福岡伸一さんの生物における「動的平衡論」は大変参考になりました。

 この理論の提唱者は、ユダヤ人科学者の
ルドルフ・シェーンハイマーいう方でした。

 福岡さんは、これに注目し、その動的平衡論を生物学的に発展させました。

 かれは、それ以前の生物観を「プラモデル」に例えていますが、そこでは、分解や再構成が起こらず、常に静的平衡が保たれています。

 これをわかりやすくいえば、食物を食べ続けることによって常に体内で分解を繰り返し、細胞を再構成し直すことで身体を維持する、また、その維持のために生物は食べ続けなければならない、というのです。

 たしかに、その通りで、この動的平衡論に違和感はありませんでした。

 そこで、この平衡論を光マイクロバブルに適用したら、どうなるのか?

 そもそも、その適用自体が可能なのか?

 このような疑問がムクムクと湧き上がってきました。 

 これまでの観察によって、光マイクロバブルは常に動的挙動を呈していることが明らかになっています。

 発生と同時に、動き始め、振動しながら収縮を開始し、最後は、目視観察においては消えて無くなってしまいます。

 この場合、振動とは、光マイクロバブルが短時間において膨らみと縮みを繰り返す運動のことです。

 また、収縮とは、光マイクロバブルの内部気体が溶解されるか、放出されることによって徐々に小さくなっていく現象のことです。

 ここで「平衡」とは何かの意味を明らかにしておきましょう。

 ブリタニカ世界最大百科事典によれば、次のように記されています。

 「広い意味では熱平衡のこと。単に熱力学的平衡ばかりでなく、外力と内力の釣り合いとか、ポテンシャルエネルギーの極小点、化学反応における平衡などを含む」

 
どうやら、熱や運動が釣り合い、前後で異なった化学反応が起こらないことを表しているようです。

 もっとわかりやすくいえば、「動きながら釣り合っている」現象ということができるでしょう。

 これらを踏まえ、光マイクロバブルの動的平衡論に分け入ることにします。

 前記事において、
次の2つの指摘を行いました。

 (1)光マイクロバブルは発生直後から収縮を開始し、比較的短時間で消滅していきます。これは、気泡という形態を維持しながらも、そのサイズや圧力、温度をなどの物理学的要素が変化し、その都度において化学的な変化も起きる、という動的変化と平衡を維持するという、おもしろい物理化学的現象でした。

 (2)光マイクロバブル水と食物に関する研究を持続的研究してきて、自分でも実際に農作物を栽培し、さらに実際に農家支援を行ってきましたので、食の安全、品質向上の方法について、より詳しく知ることができるようになりました。

 まずは、この(1)を足掛かりにして、「光マイクロバブルの動的平衡論」の考察を進めていくことにします。

 1)動的挙動について
  
 ① 発生から数十秒間という比較的短時間で収縮し、消失していく。

 光マイクロバブルの動画像をつぶさに観察することによって、この収縮過程を認識することができます。

 数十秒とは、この可視化動画像を観察した結果で判明したことですが、具体的には50秒前後の時間です。

 ある研究者は、プレパラートのなかでマイクロバブルの収縮を観察していましたが、これだと動的観察とはいえず、その結果も、私どもが見出した数十秒という短時間よりははるかに長く、その10倍以上にも達していました。

 これだと、その挙動は「動的」とはいえず、むしろ「静的」といってよいでしょう。

 自然に液体中で浮上する光マイクロバブルを可視化できなかったために起こった誤認識といえます。

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                光マイクロバブルの収縮

 ②発生直後から消失までの間、振動を繰り返す。

 
光マイクロバブルは、この膨らんで縮むという小さな振動を繰り返します。

 この場合、「小さな振動」ということには、次の理由があります。

 a)光マイクロバブルの直径は、およそ50~数マイクロメートルです。これを基準にして、その膨らみ幅、縮み幅を計ると、それは直径の15~20%前後です。

 たかが、その膨らみ幅や縮み幅は1割程度ですが、これを実現させるには、大変大きな力が必要になります。

 膨らんだ風船を想像してみてください。これを一挙に、1割膨らませる、あるいは縮ませることができるでしょうか?

 すなわち、この振動を発生させるには、相当に大きな力が必要なわけで、安易に、しかも簡単に、相当な力なしにマイクロバブルを製造しても、そこにはほとんど動的成分が生まれてこないといってよいでしょう。

 マイクロバブルであればみな同じではなく、みな違うのです。

   b)光マイクロバブルの収縮過程における振動周波数は、7~9ヘルツです。

 これについては、次回において詳しく解説しましょう
(つづく)。

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アガパンサス