2021年を迎えて(6)

 今年になって新型コロナウイルスの感染が広がっています。

 ここ数日間の特徴は、自宅待機のままで、いきなり死んでしまう事例が増えていることです。

 また、患者を受け入れる病院側が切迫してきて、随所で、病院関係者自身が「病院崩壊」の危機に瀕していることを切実に訴え始めています。

 その典型が大阪であり、とうとう東京における死者の数を大きく上回るようになりました。

 この新型コロナウイルス感染による死者は、毎日100人を超えるようになって、いよいよ深刻な事態に陥っています。

 なぜ、人の死を、もっと大切に扱わないのか、ここに、この問題の本質が現れているように思われます。

 また、本日の新聞報道によれば、英国型の新種のウイルスが、静岡県の男女に感染していたことが明らかになっています。

 これらの方々は、イギリスや外国への旅行経歴はないことから、そのウイルスがもはや市中感染しているという危惧が示されていました。

 この種の感染者は、すでに45名にもなっているそうで、いつも、このように後手後手でしか対応できないようです。

 新宿をはじめとしての東京の4つの区、大阪のミナミ地区をはじめとする根強いエピセンター化によって形成されたコロナの幹を切断しない限り、この新型コロナウイルス感染の拡大は止まらない、これは児玉龍彦先生のご指摘ですが、これに関しても、その幹を断つ動きになっていません。

 そんななかで、広島市民80万人において、無料のPCR検査が行われることになりました。

 これは、関係者の大英断であり、政府や東京都などは、これを学ぶ必要があると思います。
 ある開発依頼

 そんなコロナ危機のなか、K県のある中小企業の社長さんが訪問され、ある材料の開発を依頼されました。

 そのきっかけは、「ナノバブルの研究開発においては、先生が一番」と聞かされたことにあったそうです。

 私が一番かどうかは定かでありませんが、その方々から、その問題の詳しい説明がありました。

 それによれば、この問題は、日本だけでなく世界中で存在し、ますます大きな技術的課題になっていることが解りました。

 そこで、前向きに検討しようということになりました。

 しかし、この課題については、それまで取り扱ったことがなかったこともあり、そして私が直接的な担当者にはなっていなかったこともあって、その取り組みはなかなか前に進みませんでした。

 それでも、この依頼主は数か月ごとに熱心に訪れるようになり、私も重い腰を上げる気になりました。

 そして、その開発実験が本格的に始まったのが昨年の11月でした。

 まずは、その材料の勉強を開始し、その特徴を学ぶために、いくつもの質問を送り返し、そして関係資料を収集しました。

 開発においては、「何をどのようにしたいのか?(目標の明確化)」を明らかにし、「そのための課題解決をどのように行うのか?(解決手段)」の検討を行いました。

 不慣れなこともあって、その関係材料名や専門用語とその意味を覚え、理解することにまごつきながらも、徐々にその全体像が明らかになっていきました。

 同時に、予備的な実験も行いましたので、その学習が実践的にも生かされることで理解が深まることもありました。

 しかし、この段階では、探究課題の明確化や到達目標への接近には程遠く、その入り口付近をうろうろしているのみでした。

 それを承知しながらも、とにかく粗方でよいから実験を行ってみる、そこに何かがあるはずだ、と思いながら、その観察を黙々と続けました。

ーーー さて、何が出てくるのか?

 最初の現象は、あるものが出すぎていました。

 これでは、ポンプが空回りしているのと同じで、光マイクロバブルの作用は生まれていないことがすぐに解りました。

 しかも、その歓迎されないものは、ある短い時間が過ぎた後に発生していましたので、その原因を考える必要がありました。

ーーー これでは、この実感を何度やっても同じで、光マイクロバブルの作用効果が発揮されていないことは明らかである。それでは、どうすればよいのか?

 ここで、予備実験とはいえ、早くも、それが頓挫してしまいました。

 この最初の実験は、その依頼者の要望に沿ったものであり、それが主たる目的ではありませんでした。

 そこで、この条件には拘らず、ひとまず、これでは光マイクロバブルの十分な発生が不可能と割り切って、次に進むことにしました。

 この予備実験の段階は、それが有効かどうかを粗く見極める要素が多いので、一つのことに拘るのではなく、できるだけ多くの条件下で実験を行い、そこから通用するものを選び出していく方がよいことを経験的に学んでいました。

 新たな条件下では、ふしぎなことに、光マイクロバブルが十分に発生されていました。

 これでないと開発の入り口に足を踏み入れたことにはなりませんので、その発生を観察したことで、ひとまず安心しました。

 しかし、その条件を変えたことで、光マイクロバブルの発生が、なぜこんなにも違うのか、その理由は皆目解りませんでした。

 その理由を考えながら、実験を行っているうちに、「おやっ」と思うことがありました。

 それは、それまで少しもなかった白い粉状のものが、水槽の内壁に付着していたからでした。

 液体状のものが、粉状に変化して、わずかであるが水槽の壁に付着していました。

 なぜ、このような粉になって出現したのか?
 
 この理由も不明でした。

 そこで、この実験材料の成分を調べてみました。

 たしかに、その成分の物質は、白い粉状のものが一般的でした。

ーーー もしかして、この白い粉は、その成分が析出mあるいは溶出してきたものなのか?

 この理由もよく解りませんでした。

 このように、いくつもの謎が出てくると、私の方も、それらが頭のなかに蜷局を巻いたようになってきて、ますます、その実験に勤しむという変化が起こっていました。

 これが募っていくと、寝ても覚めてもの状態になるのですが、さすがに、そこまでには至っていませんでした。

 ここまで時間を費やしてよいのか?

 しかし、熱を上げて、時間も大いに費やしていかないと、この種の研究開発におけるブレイクスルーには至らないことは経験的に明らかなことでした。

ーーー そうであれば、こうしてみよう。これがよいのではないか?

 このあれこれの探究は、それが、最初の予備実験の段階を乗り越え、次の本格的な探究に足を踏み入れていることを自然に示すものでした。

 ここまでくると、それが楽しくなり、やがて私は、一心不乱になって実験に明け暮れるようになります。

 この明け暮れがないと、最初の森を抜け切ることはまずない。

 そのことは、長年の経験でよく解っていましので、それに向かうことには少しの躊躇もありませんでした。

 こうして、それは研究開発にふさわしい実験に変身していきました。

 そして、このころから、その実験的検討の結果が、その目的に接近しているか、そして、あわよくば、それを叶えているかどうか、が気になり始めます。

 次回は、その「あわよくば」に分け入ることにしましょう。

 (つづく)

DSCN2139 (2)
ナンテン