マイクロバブルフォーム洗浄・温浴法において、トリマーが最も評価され、喜ばれたのが、その「仕上がりのよさ」でした。

 これは、私どもにとって予想外のことであり、トリマーの松林さん(ドッグブルーム代表)さんによって見出されるまでわからなかったことでもありました。

 「仕上がりがよい」、これはトリマーにとって洗浄における最終目標みたいなもので、この良し悪しで飼い主さんの評価も大きく異なってきます。

 きれいに洗浄され、臭いもなくなったワンちゃんを、飼い主がやさしく抱き上げる、これはまるで赤ん坊を抱きかかえるときと同じ感触ではないかと思われます。

 このとき、まだ汚れが残っていて、被毛がべたつく感覚が少しでも残っていて、おまけにわずかでも臭いがあったら、元も子もありません。

 ですから、トリマーにとっては、飼い主さんに渡す瞬間において、飼い主がワンチャンをどう感じるのか、ここが最大のポイントになります。

 「仕上がりがよくない」

 こう思われてしまうと、次から飼い主さんがやって来なくなる恐れもあります。

 また、それで評判を悪くすると、お客さんの信用を落とすことになります。

 ですから、一流のトリマーほど、この仕上がりのレベルを気にし、その良さを追究することに懸命になっておられます。

 さて、トリマーの松林さんが、到達されたマイクロバブルフォームの仕上がりとは、どのようなものだったのでしょうか?

 もちろん、この到達点は、かれにとっても初めてのことであり、真に注目に値するものでした。

 そして、この仕上がり状態は、かれによって「しっとりふわふわ」という表現がなされるようになりました。

 ここで読者のみなさんは、「おやっ」と思われるかもしれません。

 なぜなら、「しっとり」と「ふわふわ」は、ある意味で対立用語ですので、これが合わさった用語は、これまで聞いたことがなかったからでした。

 もちろん、これは松林さんにとっても同じことでした。

 そこで、この「しっとり」、「ふわふわ」の、それぞれについて個別に考えてみることにしましょう。

 「しっとり」とは、「しっとりお肌」、「しっとりと夜霧に濡れる」の言葉にあるように、水分の含有量が多いことを表す用語として知られています。

 ワンちゃんの場合、被毛の水分量が多くなると、どうなるでしょうか?
 
   まずは、洗浄前のワンちゃんをお湯に浸けた場合を考えてみましょう。

 この場合、それまで乾燥していた被毛と皮膚に水分が入っていきます。

 そうすると、被毛や皮膚は「ビシャビシャ」状態になります。

 なぜ、このような状態になるのでしょうか?
 
 被毛とそれに付着している汚れのなかに水分が入り込み、重たくなって被毛は寝てしまいます。

 これが「ビシャビシャ状態」です。

 ヒトの髪の毛も同じで、シャワーでお湯をかけると、髪の毛は膨らみをなくしてすっかり皮膚にくっ付いたように寝てしまいます。

 髪の毛が汚れていると、その汚れのなかにも水分が入りますので、ますます重くなります。

 それでは、次に、洗浄後において、すなわち、被毛に汚れが付着していない場合において、ワンちゃんにお湯をかけると、どうなるのでしょうか?

 やはり同じように、ワンちゃんの被毛は、ビショビショ状態になりますね。

 これは、何らかの方法で水分が被毛に浸透し、あるいは、目に見えないような汚れが付着していて、そのなかに水分が浸透し、より重くなったことで起こる現象といえます。

 ここまでは、同じビショビショ状態として、被毛が汚れていても、そしていなくても同じ現象といえます。

 それでは、マイクロバブルフォームを用いた場合には、どうなるのでしょうか?

 次回は、そのメカニズムの解説を試みることにしましょうつづく)。

bisho
 マイクロバブルフォーム洗浄・温浴でビショビショ状態のワンちゃん