K窯の作品の陳列室は2つありました。

 手前が、現在販売して販売している商品群で、奥の方が、個別の芸術作品のようでした。

 まずは、奥の方から、有田焼については、現地で見るのも初めてでしたので、正直なところ、どのように評価したらよいのかが解らないまま、ただ眺めて、それぞれを比較することしかできませんでした。

 そうこうしているうちに、社長のTさんが来られました。

 事前にK窯のホームページを拝見し、この方が次のようなユニークな発想で仕事をなさっていましたので、この面会をとても楽しみにしていました。

 ①職人気質、顧客目線、革新・創造性の統一を指向されている。

 ②人々を幸せにするモノづくり、誇りあるモノづくり、社会とつながるモノづくり

 これらの概念は、私どもが考えてきたこととかなりの部分で一致しており、これをどう調和的に結合させていくのか、ここに重要な本質問題がありました。

 それには、何よりも先に有田焼の知識を深め、それが今に時点でどのような方向に動こうとされているのかを知る必要がありました。

 その典型的事例として紹介されたのが、ネスレ日本の依頼を受けて製作したコーヒーカップ&ソーサでした。

 皿の色は、あの青色、文様は鍋島藩で用いられたもの、私が気に入ったのは、コーヒーカップの下部に櫛型文様を入れたことであり、これによって櫛型文様と皿の一体化が起こり、カップの重みがぐっと増して見えるようになっていたことでした。

 聞くところによれば、このセットは、わずか2か月で5万客の生産を成し遂げる大事業だったそうで、それは、このK窯としての実力が国際的に試されたことを意味していました。

 2つ目は、カワセミをモチーフにした「醤油差し」のエピソードです。

 これは、T社長のお父さんである4代目が考えられたそうですが、これには、大中小がありました。

 私が、驚いたのは、カワセミを醤油差しに用いた発想とともに、その顔の表情を大中小でそれぞれみな変えて作っておられたことでした。

ーーー なるほど、これは相当に拘って、そしてかなりカワセミに思いを込めて製作したのだな!

 表情が同じであれば、どれか一つを買えばよい、となります。

 逆に、それぞれが違うとなると、それらを買って食卓に並べて比較するというおもしろさが出てきます。

 まさに、顧客目線の作品といえます。

 3つ目は、「ベルサイユ珈琲椀」です。

 大変きらびやかで、すぐにベルサイユ宮殿を想起させる作品です。

 最初に、これをホームページ上で拝見したときに、「これは、きらびやかすぎて、どうかな?」とためらいを感じました。

 しかし、これはネット上の画像に関する判断であり、実際に、それを目で見て、手に取ってみると、まるで違う反応を感じました。

 たしかに、文様は派手ですが、それがしっくり目に入り、これを「ここちよさ」と感じることができるかどうか、さらには、この椀を用いてコーヒーや紅茶を飲みたいという気持ちが湧いてくるかどうかの問題でした。

 この評価と判断は、短時間において生まれてくるものではなく、それこそ、何度も観て、幾度となく手に取り、その相性を確かめるうちに明確になっていくものです。

 それゆえ、この時は、それをひたすらしげしげと眺めるだけでした。

 ところで、このベルサイユカップの製作動機についても尋ねてみました。

 これは、先代のお父さんが、ベルサイユ宮殿を訪問されたときの印象を基にして製作されたそうで、そこに同じようなカップがあったからではありませんでした。

 当時は、日本の「ARITA」が、大変な影響を与えていた時代ですので、このように精巧なコーヒーカップを造る技術はなかったはずです。

 T社長との有田焼談義は、さらに佳境に入っていき、私の興味はますます増して、ゆかいになっていました。

 それについては、次回において、より詳しく紹介することにしましょう。

arita0910
トレジャーハンティングで見つけた湯呑茶碗(中身は紅茶)