「用語の解説(3)- 4-7」を以下に示します。

用語の解説(3)- 4-7

  光マイクロバブルの「3物理現象」:光マイクロバブルの収縮運動、収縮に伴う負電位増加、発光の特性を有する3つの現象のことである。
   
 ようやく、3つ目の発光特性について分け入ることができるようになりました。

 それは、教え子さんが念入りに質問をなされたからであり、その度に回答を考えるという機会を得ることができたからで、これを大変ありがたく感じました。

 さて、ここで、この間のやり取りを含めて少し「おさらい」をしておきましょう。

 光マイクロバブルのほとんどすべては、短時間に(数十秒で)収縮し、水中で消えて無くなっていきます(正確には、目視で、そのように見えるという意味においてです)。

 この収縮運動によって光マイクロバブルは表面張力を増し、その内部もより高圧になっていきます。

 とくに、その直径が20㎛を過ぎて小さくなると徐々に、その収縮速度が増加して、初期の収縮速度と比較すると約10倍にも達するようになります。

 これによってますます表面張力の増加と内部圧力の増大が顕著になっていきます。

 そして、光マイクロバブルの内部では、圧力の増大とともに温度も増加し、光マイクロバブル内部のエネルギーが高まります。

 一方、負電位の計測結果によれば、光マイクロバブルの直径が小さくなると負電位は増大し、その直径が40㎛以下になると、そのピークが約10㎛まで維持されます。

 これを単位体積当たりに換算し直しますと、その負電位は、大きく増大し続けることになります。

 これらを総合すると、光マイクロバブルの収縮によって負電位は増大することが明らかです。

 光マイクロバブル内の圧力が高まり、それと同時に負電位が増大する現象のことを「焦伝効果」が作用したと表すこともできます。

 ですから、光マイクロバブルの収縮運動とその負電位の増加は、非常に密接に関連した現象ということができます。

 それでは、光マイクロバブルの発光現象は、これらの特性とどのように関係するのでしょうか。

 これを解りやすく説明するために、ロウソクの火を想像してみてください。

 真っ暗闇のなかで、ロウソクに火を点けて、「ハッピーバースデイ」の歌をよく唄います。

 孫たちがとても好きな光景です。

 このロウソクは、光を発しています。

 それから、ロウソクの上に手をかざすと熱く感じます。

 これは、ロウソクが燃えることで光とともに熱も発生していることを示しています。

 それでは、このロウソクの場合、何が燃えて熱を発生させているのでしょうか?

 この場合、燃えることで熱を発しているのは、ロウソクの蝋であって酸素ではありません。

 一般に、通常のロウソクの温度は、周辺で500~600℃、その炎の中心部では800℃の高温に達していることが知られています。

 この比較的高温状態で蝋が燃えることに伴ってきれいな光が発生する、これがロウソクが光る原理であることは、みなさんご存知のことと思われます。

 この原理に基づけば、高温になると発光する現象が生まれるということができます。

 この発光の原理が、光マイクロバブルにおいても適用可能なのでしょうか?

 逆にいえば、光マイクロバブルが発光しているのであれば、500~600℃以上にもなる熱が発生しているのか、という疑問も湧いてきます。

 これらの疑問を抱きながら、まずは、光マイクロバブルが本当に光を発しているかどうかを調べるために、その写真撮影を試みることにしました。

 これには、私どもが長年、乱流の可視化を行ってきた写真撮影の技術が役立ちました。

 よく研究者の間から聴こえてきたことは、光マイクロバブルを写真撮影してみたが、それを可視化撮影できなかったということでした。

 これを、そのまま認めるとしますと、その写真撮影の未熟さを問うのではなく、「(光)マイクロバブルは光らない」という説に偏っていきます。

 そして、それが高じてますます偏狭になっていくと、「私どもが撮影した光マイクロバブルの画像はうそだ、あるいは何か別のものを撮影したのだ(たとえば、小さなゴミなど)」という主張に変化を遂げていきます。

 これを世間では、「自分の未熟さを棚の上に上げて居直る」というようです。

 私どもにとっては、長年経験を積み重ねてきた写真撮影技術ですので、そんなに難しいことではなかったのですが、その経験のない方々にとっては、そう簡単なことではないはずだと、常々思ってきました。

 それでは、何が相当に難しいのか、それらを具体的に示しておきましょう。

 ①光マイクロバブルの発生時のサイズは、10~65㎛であり、そのピークは27㎛です。これらが、発生直後から一斉に収縮を開始しますので、その動的挙動の過程にある光マイクロバブルを撮影することになります。

 たとえば、直径20㎛の光マイクロバブルを撮影するとしますと、その大きさは2/100㎜ですから、それを拡大して写真撮影できるようにしなければなりません。

 通常、このように小さい気泡の撮影を行う場合には、カメラの高性能レンズや接写リングを用いて、その拡大率を上げていきます。

 しかし、これらの装置では、その拡大率が足りませんので、さらに、レンズの先に何枚もの接写レンズを重ねていきました。

 それを何枚重ねればよいのか?

 それは、自分で撮影する際に確かめてみてください。

 ②光マイクロバブルの光量は、ほんのわずかですから、高性能な明るいレンズが必要になります。

 通常の場合は、接写用といえばマクロレンズを用いますが、この種のレンズにおいて明るいものがなく、各種のマクロレンズを試してみましたが、ほとんど役には立ちませんでした。

 この経験を踏まえ、私どもが用いたレンズはやや広角用のF1.2か1.3の明るいニコンレンズを用いました。

 ③暗室のなかに、水槽のなかに光マイクロバブルを発生させるシステムを持ち込みました。

 その前にカメラを設置し、発生した光マイクロバブルが撮影面を横切るときに、その光マイクロバブルがシャープに撮影できるように、被写界深度を可能なかぎり浅くして、撮影面にピントを合わせました。

 最適のシャッター速度は不明でしたので、いろいろとその速度を変えながら最適シャッター速度を決めていきました。

 これが短すぎると光量不足になり、長すぎるとシャープに写らなくなります。

 もともと真っ暗な暗室のなかで、ごくわずかにしか光らないのが光マイクロバブルですから、その困難を克服できるカメラ操作ができないと、その「女神の正体」を見せてはくれないのです。

 ④写真を撮影した後に、そのフィルム現像とプリントを依頼しましたところ、いつも頼んでいる写真屋さんが、気を利かしたのでしょうか、何も写っていませんが、これをプリントしてもよいのでしょうかという問い合わせがありました。

 なにせ、一度に20本、30本と現像とプリントの依頼を行うので、心配されたのでしょう。

 たしかに、そのプリント画像は、真っ黒で、よく観ると白い斑点状のものが写っているだけでした。

 これでは何も写っていないと判断されても無理ならからぬことでした。

 「心配ありません。これでよいので、心配せずにプリントしてください」

 こういって安心していただきましたが、これはその事情を分かっている私だから判断できたことでした。

 ところが、その事情をよく理解されていなければ、この時点で何も写っていなかったとして、そのプリントはゴミ箱行きになったでしょう。

 しかし、目視や小さな虫メガネでは、小さな白い斑点状にしか見えなかったものが、立派に撮影されていたと思うようになるには、それを拡大して見る必要があったのです。

 この可視化にはマイクロスコープが必要であり、この使用によって初めて「光マイクロバブル」の発光像を捉えることができるのです。

 この4つの難関を突破できる技術と経験がないかぎり、その光マイクロバブルの正体を観察して、その美しさに感動し、そこに潜んでいる科学のロマンを体験的に味わうことはできないのです。

 光マイクロバブルの発光を撮影できなかったという方々に、この4つの問題を投げかけると、それを謙虚に受け止めて、再度挑戦しようという方は、なぜか、ほとんどおられませんでした。

 そのような事情からでしょうか、未だに光マイクロバブルの発光像を明らかにしたという結果は、筆者の撮影事例を除けば、ほとんどないようです。

 それゆえ、光マイクロバブルの発光の意味を鋭く究明する考察も生まれていないようです。

 しかし、この光マイクロバブル発光の正体を探る究明は、上記の方法のみでは不十分と思って、他の3つの方法においても確かめることにしました。

 それは、それだけ、光マイクロバブルの発光現象が、科学的に非常に重要な現象であるという認識を抱いていたからであり、なによりも、その究明に、私自身が小さくないロマンを感じていたからでした。

 そのことは、拙著『マイクロバブルのすべて』の最終章(エピローグ)で言及いたしました。

 ご興味を抱ける方は、それを一読されてください。

 2つの撮影方法で捉えた光マイクロバブルです。

 この画像を始めて観たときには、小さくない感動を覚えたことを思い出します。

 他の撮影および究明方法については、次回以降で、やや深く分け入ることにしましょう。(つづく)。
hakou
光マイクロバブル