今朝は雨、この調子ですと、ひねもす、しとしとと雨が続くのかもしれませんね。

 室温は24.9℃、湿度71%、あの暑かった夏も過ぎ去ったかのようですね。

 昨日から、来週末にある第14回国東セミナーの準備を始めました。

 この土日は、その準備に勤しむことになるでしょう。

 さて、前回は、高専生が生きていくのは、「多重大困難な時代」であることを示しました。

 歴史家の磯田道史は、これから、産業革命以来の大変動の時代がやってくると予想し、それに備える新たな「考え方」について言及されています。

 「それは、発想力です」

 与えられたものをどう考えるかではなく、何を思い、思いつくのか、これが大切だというのです。

 具体的な事例として、かれは、南海・東南海地震が連動して起きた場合に、何が起こるのか、そして、その時に何をすればよいのか、何を備えておく必要があるのか、これらの事前の考察の重要性を強調されていました。

2018-09-06 (2)
多重大困難な時代

 これを聞いて、インタビュアーの池上彰氏は、次のような理解を示されていました。

 「それは、問題を解くということではなく、『問題をつくる』ことに相当しますね。かれが教えている東工大の学生は、どんな問題でも解いてしまうが、『問題をつくれ』というと、それがほとんどできない」

 目先のことに目を奪われてしまう、論文にならないテーマよりは、論文になるテーマを選んでしまう、さらには、「お金になる」テーマを追いかけ、その獲得資金の多さを自慢したくなる、このような指向が横行している昨今ですが、これらには、あまり「鋭い発想力」は要りません。

 問題を解く際には、その方法が示されている事例を探して解けばよいのですが、すばらしい問題をつくる場合には、本当に頭をよく使かわないと、問題をつくることができません。

 また、日ごろから、その問題づくりについて考えていないと、その場で、すぐに「つくりだす」ことはできません。

 たとえば、高専においては、アイデア対決ロボットコンテストが盛んに行われ、今なお続いています。

 このアイデアは、『非まじめのすすめ』の著者である森政弘先生が、東工大時代に開発されたものでした。

 これが、大学よりも高専において盛んになり、高専生が打ち込むようになったのは、なぜでしょうか。

 私は、ここに大学生にはない、高専生の重要な特徴があると思っていて、これを研究することが重要ではないかと思っていますので、そのうち、この問題を本格的に考察してみようと思っています。 

 このロボコンにおいては、毎年5月頃に、その年の競技ルールが発表されます。

 高専生は、これを受けてチームを組み、アイデアをあれこれと考え、夏休みに入ると、その試作が始まります。

 この過程で、自ら考えたアイデアを実践に結びつけて、勝ち進む方法を洗練させていきます。

 今年のNHK放送の際に、その解説者が、おもしろいことを述べていました。

 「かれらが、すばらしいのは、みんなで考え、アイデアを磨いていくなかで、約1000通りも、あれこれと考え、それを実際に試していることだ」

 若い頭で、そして若い友人たちと一緒に考え、実際に制作して試す、しかも、この競技においては相手がいることなので、それに打ち勝つ方法も考えなければいけません。

 これを毎年、予戦、本戦と勝ち抜いていくのですから、かれらは大変な経験を重ねていくことになります。

 このように、実践的に試されていく競技ですから、これは見ていておもしろいとみなさんが感じ、テレビ局側も、そうであれば来年も続けていこうと判断されているのだと思います。

 このロボコンが大学よりも、高専の方で発展している、これこそ『非まじめ』の思想が高専で生きている証拠であり、森先生も、さぞかし喜ばれていることでしょう。

 しかし、このパターンは、「問題をつくる」のではなく、「問題を解く」側の競技といえます。

 これを、大学の偉い先生ではなく、高専生自身が考え、創り出していくことができるようになれば、その発想力を身に付け、磨いていくことができるようになり、ロボコンも、次の新たなステージを築くことができるようになるでしょう。

 だれも考えたことがないようなことを思案し、思いつく力、すなわち、発想力は、人間特有のものであり、AIは、この世界に入り込むことができません。

 アクティブ・ラーニングは、その学習過程において積極性を見出していくことだと思われますが、これは、高専の創立当初から「実践的技術の養成」という概念で洗練させてきたものであり、ここに、目新しさはありません。

 この「二番煎じ」的な教育法を高専に持ち込んでも、それが教育的開花と結実をもたらし、高専教育史に名を刻むようにはならないでしょう。

 その意味を踏まえて、これからは、「AL(アクティブ・ラーニング)」ではなく、「BL(ブレイクスルー・ラーニング)」ではないか、と提案しました。

 どうやら、この提案は、参加者の心を揺さぶったようでした。

 次回は、この「BL」について、さらにふかく分け入ることにしましょう(つづく)。

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紅い花(沖縄市にて)