高専における教育目標は、高専関係者のすべてが、その意味を認識し、その達成をめざすものですから、船の航海に例えれば、羅針盤あるいは岬の灯台のような存在です。

 ですから、これが曖昧になったり、いつのまにか簡単に変化することなどが起きていいはずがありません。

 たとえば、「国立高等専門学校」のホームページには、歴代機構長の挨拶文が掲載され、そこで高専教育の目標が示されています。

 現在のそれは、「創造性豊かな実践的技術者を養成する」と記されています。 

 ところが、前理事長においては、その教育目標は「創造的技術者の養成」となっていました。

 この相違は、単なる記述表現だけの問題ではないのではないでしょうか。

 かつては、このように、その教育目標が、そのトップが変わるごとに、その恣意に基づいて変わることはありませんでしたので、このような変化は、それがより軽く受け留められていることの反映が、このような現象として表出されたのでしょう。

 しかし、もう一つの重要性は、高専の専攻科設置に伴って出てきた専攻科生における創造的技術者論の出現とともに、実践的技術者論が、影を潜め、そしてほぼ消えていったことから、その復活がはされたことです。

 周知のように、創造的技術者の養成は、高専の専攻科のみにおいて適用されていた目標ですが、それがいつのまにか、専攻科だけでなく本科にも波及して、高専全体にまで拡大して用いられるようになりました。

 この拡大と同時進行で、実践的技術者論が消えてしまいました。

 これはいつものことですが、きちんと、その検討を行ない、その総括を基にして、実践的技術者論から創造的技術者論へと新たに移行するのであれば、百羽譲っても許されることですが、そのようなことは、ほとんどなされず、その際に現場の声に依拠して、その移行がなされることもありませんでした。

 ここに、高専教育研究における未熟性と脆弱性があったといえるのではないでしょうか。

 以上を踏まえ、前回示した実践的技術者養成論における4つの視点を再度示し、次の考察に分けいることにしましょう。 

 ①実践的技術教育の基本は、その実践によって、「よく考えさせ」、「よくわからせる」ことにあり、そのために講義と実験実習の在り方を大いに工夫することが重要である。

 ②この教育目標の達成は、高専においてどのような学生を育てるかに結びつくものであり、その結合を考慮した教育目標を掲げる必要がある。

 ③講義と実験実習の融合、主従関係の逆転などを考慮した教育方法や教育施設の改善が重要である。

 ④上記の実践的技術教育の改善は、第一段階に属するものであり、第二段階における「創造教育」、第三段階における「開発教育」へと発展させていく土台形成になる。
 
 この①~③については、上記の「創造性豊かな実践的技術者の養成論」に関係して、再度議論を行いますので、ここでは、その指摘に留めておきましょう。

 そこで、次回からは、④における第二段階である、創造教育論、創造的技術者論における論究に分け入ることにしましょう(つづく)。

ajisai
紫陽花