小さな書斎

 私には、2つの仕事スペースがあります。

 その一つが、寝室のすぐ隣にある小部屋の書斎(研究室2)です。

 ここにはエアコンが配備されていませんので、しかも西日があたりますので、真夏の間は使用できません。

 その不使用に伴って、ここが、しだいに物置部屋になってしまい、見るも哀れな姿になっていると思っていました。

 秋も深まり、再び過ごしやすくなってきましたので、この書斎での仕事を再開しようと思い、家内に頼んで余計なものを移動してもらいました。

 私は、この狭い書斎が意外と気に入っています。

 周囲に何もなく、160㎝幅の愛用の机が、かつかつ入るほどの広さしかありませんが、そのことがかえって集中しやすいと思っているからです。

 使用しなくなると部屋が乱雑になり、物置のようになっていましたので、その片付けもしていただきました。

 家の奥まったところにあり、寝室やトイレにも近いことから何かと便利です。

 かつては、ここに愛用のデスクトップパソコンがあったのですが、それを大成研究所の研究室1に移動してしまいましたので、今は、家内のノートパソコンを持ち込んで、この原稿を執筆しています。

 しばらくの間は、この書斎と研究室1の両方を行ったり来たりして、気分を紛らわしながらのスタイルが続くでしょう。

新たな実験

 すでに、本ブログにおいても少し紹介してきたように、新たな実験が進行し始めました。

 その専用装置を組み立て、大成研究所のセミナー室の一角に設置しました。

 まずは、小型の装置で見極め実験を行うための装置です。

 今回の課題は、ある材料の改良に関係するものですが、私としては、この種の課題は初めてのことなので、これをどのような方法で進めていけばよいのかが、ほとんど理解していませんでした。

 それでも、私を信頼して何度も足を運んでくださった企業の要望に応えて、その「さぞかし重い」と思われていた足を上げることにしました。

ーーー どうやって、実験を行えばよいのか、皆目見当がつかないが、あれこれ考えてみても仕方がないので手探りでよいから、とにかく始めてみよう。

 今回も、光マイクロバブルと直観に頼るしかない。

 直観は、鋭く、大きなものでないと有効とはいえません。

 この場合、「鋭く」が発揮できるのは、光マイクロバブル技術に習熟していることしかなく、それを新たな課題に試してみようと思いました。

 また「大きい」とは、基本的な科学的命題を踏まえて広く、そして深く考えるという意味であり、これについては、その基礎知識を勉強しないしながら究明していくという初歩的アプローチでした。

 すなわち、初歩から始めて、徐々に熟練へ向かうことをめざすのですが、それが、どこまでいけばよいのか、それも解らないという状態でした。

 新たな課題に挑むときは、いつもそうですが、その課題についての知識は中高校生レベルであり、一方で光マイクロバブル技術については一応かなりの専門家水準にありますので、ここは後者の視点から観るとどうなるか、はたして、そこに活路を見出すことができるか、これらが焦眉になります。

 その手探りの最初は、実験を開始するとよく泡がでることでした。

 これはよいことですが、出すぎると好ましくないことが起こります。

 それは、実験を開始して数分ですぐに発生音が低下したことでした。

 泡が多く出すぎたために、水槽内が泡だらけになり、大量の泡が一緒にポンプに吸い込まれることによって、液体の表面張力が低下したことによって音も低下するという現象が起こったのでした。

 解説書をみると、かなりの量の界面活性剤が含まれていて、これが原因で大量にマイクロバブルフォームが発生したようです。

 ここで問題だだったことは、これでは単に泡の再生産が起こっているにすぎず、比較的大きな泡のみを造っていて、これでは、だめかもしれないと思いました。

 しかし、ここで、おやっと思ったこともありました。

 それは、水槽の内壁に、白っぽい粉のようなものがわずかに付着していたことでした。

ーーー これは、なんであろうか?

 触ってみると、たしかに粉のようでざらざらしていました。

ーーー 原材料のなかには、このようなものはなかったから、新たに出てきたものであろうか?

 ふしぎに思って調べてみると、思い当たることに出くわしました。

 白い粉状のものの正体らしきものが判明したからでした。

ーーー なるほど、そうだったのか! これも泡の力か。どうやら、最初の手掛かりが観えてきたようだ。

 しかし、その手掛かりが示す科学的意味は何か?

 この最初の実験を、その後何度か行いましたが、それ以上の進展はなく、次の段階に進むことにしました。

 それは、最初の材料の弱点を補うために、新たな機能性を有した材料を混合させ、両者の機能性を巧みに引き出すことを狙った試みでした。

 これらをAとBとしますと、それぞれの性質は異なっていますので、その第1段階は、それぞれの性質を上手く引き出す、そして第二段階では、あわよくば、それら以上の機能性を生み出せるか、という狙いでした。

ーーー そんなことができるのか? おそらく誰もやったことがないようなので、やってみないと判らないことではあるが、どうであろうか?

 このような疑問を抱きながら、次の実験に進むことにしました。

 それは、AのなかにBを混ぜた実験でした。

 このAとBの混合実験を開始したところ、すぐに前の実験とは異なる現象が出てきました。

 それは、前実験において現れたすぐの光マイクロバブル発生音の低下が認められなかったことでした。

ーーー 今度は違う。AとBが光マイクロバブルに、
たしかにかみ合っている。今度は、何か違う現象が起こるかもしれない。

 こうして、新たな実験は、第二ステージに突入していきました。

 (つづく)

sirikumo
白い雲