「マイクロバブルは、シャンプー液と一緒に使用してはいけない」
なぜ、このような方針を示すのでしょうか?
その理由についてはT社のホームページ上にきちんと説明されていません。
このことをよく考えてみると、それはむしろ「やろうとしてもできない」からであり、それを説明することもできないのではないかと思います。
そこで、この問題をもう一度考えてみましょう。
このT社のマイクロバブル発生装置の方式は「加圧溶解式」であり、この方式で発生させられたマイクロバブルは、その減圧過程において膨らむことを特徴としています。
いわば膨張するマイクロバブルであり、逆に収縮する光マイクロバブルと真反対の性質を有しています。
この気泡は、より小さい気泡からより大きい気泡へと膨らむことによって形成・出現するものです。
膨張するマイクロバブルと収縮する光マイクロバブル
これは、いったい、どこまで膨らんでいくのでしょうか?
膨らむ前のより小さい気泡のなかの圧力は、周囲の液体の圧力よりも高くしていることから、それが液体中に開放(噴出)されると、周囲の液体の圧力とつり合おうとしてより膨らんでいきます。
どこまで膨らむのかは、そこで発生させられた液体中の圧力とマイクロバブル内の圧力が同一になるまでといってよいでしょう。
私どもが計測した加圧溶解型装置で発生させたマイクロバブルの直径は、およそ50~60㎛であり、これらが縮小するのではなく、逆に膨張していくことが観察されています。
この膨張するマイクロバブルは、当然のことながら毛穴のなかに入っていくことはできません。
その理由の第1は、このマイクロバブルのサイズが大きすぎて、毛穴のなかに入って行けないことです。
それは、マイクロバブルが毛穴のサイズと比較して大きいからであり、入っていくことができなければ、毛穴のなかの油脂成分をきれいに掃除することはできません。
こう指摘すると、次のような反論が出てきそうです。
「いや、マイクロバブルのなかには小さいものもあって、毛穴のなかに入っていけますよ」
たしかに、そのマイクロバブルのなかには、非常に小さなものもありますので、この指摘の前半の部分は間違っていません。
私どもが、この加圧溶解式のマイクロバブルを実際に計測してみると、その大半は
50~60㎛ですが、そのなかには20~30㎛前後のサイズのマイクロバブルがないわけではありません。
あることはありますが、その数が非常に少ないのです。
その数が少ないと当然のことながら、毛穴のなかに入っていくマイクロバブルは少なくなります。
しかし、ここで指摘したいのは、その小さいマイクロバブルが毛穴のなかに、そもそも入って行けるのかという基本問題があることです。
気泡は、水よりも軽いことから、上へ上へと上昇していきます。
気泡が広い水槽のなかにあると、その上昇の様子を目視で観察することができます。
毛穴は、下に向かって開いていますので、そのなかをマイクロバブルが進んで下がっていくとなりますと、その浮上力に逆らうことになります。
また、毛穴の入り口は狭く、そこが液体で満たされていると、そこには表面張力が形成されていますので、その力に逆らって毛穴のなかにマイクロバブルが浸入していくことは、ほとんど不可能に近いと思います。
そして、この表面張力のバリアを突破していくには、マイクロバブルそのものに強力なアエネルギーが備わっていなければなりません。
このエネルギーの強弱は、マイクロバブルの負電位の大きさによって表すことができます。
すなわち、この負電位が大きいと、マイクロバブルの圧力が大きくなり、そこを突き抜けていく可能性が生まれます。
ところが、この加圧溶解式によって生まれたマイクロバブル(白い泡)は、大きな負電位を有していません。
その具体的な値は、超高速旋回式で発生した光マイクロバブルの半分以下であり、せいぜいマイナス10~20㎷(ミリボルト)しかありません。
これでは、毛穴の奥まで入って行けません。
ですから、加圧溶解式のマイクロバブルが毛穴の奥まで侵入して油脂成分に付着して毛穴の外まで持ち出して毛穴の洗浄を行うというのは、まったく「架空のあり得ない想像現象」といえるのではないでしょうか。
もしそうでないならば、その証拠となる洗浄写真の画像を実際に示していただきたいと思います。
2つめの問題は、加圧溶解式マイクロバブル装置でマイクロバブルを発生させる水中にシャンプー液を入れると、どうなるのでしょうか? についてです。
みなさんは、これを想像してみたことがありますか?
この加圧溶解式とは、液体内に存在している気泡核を加圧によってより小さくし、それを逆に減圧させて気泡核を一挙に膨らませることによってマイクロバブルを発生させることを基本原理としています。
気泡核とは、小さな気泡が付着したゴミのような物質のことで、1㎛程度の大きさだといわれています。
この時、気泡は減圧によって噴出速度が弱められ、ゆっくり外に噴出し、周囲の液体と混合しながら出ていきます。
おそらく、その噴出速度は毎分数10㎝程度でしょうから、周囲の流体と混合して、その際にシャンプー液をも攪拌させて泡立てることが緩やかにしかできません。
それゆえ、より細かい泡を大量に作り出すことはほとんど不可能なのです。
ところが、超高速旋回式光マイクロバブル発生装置においては、装置内において秒速約500回で旋回し、シャンプー液を含む液体で混合攪拌させますので、きめ細かい光マイクロバブルの泡、すなわちマイクロバブルフォームが大量発生するのです。
この過程は、ビール瓶の栓を抜いたときに白い泡が生成されることと同一であり、ビール瓶のなかにシャンプーを入れて栓を抜くこと、これを想像すればよいのです。
この実験は未経験ですが、おそらく、比較的大きな泡が生成されることになるでしょう。
マイクロバブルがより大きなサイズの泡になり、その泡の量も幾分増加するでしょう。
その際、シャンプー液で形成された泡は、当然のことながらマイクロバブルよりは数倍大きくなりますので、これでは毛穴洗浄はますますできなくなります。
それでは、被毛の洗浄の方はどうなるのでしょうか?
シャンプー液を入れない淡水でのマイクロバブルのサイズは、せいぜい50~60㎛が大半ですので、これにシャンプー液を入れると、その泡の径は約3倍以上、すなわち150~180㎛以上になります。
これでは洗浄力に劣りますので、この白い泡のマイクロバブルでは、被毛の洗浄も、思うほどではないということになります。
結局、この白い泡(加圧溶解式のマイクロバブル)では、被毛の洗浄が上手くできない、そして毛穴の洗浄が可能ということは架空の想像に過ぎないのではないかと思われます。
また、それゆえに、実際のトリミングサロンにおいては、あるサロンでは部屋の片隅に放置され、未使用のままになっていました。
そしてトリマーのみなさまに、この加圧溶解式の「マイクロバブル」がよくないという印象を持たれるようになっていました。
マイクロバブル技術の創始者である私にとって、これは好ましいことではなく、マイクロバブルのことを正しく理解し、普及させなければならないと思いました。
それでは、実際にワンチャンの毛穴の清掃がきちんと行われるようになるには、どのような方法を用いればよいのでしょうか?
次回は、この難問の解決法を検討することにしましょう(つづく)。
コメント
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白い泡=加圧溶解式ですので、最後部分の下記事項は訂正要ですね。
「結局、この白い泡(超高速旋回式のマイクロバブル)では、被毛の洗浄が上手くできない、そして毛穴の洗浄が可能ということは架空の想像に過ぎないのではないかと思われます。」ではでは。