前回は、「ここちよさ」「ここち悪さ(違和感)」を、それぞれ3段階に分類しました。

 これは、前者において、「ここちよさ」の水準が大きく異なる結果が出てきたことによる分類の重要性が明らかになったからであり、これが、「ここち悪さ」のどの水準に有効かをきちんと確かめる必要性が出てきたからでもあります。

 たとえば、「ここち悪さ」の最も高い症状に対しては、最高水準の「ここちよさ」を適用するという選択が可能になります。

 「ここち悪さ」は、ヒトを始めとする動物の症状に関することですので、そのレベル1から3へと、自然に、それが進行していきます。

 一方で、「ここちよさ」の方は、人工的対応ですので、その症状のレベルに応じて、さらには、その要求に応じて、その適用方法を工夫していくことが重要になります。

 しかも、「ここち悪さ」から「ここちよさ」へと向かうことは、その症状の改善が進むという傍証でもありますので、その改善がなされる度に、その「ここちよさ」の感じ方も変化していくことになります。

 より具体的にいえば、非常に「ここち悪さ」を感じている時には、その改善が「非常にここちよく」感じ、その改善が進行していくと「適度なここちよさ」に変化していくようであり、さらに改善が進むと「ほのかなここちよさ」へと低下して傾向にあるのではないかと思っています。

 すなわち、この傾向は、最悪に近い状態の「ここち悪さ」を抱いているほど、その効果が出やすく、改善されやすいということになりますので、これは現場にニーズにより適合しているということにもなります。

 周知のように、ヒトの身体は、全身に血液が流れ、その周囲にはリンパ液が存在しています。

 これらが滞ると身体が不調をきたすようになります。

 東洋医学においては、その停滞が生まれやすい部位を「ツボ」と称し、そこに針、灸、マッサージを付加することで、血液やリンパ液の流れをよくすることで、その身体的機能を回復させるという技術が成り立ってきました。

 この技術の天才的適用者が、韓国映画におけるホ・ジュンであり、ペク・クァンヒョン(『馬医』)だったのです。

 この「ツボを押さえる」ことは、ある意味で、「ここち悪さ」を「ここちよさ」に転換していこうという行為であり、医療機器がほとんどない時代に、ヒトが極めていった最高水準の治療法の一つであったといえるでしょう。

 ですから、「ツボを押さえて」、「コツをつかむ」という用語が、単に医療分野だけでなく、多くの分野においても拡大されて用いられるようになったのだと思います。

 現代の整形医学においても、単に患部の切断や治療だけでなく、その「ここちよさ」が常に追究されています。

 違和感を改善し、ここちよさに変える、これが整形外科医の大きな目標になっています。

 優れた整形外科医は、東洋医学をきちんと勉強し、習得されているとも聞いています。

 やはり、人類が、コツコツと積み上げてきた技術は貴重であり、そう簡単に崩れ去るものではありません。

 優れたものは、しっかりと継承されるなかで新たに進化を遂げていくものであり、それこそ伝統を活かすという貴重な営為といえるのではないでしょうか。

 技術のツボを押さえ、新たなコツを確立する、これこそ技術開発における妙であり、これに拘っていくことにしましょう。

 やや中途半端な終わり方ですが、この辺で第一変を閉じることにし、後は、すでに始まっている「第二編」に託すことにしましょう(この稿終わり)。

hagp4
ハゴロモジャスミン