福岡伸一さんの生物における「動的平衡論」に大変な刺激を受けて、独自の「光マイクロバブルの動的平衡論」の考察を試みることにしました。

 これに関する前回までの記事における重要部分を再録しておきましょう。


 
次の2つ光マイクロバブルの特徴を指摘しました。

 (1)光マイクロバブルは発生直後から収縮を開始し、比較的短時間で消滅していきます。これは、気泡という形態を維持しながらも、そのサイズや圧力、温度をなどの物理学的要素が変化し、その都度において化学的な変化も起きる、という動的変化と平衡を維持するという、おもしろい物理化学的現象でした。

 (2)光マイクロバブル水と食物に関する研究を持続的研究してきて、自分でも実際に農作物を栽培し、さらに実際に農家支援を行ってきましたので、食の安全、品質向上の方法について、より詳しく知ることができるようになりました。

 「光マイクロバブルの動的平衡論」の考察

 1)動的挙動についての要約
  
 ① 発生から数十秒間という比較的短時間で収縮し、消失していく。

 
②発生直後から消失までの間、振動を繰り返す。

 
a)光マイクロバブルの直径は、およそ50~数マイクロメートルです。これを基準にして、その膨らみ幅、縮み幅を計ると、それは直径の15~20%前後です。

 b)光マイクロバブルの収縮過程における振動周波数は、7~9ヘルツです。

 このa)に関する詳しい解説は、前回の記事において行いましたので、ここでは、このb)について叙述することから始めましょう。

    光マイクロバブルは、自分で小さくなっていく、すなわち自己収縮を遂げながら、同時に8ヘルツ前後の振動を繰り返していて、この光マイクロバブルの動的特殊性が注目に値する重要な現象なのです。

 自分の身体が小さくなりながらも、その短い瞬間においては、小さく膨らむ、小さく縮むを繰り返しているのです。

 じつに、すばらしいダイナミズムではありませんか。

 私が、光マイクロバブルに惚れ込む理由のひとつが、ここにあります。

 そこで、これを光マイクロバブルの「二重の動的特性」と呼ぶことにしましょう。

 この光マイクロバブルの2つの特性には、次の重要な物理化学的意味があります。

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            光マイクロバブルの収縮と微小振動

 ①光マイクロバブルが自己収縮していくと、それだけ、光マイクロバブルの持つ表面張力が増大していきます。

 この表面張力の増大は、光マイクロバブル内の圧力を高くしていきます。

 ここで、すでに何度も同じ解説を繰り返してきましたが、解りやすくするために、同一材質の2つの風船を例にして、この表面張力と圧力の関係を説明しておきましょう。

 それらの風船の大きさは、それぞれ大小に異なっています。

 ここで、この大きさの異なる風船をストローで連結させます。

 そうするとストロー内で風船内の空気の移動が起こり、それぞれの風船の大きさが変わって、それが釣り合ったところで大きさの変化が止まります。

 それは、それぞれの風船内の圧力が等しくなったからです。

 そうであれば、このストロー内の流動が開始された時点では、風船内の圧力が異なっていたということになります。

 そして、そのストロー内の空気の流動は、風船の小さい方から大きい方にに向かって起こります。

 ここが多くのみなさんの常識と異なっています。

 すなわち、これらの風船のなかの圧力は、小さい方がより高いのです。

 一般的に、圧力の高いところから低いところへと向かって流れていきます。

 つまり、小さい方の風船の内部圧力がより高いのです。

 これを光マイクロバブルに適用すると、光マイクロバブルが徐々に小さくなっていくのですから、それだけ、光マイクロバブル内の圧力も徐々に高まることは、よく理解できますね。

 そこで、次に、この光マイクロバブル内の圧力の高まり方が、非常に重要になります。

 その解説を行うには、まず、光マイクロバブルの発生時の圧力問題を説明する必要があります。

 さて、その収縮を開始した時点における光マイクロバブル内の圧力は、どのくらいなのでしょうか?

 この起点が解らないと、その後もよく解らない、これはある意味で当然のことです。 

 それは、光マイクロバブルを大量発生させる超高速旋回式装置の発生方法に依拠しています。

 そこで、光マイクロバブルを発生させながら、その装置内の圧力を計測しました。

 そしたら、その内部圧力Pzero は、マイナス0.06MPa(メガパスカル)でした。

 これは、6m下の水を汲み上げることができる圧力です。正の圧力は吹き出し、負の圧力は吸い込むと考えたらよいでしょう。

 上記装置のなかは、空洞ができていますので、その空気内の圧力がマイナス6mといった方が解りやすいかもしれませんね。

 この空洞が、細かく引き千切られ、粉砕されて光マイクロバブルが発生しますので、この発生時の光マイクロバブル内の圧力も、マイナス0.06MPaであると考えてよいでしょう。

 この状態で、光マイクロバブルは常圧下の水のなかに噴出されますので、光マイクロバブルは、周囲の水から圧力を受けて押しつぶされそうになります。

 すなわち、光マイクロバブルの内部は負圧、その周囲の液体は正の圧力を有していますので、一斉に水が光マイクロバブルを押しつぶそうとするのです。

 この圧力変化に対応して、光マイクロバブルの動的挙動にも変化が起こります。

 それは、次のような動的変化を示します。

 超高速旋回式発生装置の内部では、水と空気が一緒になって秒速約500回転で旋回します。

 これによって水と空気という二相の遠向心分離が起こり、装置の中央部で空洞が発生し、その圧力が、マイナス
0.06MPaです。

 この空洞部分が引き千切られ、粉砕されて光マイクロバブルが製造されていくのですが、この発生現象を高速度カメラでよく観察しますと、ここでも非連続の間欠的な運動によって光マイクロバブルが生成されているのです。

 その最初の起点は、装置内で秒速500回転で旋回していますので、その旋回によって製造された光マイクロバブルと次の旋回によって製造される光マイクロバブルとの間においてはわずかであっても、そこに時間を要します。

 すなわち、一つのあるいは、一つの光マイクロバブルの集団が発生した後には、次の光マイクロバブルを発生させるまでに、それを発生させない時間が介在していますので、これを時間的間欠性といいます。

 つまり、光マイクロバブルの発生は、厳密的には、超高速の時間的間欠性を有して生起しているのです。

 この間欠性が素因となって、光マイクロバブルには、生まれた瞬間から変動成分を有しているのです。

 そして、実際には、この変動性を有した光マイクロバブルは、周囲の水と共に装置の外へと噴出されます。

 ここで、その間欠性は和らげられますが、そこには水の勢いも加わりますので、より重要な変化を遂げていくことになります。

 次回は、その重要な「変化の世界」に分け入ることにしましょう
(つづく)。

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マンデビラデラ