研究打ち合わせと実験   
 
 予定の時間に共同研究先の医院に到着し、すぐに、本日の実験の準備を始めました。

 先生とスタッフのみなさんは、まだ本日の治療の後片付けが残っていて忙しそうでした。

 その準備が終わったころに、先生がやってこられ、すぐに打ち合わせが始まりました。

 最初に、先日の研究会議後の取り組みを報告し、先生の了解を得ることができました。

 これについては、今回の研究開発において、この医院に配備する装置の能力アップを行うことが主な変更でした。

 次に、本日の実験について、その方法を説明しました。

 じつは、この実験の再開にあたり、いくつかのやり残していた重要な問題がありましたので、その問題を解明する必要がありました。

 そのために、次の3つの実験条件において実験を行うことにしました。

 1)サンプルA(サンプルBを改質)
 2)サンプルB(事前に作成)
 3)サンプルC(現場で作成)

 実験は、先生の協力を得て、上記のサンプルを用いて、その現象を可視化しながら、その評価を、先生と私、そして相棒の3人で行っていくことでした。

 すでに何度も繰り返してきましたので、その観察においては共に熟練しており、目の前の可視化画像を観察しながら、その評価において次々に意見を出し合うことができました。

 さて上記サンプルAにおいては、予想した通りの結果を得ることができ、それを三人とも納得しました。

 次に、2)サンプルBの実験を行い、その結果に一同が驚きました。

 私の予想においても、サンプルAの方が優れていると思っていましたが、その通りではありませんでした。

 この結果は、とても意外でしたが、目の前で起きていることは事実ですので、それを認めないわけにはいきませんでした。

ーーー そうか、そうだったのか!

未知の世界へ
 じつは、サンプルBは今まで作成したことがなく、いわば未知のサンプルでしたので、それに、そんな能力があるとは思っていなかった、あったとしてもわずかな能力であろうと思っていたのですが、その予想がまったく覆されることになりました。

 しかし、このBの方が、その応用においては格段に優れていますので、これは非常にうれしい意外性でした。

 ここで、先生の提案があり、上記のサンプルとは異なるサンプルDで、再度同じ実験を行うことにしました。

 これについては、当然のことですが、その反応は少しも認められず、予想通りの結果となりました。

 この3つの結果を得て、その観察現場において、3人の討議が自然に沸き上がりました。

 「これは重要な結果ですね」

 「そうですね。予想外の結果です。そのメカニズムはどうなっているのでしょうか?」

 それについては様々な意見がでましたが、それを十分に解明するには、科学的なデータが不足していましたので、それぞれが推論に留まりました。

 しかし、楽しい議論でしたので、それぞれが胸躍らせて思うところを述べ合うことができたようで、それぞれが、その結果を受容できたことに感激したようでした。

 その議論が終わりかけたころに、先生が私に向かって真剣な顔つきになられて、次のように仰られました。

 「先生、身体を大切にしてください。元気でいてください」

 こういわれ、少々面食らい、その真意を理解することができませんでした。

 それは、その実験の結果の重要性を理解され、これから、この研究を遂行していく私の健康気遣ってくれたことにあったようでした。

 先生は、こういわれ、私に、ご自分が飲まれているフランスのパスツール研究所が出されいる、あるサプリメントを紹介されました。

 ご自分でも試されていて、非常に体調がよくなったそうで、その一瓶を私にくださるといわれたのでした。

 「『健康になってください』といわれたのは、そういう意味だったのか!」

 それをようやく理解し、先生の「思いやり」に深く感謝しながら、それを受け取りました。

 こうして、本日の実験を終えることができました。

 当初予定していたサンプルCを用いての実験は、サンプルA~Cの結果を得て不要であることが明らかになりましたので取り止めました。

 帰りの車中において、一人静かに、その結果を深く掘り下げて考えていたところ、運転手の相棒も、それに心を動かされたようで、何度も私に話しかけてきました。

 それは、自分の予想外のことであったこと、なぜ、あのような現象が得られたのか、そしてこの結果がもたらす可能性と影響が小さくないことなどを中心にしていました。

 「そうだね、これから、その科学的解明が必要ですね。同時に、あの結果をどう活用していくかについても考えてみてください」

 こういいながら、いつもよりは少々控えめで静かに対応した私でしたが、それは、私自身にも言い聞かせていたことでした。

 こうして、四半世紀以上にわたって光マイクロバブル現象と付き合っていると、その時々において、その科学的世界観が大きく塗り替わる瞬間に出くわすという幸運を得ることがありました。

 これまでに、この幸運の女神が微笑むことは数度しかなく、この女神はめったに笑ってはくれないのです。

 どうやら、今回の新たな現象との遭遇は、その微笑み匹敵し、おそらく金的を射たことになっていくのではないかと思われます。

 「分け入っても、分け入っても、青い山」これは吟遊詩人の種田山頭火の句ですが、それにちなんで私流には、「分け入っても、分け入っても、マイクロバブル」ということではないでしょうか。

 その「めぐり合い」とは、未知の世界に足を踏み入れることでもあります。

 そこから新たな科学の構築が可能にしていく道筋を明察していくことでもあります。

 こう考えると、なんだか、自然に楽しくなって大らかな気持ちになっていました。

 「今日は、未知の駅『院内』によって野菜をたくさん買って帰りましょう」

 大きな大根が1本100円でしたので4本を籠に入れ、大きな白菜、小葱、レタスなどで、その籠がいっぱいになるほどでした。

 そのなかに、天然の自然薯がありました。1本千円でしたので、どうしようかと一瞬迷いましたが、今日はめでたいことがおきたので、それを記念して思い切って購入することにしました。

 早速、摺っていただきましたが、粘りがあって、真に格別の「記念の味」でした。

 「犬も歩けば棒に当たる」、この棒が「鬼に金棒」の棒になっていくとゆかいですね。

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梅の花 
 (つづく)