今回の新型コロナウイルス感染のパンデミック(大流行)のなかで「ロハスな生活」が勧められるようになりました。

 「Lifestyles Of Health And Sustainability」の略が「LOHAS(ロハス)」です。

 このロハスを少し勉強してみよう、と思って最初に選んだのが福岡伸一著『ロハスの思考』でした。

 かれは、「生物の動的平衡」というユニークな理論を述べておられましたので、以前から注目していました。

 そこで、上記の本に加えて、以下の2冊も併せて読んでみることにしました。

 ● 新版『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 小学館新書

 ● 『生物と無生物のあいだ』 講談社現代新書

 これから、これらの生物論を含めて、福岡のいう「ロハスの思考」に分け入りながら、「ロハスの生活」について考えてみたいと思います。

 かれは、この思考を解説するために、次の相反概念を持ち出しています。

 ①「エコ」と「エゴ」:y軸

 ②「ファスト」と「スロー」:x軸

 これをもう少しわかりやすくいうと、「スローなもの、素材の粒立ちがわかるもの、手入れをしながら長く使えるもの、あるいは円形の循環へ回帰する潮流だ」と説明されています。

 これで、やや理解が進まれたでしょうか?

 かれは、とても優れた文筆家でもあり、その文章は哲学的です。

 この本の冒頭に、「ロハスの基礎知識」というおもしろい解説がなされています。

 ここで次の2つの基礎概念が示されていました。

 その第1が「酸化と還元」です。

 「すべての物質は還元状態から酸化状態へと移行する。その間にエネルギーが放出される。いったん酸化されたものを還元状態に戻すためにはエネルギーが必要となる」

 その典型的事例として鉄錆(さび)、食物の摂取、石炭・石油の燃焼が示されています。

 たとえば、食物を口の中に入れて食べると、ヒトはエネルギーを得て、替わりに二酸化炭素を放出します。

 ヒトは、この二酸化炭素を再び食物に戻すことはできません。

 その貴重な代替を遂行するのは植物です。

 この世のなかに植物がいなければ、ヒトは生きていけません。

 すなわち、植物では、ヒトを含めた動物が産み出した二酸化炭素を吸収することで光合成という貴重な代謝活動が営まれます。

    さて、著者がいうように、すべてのものは酸化するという化学現象を呈しながら、常に変化を遂げています。

 時の経過とともに進む生物の「老化」も、この現象に則しています。

 これに逆らうには、その酸化を防ぐ、すなわち還元の物質や現象を取り入れるしかありません。

 そして、「いったん酸化されたものを還元状態に戻すためにはエネルギーが必要」とあるように、その特別のエネルギーを見出し、それを生物に適用することが重要になります。

 たとえば、この適用方法において手っ取り早いのは、新鮮な野菜を摂取することです。

 この新鮮野菜は、酸化還元電位が比較的高いからで(マイナス側で)あり、その摂取が健康改善に役立ちます。

 この還元作用は、酸素の取り込みのほかに、水素イオンや電子の取り込みや放出にも関係しています。

 問題は、酸化されたものを還元状態に戻すエネルギーをどのようにして造り出せばよいのか、そして、いかに効率よく、そのエネルギーによって還元作用が生まれるか、という知恵と工夫にあります。

 そのために莫大なエネルギーを消費し、わずかな量の還元作用しかもたらさないのであれば、それは無駄な行為になってしまいます。

 理想的には、わずかなエネルギーで、大きなエネルギーを産み出すことを、しかも簡単に、そして持続的に可能にしていくことです。

 地球上において繰り広げられているほとんどすべての運動においては、エネルギー保存則が当てはまります。

 物質の運動エネルギーが熱エネルギーへと変換され、やがて、そのエネルギーは消滅していきます。

 これは、「エントロピー増大現象」とも言い換えられて表現されます。

 還元状態に戻すエネルギーを生み出すには、エネルギー保存則に従いながらも、局所的には、この「エントロピー」を増大させるのではなく、逆に減少させる知恵とともに、その効率を大幅に向上させる工夫が重要になります。

 すなわち「ロハスな生活」とは、すべてが酸化していく現象の中で、還元状態を効率よく取り戻すエネルギーを見出し、生活において巧みに利用していくことではないでしょうか。

 すでに、その先輩として植物や微生物たちは、その大業を成し遂げていますので、その基本システムを学習しながら、ヒトとしての適用をいかに創造的に果たしていくのか、これがロハス生活の基礎において問われているのだと思います(つづく)。

zagonia
ベゴニア