本日から、本格的に鹿野川ダム災害について考察を深めることにしましょう。

 前回の記事において、2004年に発生したダム操作に関する実測データが明らかにされていましたので、まずは、それを再録し、このデータとの比較を行うことにしましょう。

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 この図(
『リザバー』2006年3月号)より、以下のことが示されていますので、その解説を加えることにしましょう。

 ①調節放流
 8月30日7時頃からダム貯水池への流入が増加し、それとともに、流入量とほぼ同じ量が放流されています。

 ②事前放流(第1次)
 8月30日の14時頃から3時間余にわたって、第1次の事前放流毎秒600㎥/sがなされています。
 しかし、この放流量は、ダム貯水池への流入量に対してかなり少なく、これによってダムにおいて大量に貯水量が増加しています。

 ③事前放流(第二次)
 そこで、ダムの水位が83.5m前後になった時点(17時40分ごろ)で、第二次の事前放流が開始されています。
 この時の放流量は、850㎥/sであり、これが19時ごろまで続けられています。
 
 ④流入量のピーク 
 同じ時刻(17時30分ごろ)に、ダム貯水池への流入量のピークが出現し、この山が21時ごろまで続いています。
 このピークを迎え、ダム管理者は、こう思ったでしょう。

 「ダム貯水池に貯留した分を、これから、どのように放流したらよいか?」

 ⑤貯水位
 しかし、貯水位は増加する一方であり、その増加が緩み始めたのは20時ごろのことでした。
 ダム放流規則によれば、「ただし書き条項」というものがあり、ある水位に達すると、ダムへの流入量を、そのまま放流してよいとされています。

 そうしないとダム本体が危険になり、最悪の場合には、ダム本体が壊れる恐れがあるからです。

 問題は、その放流を行う水位ですが、これが明確にされていませんので、それを推測すると、本ダムの計画最大放流量は、毎秒1500トン(㎥/s)ですから、その水位を少々超えた時点での水位と推測できます。

 おそらく、その水深は86m前後ではないかと考えられます。

 ⑥このダム操作における最初の問題は、この計画最大放流量の放流を前後して、急激に放流量を増加させていることにあります。

 放流量を急激に増大させた19時30分から21時までの90分間において、その放流量の増加量は、毎秒1000トンにも及んでいます(毎秒850トンが毎秒1800トン弱まで増加)。

 とくに、計画最大放流量(洪水被害を起こさないための最大限放流可能量と考えてよい)の毎秒1500トンを超えてもなお、急激に放流量を増やしたことには、小さくない問題があったといってよいでしょう。

 ⑦問題点の第2は、もっと早く、第1次と第2次の事前放流を積極的に行っておくべきだったことです。

 この図からも明らかなように、事前放流の毎秒600トン、毎秒850トンの操作が、ほとんど効果的でなかったことを示唆しています。

 とくに、後者に関しては、焼け石に水のごとくで、ほとんど、それが洪水のピークカットに役立っていません。

 すでに、この放流を開始した17時40分ごろにおいては、ダム貯水池の流入量はピークの約毎秒1800トン達しており、以下の操作がなされるべきでした。

 1)ダム貯水池へのダム流入量を考慮すると、もっと早い時点において、この第二次の事前放流を行う必要がありました。

 それが、できなかった理由は、この放流が可能になる水位の規定が、実情に合っていなかったことにあると思われます。

 この操作は、流入増加量とダム貯水池の水位を考慮して行われるべきであり、現行の規則は見直される必要があるでしょう。

 2)事前放流量の毎秒850トンの数値も見直される必要があります。

 大量の異常降雨に伴って、ダム貯水池には、以前にも増して大量の流入量があり、これに対してダム総操作が柔軟に、そして適切に対応できていないことに問題があり、これらの見直しはますます必要になってくるでしょう。

 第3は、大量に流入水を貯留させることが、ダムの本来の役割であると過信していることにあります。

 この洪水の場合も、可能なかぎりダムにため込んで、それなりに規則に則って事前放流を行ったが、結果的には、それが効果的ではなく、最後には「ただし書き」条項に基づいて、ダム貯水池への流入量を、そのまま放流するしかなくなってしまったのではないかと思います。

 この洪水においては、その放流量が毎秒1800トン前後であったことから、大きな問題になりませんでしたが、今回の西日本豪雨に場合には、この約2倍に相当する放流量が流されましたので、その問題点が、より鮮明に露呈することになりました。

 これは、最近の異常気象を考慮したダム操作ではなく、今や、時代遅れの操作でしかない、もっと効果的な操作法を検討し、この2004年時点で、必要な改定を行っておくのがよかったと思います。

 しかし、今回の2018年の場合は、すでに、経験済みの、この2004年の放流操作さえ、できていなかったわけで、次回において、その究明を進めることにしましょう(つづく)。

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マリーゴールド(大成研究所の前庭にて)