本山さんの御講話のテーマは、「龍」でした。
国東は、神仏混合が祀られた珍しいところ、ここの木火土金水の5つの世界に龍が棲んでいる、ここから話が始まりました。
その説明のために描かれた図を示しましょう。
これらは、いずれも地球の表面上に存在する、生物にやさしい安全な基本物質です。
これらが、動物の5臓に対応しているそうで、順に肝臓(青)、心臓(赤)、脾臓(黄)、肺臓(白)、腎臓(黒)と関係しています(カッコ内は色)。
これらに龍が棲んでいる(?)
それは、いったい、どのようなものなのでしょうか。
龍とは、神話や伝説に出てくる生き物であり、中国では歴代皇帝のシンボルとなってきた「仮想獣」です。
土や水のなかに棲み、空も飛び、竜巻や雷を発生させるともいわれてきました。
この龍伝説は、日本にも伝来して定着してきました。
葛飾北斎の龍の絵は有名であり、超年齢の85歳の辰の年に描いた龍は、後世に語り継がれるほどの名画になりました。
しかし、この龍を誰も見たことはありませんので、その存在は、どうやって信じられてきたのでしょうか。
どうやら、本山さんは、龍が棲んでいるところ、動き回っているとろでは、何らかのエネルギーの高まりがあり、それが、木火土金水において現れる、さらには、上記の5臓にも宿されていると考えられているようでした。
龍が棲んでいるところには、大きなエネルギーの発露がある、そのことを解りやすくいうために、龍を用いたのでしょう。
さて、このエネルギーの発露の問題は、実際の「地域おこし」にも関係したそうです。
名物となっているレンコンを食材とした餅菓子の開発と販売に関する秘話がいくつも紹介されました。
みなさんが、知恵を出し、気を一にして、新商品をこの世に送り出すというエネルギーの高まりは、次々に、新たなエネルギーの発露を醸しだしていったそうです。
これは、国東で語り継がれている「雇用曼荼羅」の取組にも出現したようで、この学習活動によって多くの若者たちが育っていったそうであり、その報告を厚生労働省に行くときには、大分空港に多くの関係者が集まり、気勢のなかで見送りがなされたとのことでした。
さて、このように人々の気が集まり、高まっていくと、すなわち、龍が動き始めると何が起こるのか。
ここが重要な問題になります。
そこで新たに登場したのが「コヒーレント状態」という用語でした。
私にとっては、この「コヒーレント」という用語は、非常に懐かしい響きを有していました。
もともとは、物理学や電気工学における用語で「コヒーレンス(coherence)」というものがあります。
これは、波の干渉のしやすさを表す用語ですが、ここから、筋道が通ったさま、あるいは一貫性があることという意味も出てきたようです。
じつは、私の博士論文は、「乱流におけるコヒーレント構造」に関するものでした。
それを正確に記すと、次のようなものでした。
和文題目:「開水路乱流における秩序構造」
英文題目:「Coherent structure in open-channel flow」
かつて乱流(代表的なものは、川の流れ、潮流、飛行機の後ろの流れなど)は、偶然にできる無秩序なものである、と考えられてきました。
その乱流のなかに、秩序を有した運動がある(coherent motion)ことを最初に見出したのがクライン(スタンフォード大学)でした。
その異説は、当然のことながら、多くの学者から袋叩きにされましたが、かれは、それに屈せず、約20年の歳月をかけて粘り強く研究を進めました。
そして、わずかですが、かれの学説が注目されるようになったころでしょうか。
私も、その手法を学ぶようになり、開水路乱流の秩序構造に関する研究に打ち込むようになりました。
このとき、私の師匠からは、次のようにいわれました。
「あなたの研究は、博打のようなもので、当たれば大きいが、決して当たることはない」
しかし、私は、こういわれて、動揺はしましたが、それを止めようとは思いませんでした。
なぜなら、クラインや、それと同じ水準の現場研究者が日本にもいて、さらに共に励まし合う友人たちがいたからでした。
さて、この場合は、偶然なもの、無秩序なもの、不確かなもののなかから、秩序を持つ確かなものを見出す試みでした。
そのために、流れを可視化し、そこに秩序性を見出す作業を延々と繰り返していきました。
そして、その秩序構造とは、渦の構造であることを究明し、その4次元構造を解明していきました。
しかし、かれが示した「コヒーレント状態」とは、心理学上の概念だそうで、ヒトを含めた生理学的特徴を有するものでした。
単なる流れの構造に関する秩序ではなく、生体の特徴に関する状態を示した概念でしたので、私は、ますます前のめりになって耳を傾けました。
龍が現れるコヒーレント状態とは何か?
次回は、そのワクワクするような世界に分け入ることにしましょう(つづく)。

開水路乱流の秩序構造(横断面可視化)
上部に水表面、下部に水路床が見える。レーザー光によって白く
映し出されたものが、秩序構造(コヒーレント構造)であり、流
れは、奥から手前に向かって流れている。水深は12㎝程度である。
コメント
コメント一覧