2. マイクロバブル(光マイクロバブル)技術の特徴(3)

これらの各分野における成果の出現が刺激となり、マイクロバブルとマイクロバブル水に関する技術的研究がより深くなされるようになった。また、その基礎としての科学的究明も進展し、その画期をなしたのが、第1回~3回マイクロ・ナノバブル技術シンポジウムであった(2006年~2007年、主催日本混相流学会、日本高専学会)。以後、この成功を契機にして、学会での研究活動がさまざまに発展するようになり、今日のマイクロバブル研究の盛況を得るに至っている。また、これらの発展とともにマイクロバブル技術に関する次の重要な特徴もしだいに明らかになってきた。

 ①図2からも明らかなように、マイクロバブル技術は、わが国の基幹産業の分野に導入され、そこでの成果が生み出されるとともに、一方で国民生活に直接関係する普及も可能にしてきた。そのために、日本の産業(第1次産業、第2次産業)および国民規模の広大な技術の裾野形成が可能になり始めている。おそらく、この裾野形成においては、さまざまな成功、不成功の事例が多々生まれたと思われるが、前者に至る秘訣は、マイクロバブルの物理化学的特性を最高度に発揮できるようにすることと深く関係していた。

 ②マイクロバブルの優れた物理化学的特性は、既往の技術との結合や、それに次ぐ融合を可能にした。また、それらの実現によって困難であった技術的問題を解決し、さらに、時には、それを飛躍的に発展させることも可能にした。たとえば、S社の半導体廃液処理においては、わずかマイクロバブル装置4機の導入によって約20倍の処理効率を実現させ、1000トンの廃液槽の改善がなされた。また、成果を踏まえて、すぐに1300トン廃液処理施設の新増設がなされた。また、広島宮島のIもみじ饅頭屋では、そのおいしさが評判になり、日曜祭日において11万個の売上が可能になった。

 ③マイクロバブルとマイクロバブル水の優れた生物(動植物、微生物)活性作用によって、その成長促進や増殖、体質改善が可能になった。また、その生物環境の改善や制御にも有用であった。最も典型的事例は、広島湾、北海道噴火湾、三重英虞湾、岩手大船渡湾における二枚貝の養殖改善であり、マイクロバブル技術の導入によって斃死防止、成長促進、品質改善がなされた漁民の窮地を救った。

 ④①~③の優れた特性を最高度に活用することによって、より本質的な課題において、新たな技術的イノベーションを生み出す可能性が見出されている。とくに、上記の樹状図に従えば、健康・医療、食糧・バイオ、環境・エネルギーのそれぞれの分野において、その核形成を可能とする革新的技術開発が重要である。

  以上の青い文字の部分は、前述の「マイクロバブル」に関する専門書『マイクロバブル(ファインバブル)のメカニズム・特性制御と実際応用のポイント』の最終第4章において「マイクロバブル技術の誕生とその発展」の「2.マイクロバブル技術の特徴」の部分です。

マイクロバブル技術の特徴

光マイクロバブル(マイクロバブル)技術を1995年に発表し、その創生を世に明らかにしました。 その後、コツコツと学会発表を重ねていきましたが、必ずしも大きな反響を得たわけではなく、実際には、密かに、関係者のみなさんの関心を集めていただけでした。

その学会での光マイクロバブル技術の認知の速度と規模とは大きなものではなく、それとは質的にも量的にも大きく異なった2つの出来事が起こりました。

その第1は、1998年7月24日付で日刊工業新聞の1面トップにおいて本技術の紹介がなされたことでした。

その記事を再掲しておきましょう。

日刊工業19980724

日刊工業新聞の記事


もともと、このように1面トップの掲載とは思っていませんでしたので、この記事には、私自身も驚いてしまいました。

この技術の評価は、私自身よりも世間の方が正確だったのです。

この反響は小さくなく、次のようなものでした。

①新聞発表後の1週間

問い合わせの電話がひっきりなしにかかってきました。一日20本前後の電話があり、その取次の対応をよろしくと、事務にお願いするほどでした。

この電話での問い合わせでは、発表した装置に関しての詳しい説明を要望するものが多くありましたが、それに留まるものが大半でした。

こちらは、できるだけ丁寧に対応しましたので「電話疲れ」するほどでした。

そのせいか、電話をくださった方々は、私の説明を聞いて、満足されていたようでした。

しかし、即の問い合わせは、即の対応で終わりました。

②1週間後から2週目まで

このころから、面会を要望する方々が増えて、その日程調整が行われるようになりました。授業や校務の合間に面会時間を設定するのが、日増しに難しくなっていきました。

多い時には1日3件、少ないときに2件の面談を受け入れるようになり、その面談だけで1日が暮れてしまうことが少なくありませんでした。

なかには、面談後に食事をすることもあり、それによって、行きつけの寿司屋さんの閑古鳥状態を解消して大変喜ばれました。

➂発表後から1か月後

一日2~3件の面談は3か月ほど続いていきましたが、この頃からは、訪ねてきた側に重要な変化がありました。

それは、事前に社内できちんと検討し、質問事項や聞きたいことを含めて決めてくる企業が増えてきたことでした。

これらの面談において、私が非常に勉強になったことは、光マイクロバブル技術に強い関心を示した企業の分野が非常に広いことでした。

そのために、その企業から、その適用分野と使用方法を希望していることを聞き出し、その適用が可能かどうかを判断しながら、適切な見解を示す必要がありました。

第2は、1999年6月から半年ごとに3回連続でNHK「ニュース7」において、広島湾におけるカキ養殖改善に関する研究の様子が報道されたことでした。

これは、上記の日刊工業新聞の記事から約1年後のことでしたが、上記に示したものと、ほぼ同じ現象が、しかもそれ以上に規模を大きくし、さらに期間を長くして出現しました。

すなわち、これらによって光マイクロバブル技術に関する問い合わせと面談対応が日常化していくことになっていきました。

実践的技術の鍛錬と洗練

当然のことながら、私自身がすべての質問に適切に答え、その優れた問題解決法を提示することはできませんでしたので、その面談は、次のような形式で進んでいくことになりました。

まずは、お困りの問題を徹底して聞き出し、その詳細を理解することが重要なので、それを教えていただくことに徹しました。

この場合、「そんなことも知らないのか!」と企業から思われても、そこは頭を低くして、なによりも現場の技術とその問題点を詳しく教えていただくことに努めました。

また、私の専門知識の狭小さにも気づかされ、それを改善して洗練させていくことにも目を向けさせることになりました。

さて、その企業面談は、まず、その聞き出しから始まり、次に、私どもの光マイクロバブル技術の解説を行い、さらに、それらを受けて、その問題解決が可能かの議論を行うことに徹しました。

相手側は、わざわざ出かけてきたのですから、なんとか私から、その問題解決のヒントを得たいという思いがありましたので、その面談は2時間、3時間と続くことになりました。

正直な思いを述べますと、上述の「電話疲れ」から、それ以上の「面談疲れ」を覚えてしまいましたが、それにも増して、次の「洗練」課題を認識するようになりました。

①光マイクロバブルと光マイクロバブル水の物理化学的特性を究明しなければならない。

②光マイクロバブル技術の適用分野は、とてつもなく広いので、それに実践的に対応できるようにしなければならない。

➂現場における光マイクロバブル技術の成果をまとめ、その体系化を行う必要がある。

次回においては、上記①~④と①~➂の両方に関して、より詳しく解説することにしましょう。

(つづく)。



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                             冬の柳の小径