シーサイドホテルの海に接した庭での歓談は、いつまでもここちよく、いつのまにか3人とも饒舌になっていました。
温かい陽ざしの太陽は、西に傾きはじめキラキラと海を輝かせていました。
「植物工場のほかにも、沖縄特有のおもしろい話が展開しそうですね」
「そうですね。規模は小さいのですが、沖縄には昔から独立国的な雰囲気がありますので、話の持って生き方が本土とはかなり異なっています。
山口や大分に住んでいる時に感じる中央集権的なものがなく、そこに自由さや自主性を覚えることが多いのです」
「なんとなく、その感覚が解ります」
「半分外国のような感じ、いいですね。私は、3年後にマレーシアに移住したいと思っていますので、沖縄の肌感覚は、マレーシアに近いですね」
「若い頃に沖縄にしばらく棲んだことがありましたが、その時に気づいたことは、まず、身体を冷やして風邪を引くことがないこと、雨が降ってもすぐに止みますので傘がいらないことの2つでした。
それから、後になって深く認識するようになったことは食べ物がおいしいことでした。
今日は、きっとおいしい沖縄料理の夕食がいただけますよ」
「私も太鼓判で押します。そろそろ待ち合わせの時間になりそうです」
それでも、シーサイド談義の話題は尽きなく、沖縄を含めたビジネス展開の在り様について深い議論を交わすことができ、真に有益で印象に残る一時を過ごすことができました。
次の待ち合わせ場所は、恩納村の中心街にある『瑞慶山』という店名の鮨屋さんでした。
植物工場のオーナーが毎夕の食事処とされているところです。
ここの沖縄料理は、まさに感激するほどの絶品料理が出されます。
「先生、まずは地元のビールをいかがですか?」
「いや、ビールは飲みませんので、あなたが取って置きの泡盛を少しお願いします」
この泡盛は、亀のなかで13年間熟成されてきた「レアもの」ですので、格別に「旨い泡盛」ですので、「最初の一杯はビールで」は、私には通用しません。
「さすがですね。先生は『旨い泡盛』のことがよくわかっておられますね」
かれはこういいながら、ビールをおいしそうに飲んでおられました。
私も、特製の13年ものの泡盛をロックで一口いただきながら、その旨さに感激しました。
その後すぐに出てきたのが、沖縄モズクでした。
このモズクについては、以前から関心があり、調査や簡単な実験を行ってきたこともあって、その味にかなり詳しくなっていました。
まず、小鉢に入れられたモズクを見て、おやっと思いました。
ーーー かなり細い。いつも沖縄で食べてきたモズクよりも細くて短い。きっと若いモズクを採取したのであろう。
その味も、ずいぶん違っていて、それに驚き、感激しました。
ーーー こんなにおいしかったのか!味付けも抜群によい。
隣のSさんも唸っていました。
かれは、沖縄モズクを初めて食べることになったそうですが、その味に私以上に感激されていました。
新鮮でやや細いモズクを噛むここちよさ、上品な酢漬けの味、モズク特有の食感などが格別で、私の沖縄モズク観も塗り替えられました。
ーーー これが沖縄モズクの本当の味なのか!
いきなり、感激のレアものが出てきたことで、Sさんはややパニック状態になっていました。
そして、次に出てきたのが「ラフティー」、これで早くもダメ押しになりました。
これは、豚肉のロース部分を柔らかく煮つけた昔の琉球王朝に出された料理であり、やや甘辛く、そして蕩けるように柔らかさが特徴的です。
瑞慶山のラフティーには、それらに上品な味付けが加わっていますので、ラフティーをほとんど食べない私も箸をつけるほどのおいしさがありました。
この鮨屋「瑞慶山」の味は、なかなか他では得られない上品なものばかりで、ゴーヤチャンプルー、モズクの天ぷら、うりずん豆の天ぷらなどを真においしくいただくことができました。
また、その楽しい食事の際に、新たな野菜栽培法についても大いに語り合い、そのオーナーのHさんは、とても喜ばれていました。
おかげで13年モノの泡盛と上質の沖縄料理をいただき、Sさんともどもゆかいな一時を過ごすことができました(つづく)。
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