光マイクロバブルとは何か (3)
「光マイクロバブルとは、その発生時において1~65㎛(1/1000mm)の直径を有する極微細で、その発生後は、自ら収縮していく気泡である」
この定義において、次の➂の問題を考察してみましょう。
➂自ら収縮する気泡とは何か?
これには、「自ら」と「収縮」というキーワードがあります。
「自ら」とは、他から影響を受けないという意味でもあり、光マイクロバブルは、静水中においても自分で収縮運動を繰り返します。
それでは、その自己収縮運動は、どのような動的メカニズムを有しているのでしょうか?
そこで、この収縮運動については、その起点を探ることが重要です。
その起点は、光マイクロバブル発生装置のなかにある発生箇所にあります。
その箇所は、光マイクロバブル発生装置の出口から、少し上流付近にあります。
そこでは、装置内に形成された旋回気体空洞部の切断・粉砕部分であり、そこから光マイクロバブルが発生します。
ここで重要なことは、この旋回気体空洞部が負圧を形成していて、その値は、約-0.06MPa(約-6m)を示しています。
この負圧の旋回気体空洞部が、超高速(毎秒500回転前後)で切断・粉砕されますので、その切断粉砕によって発生させられた光マイクロバブル内の圧力も、その負圧が維持されていると考えることができます。
つまりは、発生直後の光マイクロバブル内の圧力は、-0.06MPaに近い値になっているはずです。
内部気体の圧力が負圧になった光マイクロバブルが、装置出口から噴出されると、その周囲は正圧(常圧)下にありますので、その周囲と内部で圧力差が生まれ、光マイクロバブルは一気に収縮に向かいます。
周囲の水圧が内部の気体を収縮させようとして流動が発生しますが、その直後には、その収縮の反動で膨張現象が発生します。
光マイクロバブルの収縮と膨張
すなわち、光マイクロバブルは、小さくなっては大きくなるという2つの現象を繰り返しながら、より小さくなっているのです。
それでは、光マイクロバブルの収縮、気泡が小さくなるということは、どういう現象なのでしょうか?
非常に小さな、その直径が数十㎛程度の気泡が、より小さくなる、すなわち収縮するということは、どのような現象なのでしょうか。
その周囲は水(液体)、内部は空気(気体)、これが気泡です。
中にある空気が、周囲の水圧で圧縮される、これが収縮現象です。
この現象によって、いったい、どの程度において気体が圧縮されるのでしょうか?
それが、重要で、真にふしぎなことです。
ここで、膨らませた風船を想起してみましょう。
それを両手で持って、一気に左右から押してみると、どのくらい縮みますか?
あなたの力では、その風船が、ほんのわずかしか縮まないことがわかるでしょう。
その縮み具合は、①1~3%ぐらいだったでしょうか。
②それとも10%ほどだったでしょうか。
➂さらには、20%、あるいは30%を超えたでしょうか?
私も、実際に風船を用いて試してみました。
その実験では、せいぜい①程度の縮まりでした。
中の空気が圧縮されて互いに反発し合いますので、大きく風船を縮めることはできませんでした。
それでは、光マイクロバブルの場合は、どうでしょうか?
水の中で光マイクロバブルを捕まえて押すことは不可能ですので、光マイクロバブルの直径を時間的に追跡しながら計測することにしました。
静水中とはいえ、小さい気泡が上昇しながら、縮まっていく姿をきれいに可視化して、その直径を連続して図っていくことが必要になりますので、鮮明な動画を撮影する必要があります。
この程度の大きさの気泡の上昇速度は、毎秒100㎛、すなわち0.1㎜です。
10秒間では1㎜、100秒間では1㎝となり、そして1m上昇するには、1万秒、すなわち、2.8時間を要します。
非常に遅い上昇速度ですが、この動きを400~800倍にまで拡大すると結構速く見えてしまいます。
これを追跡装置(3次元トラバース装置)で微妙に調節しながら追跡していくことにしました。
まず、この追跡を機械装置を用いて自動追跡するのは不可能と諦め、目がよくて、俊敏で、思うがままにトラバース装置を動かすことができるように若い学生を訓練しました。
この選択は成功、私は、かれらにとても叶いませんでした。
その鮮明画像から得られた可視化動画から、1/33秒ごとに静止画像を取り出し、時々刻々と短時間に変化する光マイクロバブルの直径を計測していきました。
その結果から、光マイクロバブルは最大で約15%の縮小と同じく約15%もの膨張を繰り返していることが明らかになりました。
この光マイクロバブルを収縮させ、それが一気に解放されて膨張していく力は、相当なもののはずです。
この光マイクロバブルの形状を支えているのは界面張力です。
この張力は、気泡が小さくなればなるほど強力になっていきますので、それを縮めさせ、そして膨張させることを繰り返していくとなると、ますます、その張力は大きくなっていきます。
それゆえ、その中の気体の圧力も高くなっていくはずです。
より高圧になれば、その内部の温度も上昇するはずです。
こうなってくると、ますます複雑になり、理解が及ばなくなりますね。
本記事においては、文章のみで、その収縮のメカニズムについてのアウトラインを示しましたので、次回においては、それらをより分かりやすく、図解で解説することにしましょう。
ここまで解明するまでに10数年を要しましたので、それだけ難しく、複雑な現象なので、むしろ簡単に理解できないことが当然のことなのです。
どうか、わかるところから、少しずつ、理解を深めていただきたいと思います。
(つづく)
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