ある「問い合わせ」

 (株)ナノプラネット研究所の問合せ欄に、次のような内容の依頼がありました。

 「私は、光マイクロバブル入浴を長い間愛好している病院の医者です。この入浴が非常にここちよく、健康によく、頭がすっきりしますので、これを手放せなくなりました。

 また、そのすばらしさを妹に紹介すると、彼女も、光マイクロバブル入浴が大好きになりました。そして妹は、母にも勧めて、みんな喜んでいます。

 この光マイクロバブル入浴の良さを体験してきましたので、今度、それを研究に利用しようと思い、相談のメールを出しました。

 じつは、ある臓器の機能障害を改善するために、光マイクロバブルを用いた研究構想があり、それを科学研究費として申請したいので、この件で電話で話をすることは可能でしょうか」

 このような趣旨の問い合わせでしたので、メイルで返事を出す前に、直接電話をすることにしました。

 先生は、東京の大病院に勤められていて、救急関係の専門医をなされていた方でした。

長電話 

 すぐに電話が繋がって、私は、挨拶の会話を終えた後に、次のように切り出しました。

 「それは、科研費申請にふさわしいテーマだと思います。先生の考えられている研究において、私どもの光マイクロバブル技術を用いれば、先生が期待されているような、かなりの成果が出てくる可能性があります。

 じつは、私どもは、2012年から地元の整形外科病院や歯科医との共同研究を継続して実施し、いくつかの重要な成果を得ています。

 先生が考えられている臓器の問題についても、最近、よく勉強してみようと、強い関心を持っています」

 「そうですか、それはよかったですね。安心しました」

 この会話から始まり、次は、光マイクロバブル入浴の作用効果について議論しました。

 ここで、光マイクロバブルの知覚神経刺激作用、大幅な血流促進による身体全体の血の巡り促進、血液循環系の臓器の改善、脳刺激の作用などについて、それぞれの見解をいい合いながら、熱く、深い議論となりました。

 先生の方も、尋ねたかったことがたくさんあったようで、光マイクロバブルの定義や物理科学的特性についても、小さくない関心を示されていましたので、私の解説も多岐にわたり、結局、長々と話をすることになりました。

科学研究費の申請

 私は、20歳代後半から申請が採択されるようになりましたが、30歳代後半からは定年まで、ほとんど連続で採択されるという幸運に恵まれました。

 最初は「若手」で2、3度、35歳の年齢制限を超えてからは、一般研究(C)で、1、2度、そして、試験研究、これが後に「基盤研究(B)」に変わり、この採択が数回、それから「基盤研究(A)」が1度、最後は、年齢制限があって「萌芽研究」が一度という採択があり、この間途切れることはありませんでした。

 また、基盤研究(B)が、2つ年度が重なって採択されたこともありました。

 もともとわずかしかない教育研究費の職場で、科学研究費を連続で確保できたことは、研究を持続的に行う上で、非常に重要な手段でした。

 「試験研究」以降は、マイクロバブルをテーマにした内容でしたが、時代に合った新テーマであったこと、実用的で現場の試験を中心にしていたことが審査員に受けたのでしょうか。

 とにかく、よく採択されたおかげで、それによる外部資金獲得ランキングの上位を占めることにも貢献することができました。

 最後の方では、申請書の書き方の見本を全教員に見せるようにいわれ、他の教員の申請書の添削まで行ったこともありました。

 このおかげで、ひどい内容の申請書が改善され、基盤研究(B)の採択を受けた教員もおられました。
 
 恒常的に科学研究費の採択を受けるには、いくつかの必要条件があるのですが、ここでも最も重要なポイントを示しておきましょう。

 申請書のなかに「特色、独創性」を記す欄があります。

 ここをきちんと書けるかどうか、これが採択、不採択の決め手のひとつといってよいでしょう。

 そのことは、他の先生方の申請書の添削を行ったときにも、顕著な傾向として認められました。

 ほとんどの先生方が、この欄の記入ができず、わずかな字数でしか埋められていなかったのです。

 この問題は、申請書を書き始めてから考え出すのでは遅く、すぐに思いつくものではないのです。

 日ごろから、じっくりと考え、その特色、独創性を明察しておくことが重要なのです。

 また、この独創性にかんしては、一つや二つでは好ましくなく、次々にいくつも提示できることが重要で、ここで審査における採択か、不採択かが決まるのではないかと思います。

 独創性のアイデアを洗練させてから、科研費の申請書に書き込む、この訓練を日ごろから怠ってはいけません。

 すなわち、日ごろから、必死になって、自分の研究の独創性を探索しておくことが、科研費採択の必要条件の一つになるのです。

 やや横道に反れてしまいましたが、電話で、そんな科研費談義をしたところ、すっかり先生に信頼されてしまったようでした。

 そして結局のところ、先生の科研費申請の支援をすることになりました。

 光マイクロバブル技術を最高度に利用して、新たな医療技術が開発されることに結びつく支援になると幸いです。

 (つづく)

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