私の記憶をたどると、光マイクロバブル水の洗浄力に関するいくつかの体験を思い出すことができます。
その最初は、ある企業が研究室に来られ、かれらの前で光マイクロバブルを見せた時に、
「油性のマジックペンで描いたものを落とすことができますか?」
と尋ねられたことがありました。
興味ある質問でしたので、かれらの目の前で実験を行いました。
その時は、なぜか、ペットボトルに油性のマジックペンで描いた線が鮮やかに消えてしまいました。
「これは、すごい!」
と、その企業訪問者は感心して帰っていきました。
その後、この実験のことが気になっていて、今度は、一人で同じ実験を行いました。
ところが、どうでしょう。
今度は、その油性のマジックペンで描いた線が、まったく消えませんでした。
ーーー なぜであろうか?あの線が消えた実験は幻であったのか?
このような疑問が湧いてきたものの、この時は、それにあまり固執せずに、それ以上に突っ込んで究明することには至りませんでした。
しばらくして、二回目として、ある地元の企業と共同研究を行うようになりました。
この企業は、リフォームや家屋、飛行機や煙突などの洗浄を行っていましたので、その共同研究のテーマとして「光マイクロバブル水の洗浄効果」が設定されました。
この研究の開始にあたって、タイルを主とする被洗浄建材のサンプルがたくさん届きました。
それは、経年変化によって汚れたタイルのサンプルであり、なかには、相当にしつこく付着して硬化していた汚れもありました。
第一段階の研究は、光マイクロバブル水を塗布することで、その汚れが落ちるかを試すことでした。
そのなかで、上記のペットボトルに描いたマジックペンの実験を行ったことを思い出し、それも組み入れることにしました。
まずは、ペットボトルにタイルに油性マジックペンで線を描き、それを光マイクロバブル水で消すことを試みました。
結果は、当然のことながら、その線の一部でさえ消えることはありませんでした。
これは、そのタイルも同じで、その線が消えることはありませんでした。
なぜか?
その理由を次のように考えてみました。
① 光マイクロバブル水の作り方がまずいのか?もっと落ちやすい光マイクロバブル水を造る方法はあるのか?
②タイルの上に描いたマジックペンの線が、どのような状態になっているのかをマイクロスコープで観察することで、それがなぜ落ちないのかの原因を探究することによって、何かのヒントが得られるのではないか。
①については、その作り方をいろいろと変えてみましたが、これによって油性マジックの線が消える、あるいは消えやすくなることはありませんでした。
②については、その消えない理由がよく解りました。
この試験に用いたタイルの表面には細かい凹凸があり、油性マジックが一度、そのくぼんだ部分に浸透すると、そこから溶け出し、流れ出ることはありませんでした。
なぜなら、タイルの表面はマイナスに帯電していますので、その電位は、小さいくぼみほど大きく、プラス帯電の油性マジック液をより吸着しやすくするからです。
同じように、ヒトの皮膚細胞もマイナスに帯電していますので、それと反対のプラス帯電している油成分を吸着しやすいのです。
そのために、タイル表面におけるくぼんだ部分に入り込んだ油性マジック液は、互いにプラスマイナスで吸着し合っていますので、それが外に持ち出される、あるいは溶け出してしまうようなことは起こりません。
いくら、そのタイルの表面を強くこすってマジック液を取り出し、消そうとしても、その液はくぼみに入ったままですので、その摩擦によってほとんど影響を受けることはないのです。
そのことは、接写拡大されたマイクロスコープ画像によって明瞭でした。
ーーー これでは消えない。
何度試しても、結果は同じでした。
ーーー それでは、あの時ペットボトルに描いた線は、なぜ消えたのか?
あれは夢か幻か?
ーーー そうではない。あの時、お二人の訪問者が消えたことを確認していたではないか。
しかし、その後のペットボトル実験においては、まったく消えなかった、これも事実でした。
「なぜ、このような相反が起きたのか?」
このような疑問を抱きながら、あの時と同じペットボトル実験を念のために行ってみました。
結果は同じで、油性ペンで描かれた線は、そのままでした。
「それでは、最初のあの時だけ、なぜ、線を消せたのか?この違いには『重要な何か』が潜んでいるはずだ!」
この謎は、私の前に大きく立ちはだかった壁でした。
こんな時は、その究明を取りやめ、気分転換を図ることにしています。
「そのうち、何とかなる。必ずヒントが自然に浮かんでくる!」
こう楽観していると、やはりしばらくして、その糸口が見え始めました。
次回は、その糸口のなかに分け入ることにしましょう(つづく)。
チェリーセージの白
その最初は、ある企業が研究室に来られ、かれらの前で光マイクロバブルを見せた時に、
「油性のマジックペンで描いたものを落とすことができますか?」
と尋ねられたことがありました。
興味ある質問でしたので、かれらの目の前で実験を行いました。
その時は、なぜか、ペットボトルに油性のマジックペンで描いた線が鮮やかに消えてしまいました。
「これは、すごい!」
と、その企業訪問者は感心して帰っていきました。
その後、この実験のことが気になっていて、今度は、一人で同じ実験を行いました。
ところが、どうでしょう。
今度は、その油性のマジックペンで描いた線が、まったく消えませんでした。
ーーー なぜであろうか?あの線が消えた実験は幻であったのか?
このような疑問が湧いてきたものの、この時は、それにあまり固執せずに、それ以上に突っ込んで究明することには至りませんでした。
しばらくして、二回目として、ある地元の企業と共同研究を行うようになりました。
この企業は、リフォームや家屋、飛行機や煙突などの洗浄を行っていましたので、その共同研究のテーマとして「光マイクロバブル水の洗浄効果」が設定されました。
この研究の開始にあたって、タイルを主とする被洗浄建材のサンプルがたくさん届きました。
それは、経年変化によって汚れたタイルのサンプルであり、なかには、相当にしつこく付着して硬化していた汚れもありました。
第一段階の研究は、光マイクロバブル水を塗布することで、その汚れが落ちるかを試すことでした。
そのなかで、上記のペットボトルに描いたマジックペンの実験を行ったことを思い出し、それも組み入れることにしました。
まずは、ペットボトルにタイルに油性マジックペンで線を描き、それを光マイクロバブル水で消すことを試みました。
結果は、当然のことながら、その線の一部でさえ消えることはありませんでした。
これは、そのタイルも同じで、その線が消えることはありませんでした。
なぜか?
その理由を次のように考えてみました。
① 光マイクロバブル水の作り方がまずいのか?もっと落ちやすい光マイクロバブル水を造る方法はあるのか?
②タイルの上に描いたマジックペンの線が、どのような状態になっているのかをマイクロスコープで観察することで、それがなぜ落ちないのかの原因を探究することによって、何かのヒントが得られるのではないか。
①については、その作り方をいろいろと変えてみましたが、これによって油性マジックの線が消える、あるいは消えやすくなることはありませんでした。
②については、その消えない理由がよく解りました。
この試験に用いたタイルの表面には細かい凹凸があり、油性マジックが一度、そのくぼんだ部分に浸透すると、そこから溶け出し、流れ出ることはありませんでした。
なぜなら、タイルの表面はマイナスに帯電していますので、その電位は、小さいくぼみほど大きく、プラス帯電の油性マジック液をより吸着しやすくするからです。
同じように、ヒトの皮膚細胞もマイナスに帯電していますので、それと反対のプラス帯電している油成分を吸着しやすいのです。
そのために、タイル表面におけるくぼんだ部分に入り込んだ油性マジック液は、互いにプラスマイナスで吸着し合っていますので、それが外に持ち出される、あるいは溶け出してしまうようなことは起こりません。
いくら、そのタイルの表面を強くこすってマジック液を取り出し、消そうとしても、その液はくぼみに入ったままですので、その摩擦によってほとんど影響を受けることはないのです。
そのことは、接写拡大されたマイクロスコープ画像によって明瞭でした。
ーーー これでは消えない。
何度試しても、結果は同じでした。
ーーー それでは、あの時ペットボトルに描いた線は、なぜ消えたのか?
あれは夢か幻か?
ーーー そうではない。あの時、お二人の訪問者が消えたことを確認していたではないか。
しかし、その後のペットボトル実験においては、まったく消えなかった、これも事実でした。
「なぜ、このような相反が起きたのか?」
このような疑問を抱きながら、あの時と同じペットボトル実験を念のために行ってみました。
結果は同じで、油性ペンで描かれた線は、そのままでした。
「それでは、最初のあの時だけ、なぜ、線を消せたのか?この違いには『重要な何か』が潜んでいるはずだ!」
この謎は、私の前に大きく立ちはだかった壁でした。
こんな時は、その究明を取りやめ、気分転換を図ることにしています。
「そのうち、何とかなる。必ずヒントが自然に浮かんでくる!」
こう楽観していると、やはりしばらくして、その糸口が見え始めました。
次回は、その糸口のなかに分け入ることにしましょう(つづく)。
チェリーセージの白
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