「しっとり」は、何らかの方法で被毛のなかに水分が浸入した結果として被毛の水分含有量が増加した現象を表しています。

 その水分量が増加するメカニズムとは、どのようなものなのでしょうか?

 ここに重要な問題が隠されているように思われますので、より深く分け入ることにしましょう。

 最初のきっかけは、人の髪の毛に関する光マイクロバブル水の浸潤試験でした。

 髪の毛を、予め製造していた光マイクロバブル水に十分な時間において浸潤させ、その後に高倍率の電子顕微鏡を用いて写真撮影がなされました。

 それを拝見し、吃驚しました。

 そこには、何と、キューティクルが大きく開いている様子が写し出されていました。

ーーー これは、今まで見てきたキューティクルの開きとかなり違う!なぜ、こんなに大きく開いているのであろうか?

   この時の印象は非常に強く、その後も、その「ふしぎさ」が、私の脳裏に鮮やかに残ったままでした。

 研究というものは、その時に感じたこと、印象深く思ったことを大切に記憶のなかに刻み込んでおくことが重要であり、その扉が、いつか自然に、また、ある時には、突然に目の前で開かれることもあります。

 周知のように、トリマーや美容師さんたちは、この「キューティクルが開く」ことを極端に嫌がります。

 以前に、日本を代表されるトップトリマーの方3人が来れられた際に、このキューティクルの開きに関する話を少し披露したら、かれらは、それに近い反応を示されました。

 その時の私の説明が十分でなかったせいもあり、かれらは、光マイクロバブル水への浸潤によって、いわば自然にキューティクルが開いた現象を、人為的にキューティクルが「剥がされた」と解釈されたようでした。

 無理もありません。

 かれらは、水に浸けるだけで、キューティクルが自然に大きく開く話を聞いたことはなかったのです。

 それでは、そのキューティクルの「自然の開き」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

 そのことを検討するために、まずは、髪の毛の構造を調べてみましょう。

 おそらく、ワンちゃんの被毛も人毛と同じで、それは、表面に「キューティクル」、中央部に「コルテックス」、核心部に「メデュラ」と呼ばれる三層の構造を有しています。

 キューティクルは、無色透明なウロコ状で、あたかも竹の子の皮のように重なり合っています。

 その皮の隙間から水分が浸入し、より中央部のコルテックスにまで浸透していくようになっています。

 その折、水分は、「CMC(細胞複合体)」と呼ばれる一種の経路を通じて浸透していきます。

 そのキューティクルは、組成全体の約15%を占め、外部からの衝撃や化学反応が起こることを防止し、同時に水分の出入りの調節も行っています。

 この調節機能によって、毛髪のツヤや手触り硬さなどが決まることから、キューティクルは、髪の毛の保護や維持に重要な役割を果たしています。

 また、コルテックスは毛髪全体の85~90%を占めていて、その組成における中心的な構造と役割を果たしています。

 ここでは、水分を保持することによって、髪の強度や弾力性、髪色(コルテックス内にあるメラニン色素による)などに決定的な影響を与えているようです。

 これらの構造的特徴から、髪の毛やワンちゃんの被毛の性質は、それらのキューティクルやコルテックスにおける水分含有量に強く依存していることが明らかです。

 換言すれば、被毛の性質は、その水分量によって変化することから、その水分浸透量の制御が非常に重要であるということができるでしょう。

 以上を踏まえ、髪の毛において、そのキューティクルが大きく開いていたことを、どのように考えたらよいのでしょうか。

 これには、次の2つの意味を考えることが重要です。

 ①キューティクルが大きく開くことによって何が起きていたのか?

 ②なぜ、キューティクルが自然に大きく開いていたのか?

 これらを解明することが、被毛の「しっとり」現象を解明する鍵となるのではないでしょうか。

 次回は、その2つの謎解きに深く分け入ることにしましょうつづく)。

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 マイクロバブルフォーム洗浄・温浴できれいに仕上げられたワンちゃん