第3回までの「まとめ」

 ①未知なるものを探究する勇気を持とう(第1回目)。

 ②新型コロナウイルスはしつこく、油断できない。最高の英知を集めないと解決できない(第2回目)。

 ③福岡伸一さんの「生物における動的平衡論」に刺激されて、「光マイクロバブルの動的平衡」問題を考究してみようと思うようになりました(第3回目)。

 この③の観点から、次の2つを指摘しました。

 (1)光マイクロバブルは発生直後から収縮を開始し、比較的短時間で消滅していきます。
 これは、気泡という形態を維持しながらも、そのサイズや圧力、温度をなどの物理学的要素が変化し、その都度において化学的な変化も起きる、という動的変化と平衡を維持するという、おもしろい物理化学的現象でした。

 (2)光マイクロバブル水と食物に関する研究を持続的研究してきて、自分でも実際に農作物を栽培し、さらに実際に農家支援を行ってきましたので、食の安全、品質向上の方法について、より詳しく知ることができるようになりました。

 本日は、この(1)について、その後じっくりと考究しましたので、より深く分け入ることにしましょう。

光マイクロバブルの3物理特性

 光マイクロバブルの代表的な物理化学的特性は、「自己収縮」、「負電位増大」、「発光」の3つです。

 これらは、通常のバブルとは異なっています。

 通常のバブルでは、自己収縮ではなく自己膨張する、負電位を減少させる、発光はしないという現象として知られています。

 また、その3つの特性は、この世に広まっているマイクロバブルやナノバブルの性質とも大きく異なっています。

 その意味で、光マイクロバブルは「特異なマイクロバブル」といってよいのです。

 この光マイクロバブルは、私どもが開発した超高速旋回式装置によってのみ発生可能となります。

 発生直後からの「自己収縮」、この運動は「動的挙動」そのものであり、それは、光マイクロバブルの鮮明可視化によって証明されました。

 問題は、その動的挙動が、「平衡を保っているかどうか」にあります。

 その判断基準は、この場合、1)気泡としての構造性を維持しているか、2)温度や圧力における同一性を保っているか、3)化学変化が起こっていないなどにあると思われます。

 1)については、光マイクロバブルの収縮の様子を精密可視化して追跡していきます。

 発生直後の光マイクロバブルは50㎛前後のサイズですが、これが数十秒という短期間において、数㎛にまで収縮し、最後には消えて見えなくなります。


 この場合、「消えて見えなくなる」とは、800倍の顕微鏡画像において、見えていたものが見えなくなるという意味でしかありません。

 それゆえに、気泡としての構造性を維持できているかどうかは、そのかぎりの拡大可視化画像において判断できることであり、この消失は、気泡としての構造性を失うことであるといってよいでしょう。

 すなわち、顕微鏡上の拡大画像における光マイクロバブルの消失は、それまでの「平衡」現象が失われ、「非平衡」現象へと移行したことを示唆しています。

 2)の温度、圧力場の同一性の問題は、どうでしょうか?

 光マイクロバブルの発生直後は、常温下にあり、光マイクロバブル内の圧力は、およそマイナス0.06MPaです。

 その周囲の圧力は、プラスの常圧ですので、この内外の圧力差によって急激な収縮の最初の挙動が生まれます。

 そして、その反動として、今度は急激な膨張が起こり、この一連の運動から振動が開始されます。

 この収縮と膨張を繰り返す振動現象は、気泡という構造性を保ちながらも、その内部の温度と圧力を短時間で変化させ、より高温高圧の場を形成させていきます。

 この光マイクロバブルの自己運動は、気泡という構造性を維持しながらも、収縮という変化の過程で、その内部温度と圧力を徐々に高めていくのです。

 振動という動的現象が繰り返されることで、当初の動的平衡現象が発達して、動的な非平衡現象へと移行していくのです。

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光マイクロバブルの収縮(再録)

 3)の発光現象については、どうでしょうか?

 光マイクロバブルの振動現象によって、光マイクロバブル内では、温度と圧力が高まり、当初の常温・負圧状態から、まず常温・常圧状態へと変化します。

 ところが、この振動現象は、急激に収縮と膨張を7~10ヘルツの周波数で繰り返しますので、内部気体の溶解が進み、それによっても収縮が促進されます。

 そして「常温・常圧場」から「高温・高圧場」へと短期間に変化していきます。

 この高温・高圧場の形成によって、光マイクロバブル内のエネルギーは集中的に高まります。

 すなわち、エントロピーの減少現象が起こり、その瞬間的な高まりによって発光を繰り返すようになります。

 しかも、重要なことは、この発光が短期間に何度も繰り返され、それが光マイクロバブルの振動現象と同期していることです。

「圧壊」は安易な真似にすぎない

 頭のなかでは、マイクロバブルが収縮して最後に「圧壊」するという非科学的概念が流布されていますが、この考えには、次の問題がありました。

 ①「マイクロバブルが最後において圧壊する」のではない。


 これは私どもの光マイクロバブルの観察において確認済みのことですが、光マイクロバブルの発光は、短期間に何度も繰り返し発生する現象であり、それが最後に起こって圧壊するのではない、ということです。

 頭のなかで想像だけに頼った理論は、実証によって脆くも崩れ去る、これは科学の世界でよく起こる現象です。

 ②「圧壊する」というメカニズムが明察されていない。


 「圧壊」とは、文字通りの意味では「圧力で圧し潰されて壊れる」ことです。

 この提唱者は、その「押しつぶされて壊れる」現象を観察されたのでしょうか?

 観察できていないとすれば、そのメカニズムをきちんと示して理論化されているのでしょうか?

 おそらく、このような安易な概念の導入は、超音波による気泡の「圧壊」現象を、ほとんど吟味することなく、そのまま真似て持ち込んだだけではないかと推察しています。

 超音波の圧力で「気泡が押しつぶされて壊れる」、そして、その現象が「圧壊」と呼ばれています。

 超音波の世界は、数千キロヘルツの振動現象を取り扱うものですが、光マイクロバブルの振動は高々10ヘルツ以下ですので、それと一緒くたにしてしまうことは、いかに正しくないか、あるいは誤謬を生みやすかは、ちょっと考えてみただけで良く解ることです。

 安易すぎる模倣が誤謬や混乱を生み出す、ここにも、その典型的現象を見出すことができます。

光マイクロバブルの動的平衡と非平衡

 やや横道に反れましたが、上記の1)から3)を踏まえ、改めて「光マイクロバブルの動的平衡論」を、より厳密に定義しておくことにしましょう。

 「光マイクロバブルは、気泡としての動的な平衡状態を維持しながらも、その発達によって『非平衡』へと向かう現象を特徴としている」

 すなわち、「光マイクロバブルと光マイクロバブル水は、動的平衡から動的非平衡へ向かう現象であり、それによって生成された物質(水)」ということができるでしょう。 

 次回は、その光マイクロバブル水について、より深く分け入ることにしましょう。

(つづく)。

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