「わが亡きあとに洪水は来たれ!」は、著名な政治経済学者、哲学者の言葉ですが、最近は、この言葉を思い浮かべることが多くなりました。

 21世紀も本格的に開始され、世の中は便利になり、ますます豊かで幸福になるはずでした。

 実際は、それとは逆に格差が広がり、かつての中流階級といわれた階層はごっそり無くなりました。

 逆に大量に増えたのは年収200万円以下の階層です。

 この出現は、その洪水が私たちの近くまで押し寄せていることを示唆しています。

 もうひとつは、文字通りの洪水が昨年多発したことです。

 台風19号だけでも河川の決壊箇所は142、決壊河川数は72にも上りました。

 これまでの実績を踏まえると、1河川の決壊による被害は数十億円~数百億円です。

 仮に、これを平均100億円としますと142×100億円=1兆4200億円になります。

 本来ですと、この被害額だけ政府は支援をして国土の復興を図るべきですが、そのような姿勢は見当たりません。

 どうやら、災害復興には熱心ではなく、災害を受けた方々を見舞い、寄り添うのではなくゴルフに興じる方が好きなようで、これを本末転倒といいます。

 また、このような河川決壊による大被害を招いてしまったことは、これまでの河川防災の施策の大敗北を意味しています。

 かつて、河川をコンクリートの堤防で固め、一滴も外には漏らさないと豪語していた主張は、どこにいってしまったのでしょうか。

 一滴も外に漏らさない川づくりとは、川の周辺が安全であるという意味を含んでいました。

 今回の洪水被害に伴って、メディアによく出てきた用語に「ハザードマップ」があります。

 私は、いくつもの河川において、その作成にかかわったことがありますので、その考え方を一般の市民のみなさんよりは理解しているつもりです。

 このマップ作りにおける要点は、次の通りです。

 ①考えられる最大の洪水量を予測し、その被害を受ける地域を推定する。

 ②その想定被害を考慮して、いかに安全に非難を行なうかを明らかにする。

 ③わかりやすい洪水被害マップを作製し、その周知を図る。

 今回被害を受けた地域における「ハザードマップ」はほとんど作成されていたそうです。

 そして、今回の河川災害は、そのハザードマップの通り、あるいはそれ以上の激甚な災害が発生しました。

 それは、なぜでしょうか?

 ハザードマップ作成においては、大雨が降る。降った雨が河川に溢れ、堤防から河川水が越流することを想定しますが、どこで堤防が決壊するかについては予測できていません。

 河川からの氾濫があり、その氾濫地域は予測するものの、氾濫した堤防の決壊については検討せず、単に堤防の上を河川水が超えていくことだけを考えて氾濫域や水位を予測することに留まっているのです。

 この場合、堤防から河川水が越流して氾濫するのみの現象と、その越流によって堤防が壊れやすくなり、今回の堤防決壊によって河川水のほとんどが流出して氾濫域を深め、広げる現象とでは大きく異なります。

 今回の多くの河川における決壊は、ハザードマップ作成時点において、河川堤防からの越流によって堤防決壊が促進されることについても積極的な検討が必要になるでしょう。

 しかし、これに関しては、国や県などの河川管理者における高度な住民サイドの配慮が必要になりますので、その民主主義が深く問われることになるでしょう。

 なお、大規模な河川群における堤防決壊の原因等については、次回においてより詳細に考察することにしましょう(つづく)。

akaihana
紅い花