昨日の続きです。

 審査員にアピールする2つ目のポイントは、「独創性、新規性」に関することでした。

 私は、学内で事前に出す審査員を務めていたこともあり、その書類において真っ先に見るのが、これに関する欄の書きぶりでした。

 ですから、ここを見て、この申請は採択される、されないの判断を、あるていど推測していました。

 「みんな、この独創性に関することが書けない。

 他は上手く書けているのに、ここが貧困である原因は、日ごろから、この独創性について考えていないので、ここで行き詰ってしまうようだ」

 日ごろから懸命になって、自分の研究開発を磨いていないと、その独創性は簡単に出てくるものではなく、いわゆる付け焼刃では、どうしようもないのです。

 おそらく、他の審査員も同じで、その合否を決めるのに、もっとも注目すべき点は、この独創性に関する事項だったのではないかと思っています。

 ここを先に読み、それがだめだったら、他のところを読んでも仕方がなく、「はい、これはダメ」と次の申請書の審査に向かうのです。

 今回の補助金は、それに加えて、それを利用しての事業化をいかに速やかに実現し、それをいかに販売していくかの「商品づくり」が問われているものでした。

 いくら科学的に意味があっても、それを技術に活かして人々の生活や産業に反映させることができなければ、その開発には、ほとんど意味がありません。

 大型補助金であればあるほど、そのことが深く問われるようになります。

 ここをどう上手く描くか、ここにポイントがありました。

 第3のアピール点は、それまでの実績を十分に示すとともに、それ以上の飛躍的発展をどのように遂げるかを明確に論述することです。

 これは、一見、矛盾するような「論理立」てになります。

 実績が十分であれば、それを踏まえての独創性や新規性は、どこのあるのかということになります。

 しかし、審査員が採択する基準は、この申請者に、いわば大金を託してもよいのか、もっとわかりやすくいえば、お金を安心して与えられるかどうか、にあるのです。

 しっかり研究開発を行い、そこできちんと実績を上げていて、それを踏まえて、さらに質的に重要な発展を遂げることができるかどうか、ここを見るのです。

 今回も、そのことが問題になりました。

 類似の研究が5年以内にあった場合には、それとの相違点を明確に示しなさい、とされていました。

 すでに、2013~2015年において、国からの支援を受けて、類似の研究開発を行っていました。

 当時は、小型の装置がなく、そのことが現場のニーズに非常にマッチすることを知り、その開発を行なうことが、第二次審査会における重要なポイントでした。

 そして、当初に設定した目標値を達成したのですが、その後の事業化において、小さくない問題が起こりました。

 それは、十分すぎるほどの装置の配備になってしまい、それがかえって装置を大型化、複雑化させてしまい、結果的に高価格にせざるをえなくなったことでした。

 「これでは、広く普及しない」

 この反省を踏まえ、その後も引き続き、改良方法を検討していました。

 ここでは、さまざまな意見が出され、時には大議論になることもありました。

 掴みかかるほどになってはいけませんが、「口角沫を飛ばす」ほどのいい合い、これが、よい結果をもたらすことがあります。

 「そうであれば、こうした方がよいのではないか?」

 「いや、この方がよいですよ」

 「そうかなぁ?それでは自分で試してみようか」

 こういって、その後すぐにホームセンターに行って、実験用の容器を探しに行きました。

 そしたら、形もサイズも丁度良いゴミ箱が見つかり、たしか800円程度で購入しました。

 これを用いて早速試験を行うと、これがよいではありませんか。

 諺に、「百聞は一見に如かず」がありますが、この場合は、「百議論は、一実験に如かず」でした。

 これですっかり自信を得たことで、この結果を踏まえて、その装置設計に向かいました。

 その概念スケッチと基本設計は私が、その詳細設計においては私の相棒が担当しました。

 こうしてでき上ってきたのが、その予備試験装置でした。

 先の初歩的な実験装置においては、金をかけて製作しませんでしたので、当然のことながらいくつもの制約がありました。

 しかし、その予備試験装置においては、その制約を取っ払って、しかも、以前に行った開発試験の成果と反省を踏まえていましたので、より「期待される効果」が望めるものでした。

 案の定、そのことが明確になり、「これはイケル!」という確信を得ることができました。

 じつは、上記に示した比較は、この予備的実験の結果を踏まえたものでしたので、そこには、ある程度の「見通し」が存在していたのでしたが、実際の結果は、それをはるかに上回っていました。

 こうなると実験者の冥利というものを味わうことができるようになります。

 これが、開発者のみが抱くことができる喜びなのです。

 「関係者からは、以前に行った開発を踏まえて申請書を作るのはどうか?」

 「でも、その実績をきちんと示すのは大切なことだ」

などのご意見をいただいたようで、私は黙って聞いていました。

 そして、それらを参考にしながら、その具体的な比較を明確に示すことにしました。

 次回は、その比較を少々紹介しましょう(つづく)。

huri
母が好きだったフリージャ