半沢直樹(2)

 唯一の地上波視聴番組、それが「半沢直樹」です。

 互いの知恵でやったらやり返す、これがゲームのように攻守逆転で繰り返されていくことがおもしろいですね。

 第二回の冒頭は、半沢直樹が得意な剣道のシーンでした。

 私は、幼いころから大学生まで剣道をし、高専教員になってからも学生たちと剣道をしていましたので、多少は、剣道を理解している経験者であり、有段者でもあります。

 このなかで、意識を集中して敵を突くという戦法が紹介されていました。

 それを説いていた半沢の構えがよく、堺雅人さんも、かなり剣道を練習してきた方だと思いました。

 防具の着こなし、構、そして目つきが、その洗練さをよく表していました。

 この連続攻撃を、経済的打突に置き換え、「やられたらやり返す」を息をつく暇もなく繰り返すのですから、息を飲むほどのドラマになっています。

 さらにおもしろいのは、敵味方が明確にされていることです。

 今回は、半沢の古巣の東京中央銀行の三悪人がいよいよ明確になってきました。

 それは、副頭取、取り締まり役、部長のトリオです。

 かれらには名優を配置し、半沢との戦いの構図を非常に解りやすく、そしておもしろくさせています。


 この悪者たちは、「赤穂浪士」の吉良上野介、「水戸黄門」の悪代官たちであり、かれらが悪知恵を働かせて、半沢に襲い掛かり、半沢がそれを覆すところがおもしろいのです。

 ドラマでは、半沢は部長になっていますので、より大人になり、部下の若い社員への指導力と共同性が見ものになっています。

 その意味で、半沢は、上司としての知恵比べ、見通し比べの指導者として活躍することが主になっています。

 その意味で、かれは、指導者としての現代版「英雄」になっているといってよいでしょう。

 このような英雄が、ほとんどいなくなった昨今であり、しかもコロナショックで、大半が「諦め上司」ばかりになっていますので、この半沢の活躍ぶりは、ますます国民から拍手喝采されるでしょう。

 今回のドラマのなかで、半沢が、若い部下に「未来を信じ、それに感謝する」ことを命じました。

 これは何を意味するのか、と思いながら興味深く拝聴していると、それは、一端離反した経営者同士が、未来を信じて協力共同を行うことでした。

 ここには、原作者の痛烈な新自由主義への批判が込められていました。

 「今だけ、お金だけ、自分だけ」という言葉が、その新自由主義の典型的フレーズですが、その権化である東京中央銀行の悪代官たちと彼らに従属した手先たちに対して、「今だけではない未来に向かって信じあい、金では通用しない信頼を、自分だけでなく互いに感謝して得る」ことで真っ向から対抗していったのです。

    そして、その新自由主義がもろくも崩れ、破綻していく、このリアルな過程がおもしろく、スカッと爽やかになるのです。

 これまで延々として蔓延ってきた社会的思想(イデオロギー)、すなわち新自由主義を撃破し、時代は、次の共存を求めているからこそ、視聴者は、このドラマに感動したのではないでしょうか。

 古来より、日本人は、赤穂浪士や水戸黄門、大岡越前、そして現在の半沢直樹が演じる悪を撃破していくイデオロギーが大好きなのです。

            
イデオロギーと「うがい」問題

 「イデオロギー」とは、「単に思想傾向、政治や社会に対する考え方」を意味しています。

 今回のコロナショックにおいて、そのイデオロギーが科学との関係においてより如実に露わになってきました。

 たとえば、新型コロナウイルス感染対策として真っ先に指摘されたのが「手洗い」でしたが、同時に「うがい」を行うことは励行されませんでした。

 新型コロナウイルスは鼻や口の中に居座っているのですから、それらを洗い流すことは必要なことですが、これにほとんどの専門家や科学者が気づかなかったのではないでしょうか。

 科学者がそうですので、当然のことながら政府関係者が気づくはずがありません。

 科学として探究がなされておれば、これは当然のことながら、それに気づくはずですが、これを単にイデオロギーとして把握したのであれば、気づくはずがないのです。

 まさに、ここに「落とし穴」があったといってもよいでしょう。

 その落とし穴とは、科学的探索の甘さ、あいまいさであり、経験のなさ、弱さといってよいでしょう。

 そのために、コロナさんは、ヒトのなかに余計長く、しつこく居座ることができるようになったのです。

 その「うがい」についておもしろい体験をしました。

 それは、先日歯科医に行ったときに、治療の前に「うがい」をしてくださいといわれたことでした。

 その時、専用のうがい液を見せられ、「30秒間、うがい液を口の中に含んでください」といわれました。

 そのうがい用の原液ボトルを示しておきましょう。

neosute-55
うがい薬のボトル

 「30秒とは、このうがい液で口内の細菌を殺すことができるという時間なのですか?」

 こう尋ねると、「そうです」という返事がありました。

ーーー そうか、30秒という短い時間なのか!

 真に貴重な経験として記憶に刻まれました。

 この「うがい問題」は、別稿において、より詳しく考察することにしますので、この程度の指摘に留めておきましょう。

 さて、次の話題は、「飛沫感染と空気感染」についてです。

 ここにも重要なイデオロギー問題が介在していたのではないかと思います。

 次回は、そこにより深く分け入ることにしましょう。 

 (つづく)

aji-55
枯れても美しい紫陽花