小さい泡を大量に作る、これが、第一級のトリマーの腕の見せどころでした。
なぜなら、それがワンちゃんの身体をきれいに洗うコツだったからです。
しかし、そのためには、シャンプー液を多めに使い、そして、指を素早く動かしてより小さな泡を作る必要がありました。
ワンちゃんの被毛は柔らかですが、それは、ゆっくりと被毛を触ったときの感触にすぎません。
懸命に指と被毛を擦らせて泡立てると、その柔らかいはずだった被毛が凶器に変わり、指の皮膚を傷つけるようになります。
こうして指の皮膚が傷つき、手荒れが進行していきます。
一度、手荒れが酷くなると、ますますひどくなり、痒くなって掻いてしまい、さらに悪化していきます。
この手荒れ悪化パターンに陥っていくとなかなか治らず、仕事を休まなければならなくなり、悩みの種でした。
この指によるゴシゴシ洗いの方法を何とか改善できないか、これがトリマーさんの大きな願いであり、強い良い要望でした。
巧みな指を持っているトリマーが、シャンプー液を被毛に注いで素早くゴシゴシと動かした場合に、1秒間で何回動かすことができるでしょうか?
おそらく、2~3回が限度でしょう。
この動作のなかで、シャンプー泡が形成されます。
被毛を交えて、親指と人差し指および中指の間で摩擦を起こしながら泡立てを行うのですから、その接触面積はそう大きくはなく、それによって形成される泡の数もそんなに多くはないでしょう。
この作業を、延々とワンちゃんの被毛すべてにおいて繰り返し泡立てていくのですから、これは大変な作業であり、真に重労働そのものでした。
この泡立て重労働が不要であることを見出されたのは、今から5年前のこと、その発見者は、国東在住のトリマーTM(本ブログによく登場してくださる松林智宣(まつばやしともひろ))さんでした。
これは、三国志に出てくる「赤兎馬」と「関羽」の関係によく似ています。
赤兎馬は、一日千里を走る名馬です。
また、関羽は、劉備玄徳に仕えた猛将でした。
いくら優れた名馬であっても、それを使いこなす将がいなければ役に立ちません。
これと同じで、光マイクロバブル技術を用いたペット洗浄装置はでき上っていたものの、それを最高度に活かして使いこなせるトリマーに、じつは巡り合っていなかったのでした。
「ゴシゴシ洗いをしなくてよい。マイクロバブルフォームをただかけ流すだけでよい」
このように、かれから聞かされた私どもは、真に腰が抜けるほどに驚かされました。
今でも、平然と、その新発見のことを報告してきたかれのことをよく覚えています。
これは、トリマーの世界における「手工業」が「機械工業」に大転換する、まさに革命的な出来事だったといってよいでしょう。
周知のように、この労働者の作業方法が根本的に変革されることによって、産業革命がイギリスで起こることになりました。
なぜ、これが革命的であったのか。
次回は、その理由についてより深く考察してみましょう。
(トリマーはTM氏、撮影は、大成由音氏)
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