本日、第27回ナノプラネットゼミが開催されました。

 最初の報告は、稲駿介さんから、今年一番よく売れた本である「ファクトフルネス」の紹介がありました。

 本書は、「事実に基づく世界の見方を教え、とんでもない勘違いを観察し、学んだことをまとめた一冊だ」そうで、その内容が解説されました。
 
 著者のハンス・ロスリング氏によれば、数多くの医学生、科学者、企業の役員、政治家のほとんどが、かれの貧困、人口、教育、エネルギーなどの関する質問に対して誤った回答を行い、勘違いをしていたそうです。

 かれによれば、人は、次の10の思い込みがあるそうで、それらに関する具体的な解説がなされました。

 分断本能―「世界は分断されている」という思い込み
 ネガティブ本能―「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
 直線本能―「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
 恐怖本能―危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
 過大視本能―「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
 パターン化本能―「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
 宿命本能―「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
 単純化本能―「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
 犯人捜し本能―「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
 焦り本能―「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

 著者は、これらの思い込みが間違いであることを科学的なデータに基づいてわかりやすく論証しています。

 日本人は、その思い込みの傾向が顕著な民族の一つといえますので、このような著作がよく売れた理由もよく解ります。

 この思い込みから解放されることは、世の中や社会の動きを正しく見ることができるようになることです。

 あのビル・ゲイツさんは、この本を大絶賛し、2018年のアメリカの大学の卒業生のうち、希望者全員に、この本をプレゼントしたそうです。

 とても良い本を紹介していただきましたので、私も早速アマゾンに注文して読んでみようと思います。

 次に、私が金子勝著の「平成経済衰退の本質」の読後感想を報告しました。

 日本経済に関して貴重な考察と提言を積極的になさっていますので、その考えをきちんと勉強してみようと思っていましたが、本書は、その期待に沿うものでした。

 まず、私が感心したのは、かれの「巧みな文章力」でした。

 さすが、読者をしっかり惹きつけ、説得し続ける論理力においては、いくつもの学ぶ点がありました。

 第2は、平成の30年を科学的に分析し、その衰退の本質をみごとに証明していたことでした。

 このなかで、日本経済を牽引してきた自動車の現状と今後がきちんと考察されていました。

 欧米においては、すでにEV車への転換が決定され、その準備が進められているのに対し、わが国では、燃料電池車とEV車の二本立てで中途半端な状態になっている問題が鋭く指摘されていました。

 また、新エネルギーの開発が最も重要な技術として認識され、それが、原発への固執によって大幅に遅れている問題についての警告が強調されていました。

 さらに本書の最後には、この衰退を防止し、そこからの脱却のために、地域分散ネットワーク型システムへの転換が示されていました。

 とくに、地域に不可欠な情報通信技術を開発し、毛細血管のような地域のニーズを見出し、その効率的解決を図る、きめ細かい社会保障、医療介護、保育、教育を施し、農林業においては儲かる6次産業化などの重要性が強調されていました。

 これらの問題と課題を踏まえ、実際に何ができるかにおいてより深い議論がなされました。

 これについては、現在、実際に取り組んでいる農業イノベーションのプロジェクトにおいて存在している課題の解決法についても検討を行ないました。

 久しぶりのナノプラネットゼミでしたが、大変有意義な学習と議論を行うことができました(つづく)。

kogiku
小菊