コロナウイルスの感染症時代が始まり、「ウルトラ・パラダイムシフト」が猛スピードで進行しています。

 この激変のなかで、モノが売れない、買われない現象が進行しています。


 ながでも、自動車や電気機器の販売量が大きく減少しています。

 ここで、ダウ平均株価が二番底に向かうのではないか、と懸念されています。

 その大きな理由は、新型コロナウイルス感染者が、全米においてより増加し始めたまことやFRBが、これまで資金を貸していた方針を改め、貸し出した資金の回収を始めたことにあります。

 日本の株価は、このダウ株価に依存していますので、いわば、首根っこを押さえられています。

 周知のように、ダウ株価は、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)にほとんど依存していますので、その暴落後の一時回復は、この5社の株価上昇に依存しています。

 すなわち、この5社のみが膨れ上がり、その他の企業の株価は約20%減であり、その格差はますます広がっています。

 日本の株価も、この影響を受け、株の空売りを主とした架空の株価つり上げ状態が継続されています。

 実態を伴わない架空の売買によって巨額の金が動く社会は、ますます跛行性を強めています。

 そのために、製造業の株価は、トヨタをはじめほとんどの企業において株価が回復せず、低迷を深めています。

 新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中の人々の動きを止めてしまいました。

 観光客が激減し、店も閉まりました。

 製造業のみならず、経済成長を支えていたサービス業が直接打撃を受けて経済低迷を加速させました。

 さらに、世界を見渡せば、東アフリカにおいて発生した砂漠飛びバッタの被害が深刻で、それがアラビア半島、イラン、パキスタン、インドにまで拡大しています。

 このバッタは、異常降雨を引き金として発生したようで、これから迎える雨季の到来によって、ますます深刻化していくことが危惧されています。

 一方で、中国では南西部における異常豪雨によって洪水が発生し、大規模な水害の様子が報じられています。

 この氾濫によって農地が深刻な被害を受け、ここでも食糧危機の発生が心配されています。

 併せて、中国北京における新型コロナウイルスの第二波の発生と三峡ダムの破壊の恐れが恐れられています。

 前者においては、約2万人の感染者、約2000人の死者数が出ているというネット情報があります。

 また、後者においては、その深刻性が強まっていて、これに関するネット情報が増えています。

 三峡ダムは、高さ185m、長さ2.3㎞にも及ぶ巨大構造物であり、これが破壊されると、下流に多大な影響を与えることが予想されています。

 この破壊に伴う氾濫被害は、とてつもなく甚大であり、都市や農地の破壊が発生し、さらに深刻な食糧危機が発生するでしょう。

 さて、前置きが長くなりましたが、これらの新型コロナウイルス感染を契機とした世界的規模の災禍の発生とその恐れは、小さくない本質的な課題を鮮やかに浮かび上がらせています。

 それは、「技術で世界を救う」という課題です。

 私の学生時代に、「プロメテウスの火」という言葉があることを知りました。

 最近になってS先生が遺された本のなかに同名の朝長振一郎さんの著書があることを知りました。

 プロメテウスは、「技術の神様」といわれています。

 全能の神ゼウスに逆らって、葦のなかに火を入れて下界の地上の人間たちに投げたことから、その火を葦のなかに巧みに仕込んだこと、「技術の神」といわれるようになりました。

 火を与えられた人間は、肉を焼いて、野菜を煮込む技術を身につけました。

 その地上から煙が上がり、笑い声が聞こえてくるようになりました。

 この地上の変化に驚いたゼウスは、プロメテウスを捕らえて岩に縛り付け、鷲に内臓を啄ませました。

 それでも若きプロメテウスは屈しなかったことから、支援者が現れ、かれの友人ヘラクレスが弓で鷲を打ち落とします。

 こうしてゼウスの全能性が失われ、神の国の独占が崩れていきました。

 このように、技術は本来、平等に多くの人々の生活を豊かにし、ゆかいな笑いをもたらすものなのです。

 それゆえに、技術開発は、人々の生活を豊かにし、笑いを生み出すゆかいなものを創造することだと思います。

 ここに、技術と技術開発の原点があります。

 技術の教育も、この原点を踏まえることが基本であり、現代にふさわしい「若きプロメテウスを育てる」ことが、最も大切な目標といえるのではないでしょうか。

    プロメテウスは、全能の神ゼウスを中心とする神の独占主義を批判し、下界の人間の世界にも火を与え、豊かさと幸福さを授けるべきだと考えました。

 これが、「プロメテウスの火」の心でした。

 教育の基本は、人を育てることであり、この「火の心」を養成することではないでしょうか。

 巨大な権力に逆らっても、この火を与える心、これが技術の心であり、それを育むことが教育の最大の目標といえます。

 そして研究開発、技術開発の心とは、葦のなかに火をどのように入れるか、その入れ方、火の大きさ、持続力、それを下界に投げても火が消えない工夫をどうするのか、そしてそれらの知恵と工夫がなされた暁には、ゼウスに逆らってでも、それを下界に投下する勇気、これらを本懐として深く養うことではないかと思われます。

 ところが、その下界の人のなかには、商人という自分の利益を最優先させる階層が出現し、それらがグローバリゼイションという大波に乗って世界中を蠢くようになりました。

 その極地が新自由主義の世界であり、その典型的なキャッチフレーズが、かの有名な「今だけ、お金だけ、自分だけ」でした。

 この横行が、世界の隅々にまで到達し、進展していましたが、今回のコロナパニンデミックは、それを完膚なまでに断ち切ってしまいました。

 この巨大な切断によって、そこから何が新たに生まれ、巨大な「うねり」として膨らんできているのでしょうか。

 それは、自分の命を生活を自分で守り、それを基礎として社会や政治のことを深く考えるという強大な思考の「うねり」だったのです。

 上記のプロメテウスの火の思想も、この「うねり」のひとつと考えてよいでしょう。

 技術は、儲け一辺倒や格差拡大のための道具ではなく、人間本来の豊かさと微笑みをもたらすことを主にした手段なのです。

 その深い意味が、現在進行中のコロナ・ウルトラ・パラダイムシフトにおいて、より厳密に、より本質的に問われるようになりました。

 言い換えれば、「技術と技術開発とは何か」が、より鋭く、より本質的に大きく問われるようになったてきたのです。

 次回は、この命題についてより深く、より本質的に分け入ることにしましょう(つづく)。

mannge-  万華鏡(紫陽花)