恐慌なのか

 世界ブリタニカ百科事典における恐慌の定義は、以下の通りです。

 「景気循環の好況局面における過大な設備投資が不況局面の出発点において設備過剰をもたらし,生産と消費の間に大きな不均衡が起り,商品の過剰生産が一般化して価格が暴落し,企業倒産失業が大規模に発生して生産,雇用所得が急激かつ大幅に減少する現象

 日本経済は、2018年を境にして景気後退局面になっていたにもかかわらず、そのことを隠して「景気はゆるやかに回復している」とごまかし、それを理由にして消費税10%に上げるという無茶苦茶が強行されました。

 その坂道を転がり始めた景気に追い打ちをかけたのがコロナショックでした。

 市場には商品が溢れかえり、いわゆる「デフレ経済」が進行していました。

 しかし、「商品の過剰生産が起こって価格が暴落する」までには至っていません。

 先のリーマンショックにおいては、いきなりの金融危機が発生し、それが連鎖的に金融機関の崩壊へと結びつくことで経済の停滞を誘起させました。

 これに対し、今回のコロナショックは、人と物流をいきなり停止させたことで、実体経済において膨大な損失を産み出させました。

 この天文学的債務の発生によって、それを何とか補填し、ショックを和らげようとして世界の政府系金融機関が、多額の経済支出を行いました。

 アメリカのFRBは約300兆円、日銀に至っては500兆円もの財政出動を行いました。

 この出動のおかげで、深刻な経済的奈落に急落して底を割ることは避けられていますが、それでも、企業倒産、失業者の大規模な発生が起こり始めています。

 そして世界各国の経済においては、インフレに向かうのか、あるいは、その反対のデフレに向かうのかがより明確になり始めています。

 超インフレ、超デフレ、これらが恐慌の出口で起こるともいわれていますので、このインフレ率、デフレ率の推移が注目されます。

 ところで日本では、4~6月におけるGDPは、戦後最大のマイナス28.1%(年率)の落ち込みになりました。

 この驚きの発表とともに明らかにされたもう一つの驚愕は、消費量が日本全体で約15%も減少したことでした。

 コロナのために、外に出ない、外食をしない、贅沢な買い物をしない、旅行に出かけないなどの「自粛」によってもたらされた数値でした。

 ある経済学者によれば、いろいろな出来事があっても消費量はほとんど変わらないのだそうで、この15%の落ち込みは、いかに大規模で質的に異なる生活変化が起きていたかを示しています。

 これによって、今のところ、深刻な食糧危機の兆しは顕著に現れていませんが、決して油断はできません。

 贅沢な買い物をしない、この傾向が典型的に現れているのが「自動車」であり、トヨタ自動車の株価は、未だにコロナ前の状態に戻っていません。

 団塊の世代においては、「車に憧れ、車を買うことが人生のいきがいである」でしたが、今や、それは古き良き時代の「指向」になっているようです。

 これから、日本の自動車業界は、電気自動車や自動運転技術の大きな遅れによって、ますます立ち行かなくなるのではないでしょうか。

 また、上記の生産と雇用においては、交通関係企業、旅館などの観光業、飲食業などの分野において深刻な様相を深めています。

 航空会社やかつては多大な黒字会社であったJR東海が窮地に陥っています。

 大幅な人や物の動きの停止や抑制は、黒字を赤字に一挙にもたらしましたが、同時に、「新自由主義」経済の下で経営の脆弱性をみごとに白日化させました。

 また、非正規の女性を手始めとして、大量の解雇が始まりました。

 「Go To XX」でお金を配るのではなく、きちんとした補償で中小企業や病院の経営危機を回避させる親身の手立てが重要です。

Cプロジェクト

 また、このような規模と深さを有する危機が到来しても、それに立ち向かい、克服していく「ものづくりの技術」を養っていくことが大切です。

 同時に、それぞれが、自分たちのコロナ問題を見出し、その解決に動き出す時期が到来しています。

 そのために、コロナプロジェクト(略称「Cプロジェクト」)を、まずは親しい方々に呼びかけ、その総合的な研究を行うことにしました。

 丁寧に、そして緩やかに、それぞれを縛ることなく自由に、「私たちのコロナ問題」の解決をめざしていきたいと思います。

 セミナーでは、その計画の想いを披露し、意見交換を行いました。

 なお、次回の第33回ナノプラネットゼミは、10月17日(土)9時30分から、大成研究所セミナー室開催される予定です。

 (この稿おわり)

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国東の森と空