前記事において、ワンちゃんにおける洗浄と温浴の課題を次のように示しました。
①被毛と同時に皮膚もきれいに洗浄しなければならない。
すでに述べてきたように、ワンちゃんの被毛は、ヒトよりも3倍多く、3倍細いのです。
この特徴からも明らかなように、ワンちゃんが汚れる場合、そのほとんどは被毛の汚れといってよいでしょう。
もちろん、皮膚から出る脂質の汚れもありますので、それも考慮して洗浄することが必要であることはいうまでもありません。
おそらく、皮膚の汚れよりも被毛の汚れの方の比率が相当に高いと思われますので、被毛の汚れの洗浄を主としながらも、副として皮膚もしっかり洗い落とすことが求められているのだと思います。
しかし、この両者においては、それぞれ固有の洗浄事情がありますので、これを同一にするわけにはいきません。
汚れが圧倒的に多い被毛の洗浄においては、洗浄力を可能なかぎりアップさせて短時間に洗浄を遂行したい、これがトリマーの希望です。
この洗浄力をアップさせることにおいて最も手っ取り早い方法は、シャンプーの使用量を増やして泡の量を増やすことです。
それが好ましくないと思うのであれば、シャンプーの使用量をほどほどにして手もみで泡の量を巧みに増やしていくしかありません。
しかし、その場合には手荒れが起こることを覚悟しなければなりません。
手にやさしい、あるいは皮膚にやさしいといわれているシャンプーを用いたにしても、それで思うような洗浄力をアップすることはかなり難しいといってよいでしょう。
被毛は、ご承知のように、雨風を受けてもガードできるように強い組成を有していますが、それに覆われているワンちゃんの皮膚は、薄くて弱く、シャンプーを使いすぎたり、強く皮膚に洗剤をこすり付けると傷みやすい、そのようにデリケートな皮膚を有しているのがワンチャンなのです。
この相反現象を前にして、私たちが、その解決をめざしたのが、マイクロバブルフォーム洗浄・温浴法なのです(温浴については後述する)。
その開発原理は、次の2つにありました。
1)シャンプーの使用量を極力減らす。
これまでのシャンプー使用量は(マイクロバブルフォーム洗浄温浴法を採用する前)、お湯20ℓに対し、シャンプー液の注入量は100㎖(0.1ℓ)でした(有名トリマーの松林智宣さんの場合)。
その希釈濃度は、0.5%でした。
この状態から、シャンプー量をどこまで減らせるかを試していただき、マイクロバブルフォーム洗浄・温浴法では、その使用量を10㎖にまで減らしてよいことが明らかになりました(ただし、最近は、より工夫する洗浄法においてもっと減らせる可能性が出ています)。
この希釈濃度は、0.05%であり、ほんのわずかなシャンプー注入量でよいことになりました。
これこそ革命的な出来事であり、大幅なシャンプー使用量の節約も可能になりました。
しかし、ここで問題になったのは、シャンプーの使用量を、たとえ1/10に減らせたとしても、それによって洗浄力のアップが大幅になされないとほとんど意味がなくなります。
その洗浄力の向上が、どこまで、マイクロバブルフォーム洗浄・温浴法によって可能になったのか、しかも、それによって被毛の洗浄が、どこまで達成され、そして皮膚を傷めずに、その洗浄が可能になったのか、これらが重要な問題になります。
少ないシャンプー液量であっても、大量の泡を簡単に発生させ、同時に洗浄力を向上させ、被毛と皮膚の両方をケアしながら洗浄する、この一石三鳥の離れ業を簡単に遂行できるのかどうか、これが問われることになりました。
次回は、この離れ業について詳しく分け入ることにしましょう(つづく)。
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