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天然のヒラメ

 ヒラメとカレイの見分け方については、次のようにいわれています。

 「左ヒラメに右カレイ」

 腹の部分を下にした時に、目が左にあるのがヒラメ、右にあるのがカレイです。

 かつて、大分県はヒラメの養殖に水揚げで全国一位を占めていました。

 ところが、その中心であった県南部の方では、その養殖がほとんどできなくなりました。

 これにはいくつかの原因がありますが、そのなかで最も大きな不振の理由は、海が汚れてヒラメが育たない、ひどい場合には死んでしまうという最悪の事態にまで陥ってしまうこともあったからでした。

 ヒラメは主に海底で生息していますので、海底付近や下層の水質の悪化が起こるとすぐに影響を受けてしまいます。

 同時に、海におけるプランクトンの生息状況の変化も重要な因子になります。

 これを食べて大きくなるのですから、それがヒラメの成長や味に重要な影響を与えます。

 これらは、出荷時の価格にも重要な影響を与えますので、漁師にとっては非常に重要な問題になります。

 味が落ちれば価格が下がる、価格が下がれば漁師の利潤が減る、これが悪循環の始まりですが、これが顕著になるとその漁業の衰退へと導かれていきます。

 かつて、その養殖場を訪れた時に、その値段の相場を聴いたことがあります。

 立派に成長したヒラメが、こんなに安いのかと驚きました。

 私が、かつて住んでいた山口県の周南市のお隣に下松市があります。ここはヒラメ漁と養殖が盛んなところでしたので、なんどか、そこの改善で相談を受けたことがありました。

 その時、お礼にヒラメをいただいたことがあり、その値段を参考までに尋ねたことがありました。

 それはかなり高価なもので、それと比較すると、上記のヒラメの値段は、相当に低いものでした。

 「そうか、ここまで変わってきているのか!」

と、深刻な受け留めをしたことがありました。

 そのヒラメの天然物を国東安岐港の競りで手に入れてきました。

 家族の一人が料理に凝っていて、生きのよいヒラメを料理にしたいと希望したからでした。 

 肉付きや色もよく、さすが豊後水道のヒラメだと思いました。

 この辺りは、プランクトンの発生も悪くなく、とくに大分空港沖の海は、多くの魚が昔のような味を維持しているところです。

 まずは、これを刺身にして、そのままいただきました。

 また、その一部をパルカッチョにしてお客さんに出したところ、これも大好評でした。

 肉質が柔らかく、旨み成分が豊富で、ほのかな甘みがある、このおいしさの3要素がすべて整っていました。

 これがないと、ゴムを噛んでいるようなパサパサ感があり、いくら間でも旨みや甘味が出てこないという味になってしまいます。

 この国東半島周辺の海域には、ヒラメの養殖場はほとんどなく、市場に水揚げされるのは天然ものばかりです。

 そこで、この2枚の天然ヒラメの購入金額が気になりますね。

 それは、消費税込みで1260円でした。

 「なぜ、そんなに安いの?」

と疑いたくなるような値段でした。

 かつての私の感覚では、ゼロが一つ足らないのではないかとさえ思うほどの値段でした。

 いくらヒラメの値段が下がっているといっても、立派な天然ヒラメが、500、600円で買える、これは私の想定が及ばないものでした。

 なるほど、ここは、無茶苦茶に魚が安くておいしい、これこそ「安くて豊か」の典型事例だと思いました。

 魚好きのみなさん、そして国東のみなさん、私たちが棲んでいる処には、このような驚くべき豊かさがあるのですねよ。

 日本の地中海、国東半島沖、ここは、豊かな、そしてゆかいな海の幸があるところです(つづく)。