T社のホームページにおいて、次のような「おかしな」説明がなされていました。
  
 「マイクロバブルは、シャンプー液と一緒に使用できない」

 なぜ、このような方針を示すのでしょうか?

 これは、マイクロバブルのみで使用すると、毛穴の中まで掃除してきれいにしてしまうということを前提して示されたものです。

 すなわち、この方針は、マイクロバブルによって毛穴のなかまで洗浄するので、マイクロバブルを発生させる際には、シャンプーを入れて泡立たせる必要がないということなのです。

 それでは、この会社がいうように、本当にマイクロバブルによって毛穴の中まで洗浄してしまうのでしょうか?

 その毛穴洗浄の証拠が、同時に示されているのであれば、みなさんは納得されるでしょうが、どこを探しても、そのような検証結果は見当たりません。

 ここに、この問題の本質があります。

 ここでワンちゃんの毛穴の大きさが問題になりますが、ワンちゃんの被毛の直径が30㎛前後ですので、そのサイズはせいぜい数十㎛でしょう。

 仮に、被毛のサイス30㎛の2倍、60㎛を毛穴のサイズとしましょうか。

 毛穴のなかには被毛がありますので、その隙間は30㎛程度です。

 これよりも大きい気泡ですと、毛穴の中に入っていけません。

 それでは直径20㎛のマイクロバブルを想定してみましょう。

 このサイズですと毛穴のなかにかつかつ入っていけます。

 しかし、その毛穴のなかの被毛には油脂成分の汚れが付着していますので、これがあるとそこでつかえてしまいます。

 これでは、マイクロバブルで毛穴のなかを掃除することができません。

 そこで、またひとつ大きな問題が出てきます。

 ワンちゃんの身体は、通常は空気に晒されていますので、被毛は乾燥状態にあります。
 
 したがって、毛穴のなかも乾燥している場合が多く、その場合には、そのなかに液体が存在していないのではないでしょうか。

 そこで、ワンちゃんの身体をきれいにするために、マイクロバブルを含お湯のなかにワンチャンを入れるとしましょう。

 ワンちゃんの被毛はたちまち濡れて、乾燥状態から浸潤状態へと変化します。

 その際、毛穴はどうなるのでしょうか。

 そのなかにお湯が、ずんずんと自然に入っていくのでしょうか。

 そんなことはあり得ないことです。

 毛穴のなかに空気が詰まっているとしましょう。その外部はお湯ですから、それが毛穴に入ろうとするとどうなるでしょうか?

 この穴の隙間のサイズは約30㎛です。この小さい隙間に、お湯を入れようとすると、強力な邪魔者が出てきます。

 それは、表面張力という邪魔者です。

 これがなぜ入りにくいのか?

 それをわかりやすく解説します。内径30㎛(100分の3㎜)注射針で注射をするとしましょう。

 挿入したいのは注射器のなかのお湯です。

 この場合非常に細い針ですので、そのなかを通ってお湯を流出させるのですから、相当に強い力で注射器の押す部分を押さないとお湯は針の先から出てくれません。

 それは、液体の表面張力が邪魔しているからであり、これに押し勝つ力は、トリマーにあるはずもありません。

 毛穴のなかに液体が入っていなければ、そこにマイクロバブルが入っていけません。
 
 マイクロバブルが毛穴のなかまで洗浄すると主張される方々は、この表面張力問題をどのように考えておられるのでしょうか?

 第2は、T社の装置から発生するマイクロバブルがどのような特徴を有しているのか、という問題です。

 このT社が示されている動画がありましたので、この画像から判断すると、このマイクロバブルの発生方式は、「加圧溶解式」と呼ばれる方式です。

 この方法の特徴は、空気を含む液体に圧力を加えたのちに、すなわち加圧した後に、その圧力を急激に低下させて、すなわちその減圧過程においてマイクロバブルを発生させることにあります。

 この泡は、白い色をしていますので「白濁泡」、「白い泡」と呼ばれています。

 次回は、この「白い泡」の性質についてより詳しい解説を行うことによって、T社がなぜ、シャンプーと一緒に使用してはいけないという根拠を問い直すことにしましょう。

 じつは、それは「使用してはいけない」のではなく、おそらく「使用しようと思っても使用できない」からであり、そのことについての深掘りもすることにしましょう(つづく)。
 
2020-02-02 (2)
    マイクロバブルフォーム洗浄法