には、毎分1リットルの光マイクロバブルの発生で十分だったということです。

巨大な1000トンタンクに、わずか毎分2リットル(1機毎分1リットルの発生)の光マイクロバブルの発生で、微生物の増殖量は、少々多すぎるほどだったのでした。

その際、その微生物の増殖は、新種の微生物はなく、そのほとんどがよく知られている下水中に発生するものでした。

ご承知のように、巨大な1000トンタンクのなかに光マイクロバブルを毎分2リットル入れただけでは、その溶存酸素濃度の改善にはまったく至りませんでした(実測値も変化なしであった)。

それでは、そのタンクのなかで何が起きたのか?

これを最も知りたかったのは、そのS社の当事者のみなさんでした。

しかし、当時は、私も、この理由について明確に解説することができませんでした。

今振り返れば、それは、「光マイクロバブル水の生理活性作用」にあったいうことができるでしょう。

ここで注意を要することは、光マイクロバブルではなく、「光マイクロバブル水」という用語を適用していることです。

光マイクロバブル廃液

なぜ、光マイクロバブルではなく光マイクロバブル水なのでしょうか?

このエアレーションタンク内への光マイクロバブルの注入は24時間の連続運転でした。

その1日の光マイクロバブルの注入量は約2880ℓです。

その量は、1000トンのエアレーションタンクの1/347しかありません。それは、1年かけてようやく、そのタンクを満杯にできる発生量なのです。

しかも、そのタンクのなかで発生させられた光マイクロバブルは、すぐに溶解して消えてしまいます。

これでは、タンク全体に光マイクロバブルが行きわたることはありえません。

これは、廃液中で、しかもタンクのかなり深部に光マイクロバブルが供給されていましたので、それはたちどころに光マイクロバブル廃液になっていきました。

ここからが、それまでの常識では通用しない部分です。

すぐに溶けて光マイクロバブル水になっていくのであれば、それでよい、のです。

それでよいのであれば、その光マイクロバブル廃液とは何か?

ここで、読者にわかりやすく説明するために、Q&A形式で述べることにしましょう。

「これが問題になりますね」

「その通りです。光マイクロバブル廃液に変わってしまった方がよいのです」

「それは、なぜですか?」

「じつは、光マイクロバブルの気体成分は空気です。この空気の成分は窒素と酸素です。

この割合は4体1であり、窒素は酸素よりも4倍多く含まれています。

この気体成分が、エアレーションタンク内で溶けていきます。すると、どうなると思いますか?」

「えっ!どういうことですか?よくわかりません!」

「そうでしょう。ここからが非常識中の非常識のことが起こっていたのです」

「ますますわかりません。その非常識なこととは、いったい何なんですか?」

「そうでしょうね。それは、光マイクロバブル内では、窒素も酸素も同じように速く溶けてしまうということです」

「ちょっと待ってください。窒素は、溶けにくいと聞いていますが、それが酸素と同じように溶けてしまうのですか?」

「そうですよ。なぜ、そうなのかは、ちょっと複雑な問題なので、ここでは、その解説を控えますが、そこに真に非常識で、重要な問題が隠されていました」

「そうですか。なんだか、ますますわからなくなりましたが、窒素と酸素が同じように溶解するということで何が起こるのですか?」

「そうです。そこが肝心の問題です。先ほど、空気光マイクロバブルの注入量が装置2機で毎分2リットルといいました。

通常の空気エアレーション装置(曝気装置)は、毎分100~200ℓが多いようです。これと比較すると、1/50~1/100に相当します。

しかし、ここで溶解するのは、酸素成分ですので、実質の酸素溶解量は、その20%ですので、20~40ℓが溶存することになります。

ところが、窒素成分の方はほとんど溶解しませんので、空気中へ放出されるだけです。

一方、光マイクロバブルでは、その空気中の約8割の窒素成分が溶解しますので、毎分1.6ℓが廃液中に溶解します。

これを一日分に換算しますと、2304ℓもの窒素成分が光マイクロバブル廃液に溶解していることになります。

この2.3トンの窒素溶解廃液は、1000トンと比較して1/435ですが、窒素の供給という側面から観ると決して少量ではありません」

「窒素を溶解させた廃液、聞いたことがありませんが、それは初めてのことですか?」

「そうですよ。世界初の技術といってよいでしょう」

それでは、この窒素成分が、廃液中に次々に溶解して「光マイクロバブル廃液」になっていくと、どうなるのでしょうか?

次回においては、その考察に分け入ることにしましょう。

(つづく)。


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                             ローズマリー